考えなしの双子
最終章10話になります!
本日2回目の投稿です!
それではどうぞ!
「おうコラ!遅えぞクジラァ!!」
「ごめんなさいお義父さん、ちょっと遅かったですか?……それよりも凄く気合いが入った格好をしていますね」
クジラはトトリ家へと迎えに行くと、開口一番にルーシュから罵倒を受けた。義父の自分嫌いも慣れてきたなと思いながら苦笑し、義父の服装について指摘する。彼は、ファンタジー世界の貴族が着ていると聞いたら成る程と頷けるような、おそらく高級素材だと思われる布で出来た服装に身を包み、マントを羽織っていたのだ。
「愛娘の結婚式だぞ!父親がマトモな服装に身を包むのは当然だろうが!」
「まあ確かにそうですけども。僕の故郷ではそういう服をあまり見かけないから、少し驚いただけですよ。それよりもまだ全員集まっていないようですが、準備がまだ終わっていない感じでしょうか?」
クジラは、見慣れない服装に驚いたんだと言ってルーシュの事をなんとか言いくるめると、トトリ家の面々が半数程度しか集まっていない事に関して尋ねた。
「おそらくまだ準備中だ。荷物自体は前日に済んでいるはずだから、着替えに手間取っているのだろう。リーシャの家族として、キチンとした服装で結婚式に出るよう口酸っぱく言っておいたからな」
「そういう事ですか。それなら仕方がないですね(この人の事だし、数日前から何度も家族に言い聞かせてたんだろうなぁ)」
どうやらルーシュの言葉が原因で、着替えに手間取っているみたいだ。クジラは表面上ではそれなら仕方がないと口にするが、心の中でやっぱりこの人が原因で準備が済んでいないのかと考えていた。
「「クーちゃん!!」」
ルーシュとクジラの会話がひと段落すると、タイミングを見計らっていたのかリンとレンがクジラに両サイドから飛びかかる。
「うおっと。リンレン、おはよう。とっても可愛いワンピースを着てるね」
クジラはそれに少し驚いた後、ワシャワシャと2人の頭を撫でながら挨拶を口にした。
「おはようクーちゃん!今日の結婚式でクーちゃんとリッちゃんが素敵な服を着ながらチューするのを楽しみにしてるよっ!」
「にゃははは、美味しいご飯早く食べたいなっ!」
リンは結婚式の事を多少は理解しているようだ。しかし、レンは違う。彼女は結婚式=美味しい食事が食べられる場所としか認識していないらしく、ドキドキワクワクとした表情で早く食べたいなどと口にしていた。
「あははは、教会での結婚式中はご飯がでないから我慢するんだよ?教会での結婚式が終わったら、小料理屋さんに移動して結婚式を再開するから、そこで沢山食べるんだよ?ビックリするほどに美味しい料理を沢山出してくれるお店だからさ」
「にひひひ、美味しいご飯、楽しみだねぇ。も、もちろんお祝いしたい気持ちの方が強いんだからねっ!?」
「ねえねえクーちゃん。私はリンと違ってよくわかんないけど、クーちゃんとリッちゃんをお祝いしながらご飯を食べれば良いの?」
「うん、そうしてくれたら嬉しいな。リーシャにもおめでとうって言ってあげるんだよ?」
「「はーい!」」
「うん、よろしい。それじゃあ良い子な2人におっきな飴玉を1個ずつプレゼントしよう。……っ!?」
ゴツッ
リンとレンが元気よく返事をすると、クジラはニコニコと楽しそうに笑みを浮かべながら2人に飴玉をプレゼントする。早速口に入れて転がし始めた2人を見ながら楽しそうに笑っていると、クジラの頭に鈍い衝撃が走る。
「痛たた……。お義父さん何をするんですか!?」
「いや、今のはすまん。割と本気ですまん。お前が俺の娘を総取りするんじゃないかって気がしてつい……」
ルーシュは、リーシャを除いた他の娘達も全員クジラに奪われるのではと思ったらしい。その結果、つい無意識で彼の頭にゲンコツを落としてしまったという。
「まったく。僕はリーシャだけしか貰いませんよ。神にだって誓えますよ」
「そ、そうだよな。お前は本気で一途なんだよな?もしもその誓いを破ってみろ。俺はお前を許さねえからな?」
「ええ、絶対に破りません」
「えぇ〜、クーちゃんはお菓子をくれるし遊んでくれるし、とっても優しいから、私はクーちゃんのお嫁さんになりたいなぁ」
「にゃははは、よくわかんないけどリンがそう言うなら私も〜」
クジラの違いにより、ルーシュの心は一瞬落ち着いたのだが、リンとレンの子供らしい特に何も考えずに発した発言により、ルーシュの心は殺意に染まる。
「てめえクジラああああぁぁぁぁっ!!」
「いや、僕は破ってないですからね!?」
「うるせええええぇぇぇぇぇっ!!てめえリンとレンにまで好かれやがってぇぇぇぇぇっ!!」
ルーシュはリンとレンの考えなしの言葉をきっかけに、暴走し始めた。クジラは慌てながら落ち着くように呼び掛けていたが、まったく聞き入れる様子はない。この暴走は、トトリ家のまとめ役であるアリシヤがこの場にやってくるまで続いたという。




