部屋がないから
最終章53話になります!
本日1回目の投稿です!
それではどうぞ!
「ねえねえ佳乃~。お母さん達にはどんな素敵なお部屋を貸してくれるの~?」
ヨシノ母は、先程のサーヤやレイのように期待に胸を膨らませながらヨシノに声をかける。
「ん?そうだった。忘れてたんよ。えぇっと、バッグの中に……。はいこれ。こっちがクジラのお父さんお母さんので、これが啓介と優梨の分な」
「……あ、あららぁ?」
ヨシノは母親の言葉を聞くと、思い出したように床に雑に置いていた外を出歩く時に必ず持ち歩いているバッグを取り、中に入っていた1枚の地図と3つの鍵を取りだし、地図と1本の鍵をヨシノ母へ、残り2本の鍵をクジラ父、優梨にそれぞれ手渡す。娘の予想外な行動に、ヨシノ母は唖然としていた。
「いや、泊める場所無かったから女将さんの小料理屋から家に帰る前に、宿を借りてきたんよ。この宿は私がクジラとこの世界で合流する前に利用してた宿だし、サービスが良いからオススメなんよね。宿代については気にしなくて良いんよ?私、超リッチだから!あと、明日にはリーシャの兄弟帰るみたいだし、明日からはアパートの空き部屋を貸すんよ」
母親の様子を見て、貸す部屋が足りないのだからこうするしかないだろ?と言いたげな顔をしながら、オススメの宿だから安心しろと伝えるヨシノ。さりげない金持ちアピールとドヤ顔がなんともムカつく感じだった。
「本当なら佳乃ちゃんが持つアパートに泊まりたい所だけど、今日は仕方ないわよね。それに佳乃がそこまでオススメするのなら、きっと良い宿だもの!」
「えぇっと……、私の兄弟のせいで宿に行かせる事になってごめんなさいヨシノのお母さん」
「良いの良いの!リーシャちゃんが謝る事なんてなにも無いわよ~。さ、みんな!佳乃のオススメの宿、早速行きましょ~?」
ヨシノの言葉を聞くと、しょうがないかと思いながら、今日は娘のオススメの宿のお世話になるかと決めるヨシノ母。リーシャが若干申し訳なさそうに謝ると、ポワポワとした優しい笑顔を見せて謝る必要はないと伝え、夫、クジラの両親、啓介、優梨に早速行こうと告げた。
「旅行なのだし、いろんな宿に泊まってみるってのも楽しみの1つよね。行きましょ行きましょ」
「そうですよねおばさん!ファンタジー世界の宿、はぁぁ~気になるぅ~」
クジラ母と優梨は宿に泊まる事に大賛成なようで、ノリノリで早く行きたそうな様子を見せる。
「んじゃ、暗いし不審者が出ないとは限らないから、私とヤヨイが送るんよ。ヤヨイ、良いよな?」
「ええ、2人の両親にはあっちの世界で良くしてもらった恩があるし、喜んで同行するわよ」
早く宿に行きたそうにしている面々を見たヨシノは、じゃあ早速送りにいくかと切り出して、ヤヨイに同行を頼む。戦闘が不得手な自分だけでは、もしも不審者が出た時の対処が無事に出来るかわからないからだ。
「クジラ、私とヤヨイで宿まで送り届けて来るから安心して待っているんよ」
「うん、ヤヨイがいるのなら安心だね。よろしく頼むよ。行ってらっしゃい。母さん達はまた明日ね」
ヨシノから安心して待っていろと声を掛けられると、クジラはヤヨイが着いていくなら安心だと口にして、両親達を引き連れて宿へと向かっていくヨシノとヤヨイを見送るのだった。




