打ち倒す決意
最終章32話になります!
本日1回目の投稿です!
それではどうぞ!
「おお、待っておったぞい。こっちに来るのじゃ」
クジラとリーシャが女将さんを連れてアゼリアアリーナに空間移動をすると、先に空間移動をしていた人達は一箇所に集まっていた。よく見たら何人かいなかったが、おそらくは模擬戦の準備に向かっているのだろう。会長はご機嫌な様子でクジラ達3人に声を掛け、自分達の所へと来るように伝える。
「えへへ、誰と戦うのかなぁ?出来れば、一方的に負けるんじゃなくて、接戦が出来て辛うじて勝てるレベルの人と戦えたら良いなぁ。クジラ、早く会長の元に行こう!」
リーシャはこれからアゼリアアリーナにて誰と模擬戦を出来るのかワクワクした様子で、クジラの手を握ると早歩きで会長の元へと向かった。
「あはは、僕の腕をグイグイと引っ張ってやる気満々だなぁリーシャは。僕的には、強制的にハードな運動をさせられるような相手じゃなければ誰でも良いや」
クジラはやる気に満ち溢れた様子のリーシャを横目に見て苦笑しながら、疲れ果てるような戦闘でない事を祈り、彼女に引っ張られて会長の元へと歩く。相変わらず戦闘はなるべく避けたいと思っているみたいだが、今回は会長率いる勇者達がしてくれたサプライズのお祝いという事もあり、少しはやる気にはなっている為、戦闘をする事自体を嫌がってはいないみたいだ。
「クジラ君、リーシャちゃん。お主達はあと少しで、魔王、勇者として働き始めて2年が経つじゃろ?ちょうど良い機会だから、どれほどの力が身に付いたのか確認させてもらうんじゃよ。ほれ、ヴァーチュ、姿を見せて良いぞい」
クジラ達が近付いて来ると、会長は穏やかに笑いながら喋り始める。そして、よく見たらその場に姿が見えなかったヴァーチュの名を呼んだ。
「こんな重装備じゃあ、多分クジラとリーシャが勝つだろこれ」
ヴァーチュは、同じく姿が見えなかった邪神のおじさんと共に、入場口からゆっくり出てくる。肘から指にかけてを包帯でグルグル巻きにし、肘を曲げたり手で何かを持ったりできないような状態であった。重装備と言って若干ぎこちない動きをしているが、特に重そうには見えない為、身体のいたるところに重りでも付けているのだろう。
「ふぉっふぉ、お主は腕が使えなくて重りで動き辛くても、普通に戦えるじゃろ?クジラ君とリーシャちゃん、お主らの相手は奴じゃ。動きを制限したあやつと模擬戦をし、2人で協力して勝利をもぎ取るんじゃよ?」
会長はカラカラと笑いながら、クジラとリーシャに動きが制限されたヴァーチュを倒してみろと告げる。
「ヴァーチュと模擬戦か……。いつも訓練とかでコテンパンにされてるから、動きが制限されてても勝てる気がしない……」
「クジラ!弱気になったらダメだよ!クジラ1人じゃ勝てなくても私がいるから!」
クジラが苦虫を噛み潰したような顔をしていると、リーシャは彼の肩を叩いて励ましの言葉を掛ける。
「リーシャって負けが見えてる試合は嫌いじゃなかったっけ……?」
「だって、会長は私達の力量をわかって動きを制限したヴァーチュをあてがったはずだもん!勝てそうな気がするし、ヴァーチュに溜まった恨みや不満を拳に込めるチャンスだからね!だからさ、私と一緒に全力で頑張って、ヴァーチュをボッコボコにしてやろうよ!」
負ける事が大嫌いなリーシャが凄い前向きなのを見て、不思議だと思いながらその事を聞くクジラ。リーシャは会長が対戦相手を間違えるはずがないからと言って笑う。そして、恨みや不満を武力に乗せてヴァーチュをボコボコにしてやろうとクジラに伝えると、水晶のように美しい頭身を持つ刀を鞘から抜き放つ。
「…あははは、そうだね。あそこまで動きが制限されてるヴァーチュに負けたら恥ずかしいかもね。……よし!わかったよリーシャ!全力で倒しに行こう!」
クジラはリーシャの話を聞き終えると納得したように頷く。そして、先輩であり師匠であり、友人でもあるヴァーチュを彼女と共に打倒する事を決意し、大きな声を上げるのだった。




