愛の囁き
最終章1話になります!
本日2回目の投稿です!
それではどうぞ!
約3ヶ月の月日が過ぎて6月10日。クジラとリーシャにとって特別となる日が翌日まで迫っていた。
「えへへ〜、久々に2人きりでご飯だねクジラ?」
仕事が終わり、午後7時頃。クジラとリーシャは自宅のリビングにて、2人きりで晩御飯を食べていた。ヨシノ達は翌日の準備の為に女将さんの小料理屋へと出向いて仕込みの手伝いをしているらしい。クジラも一緒に手伝いに行こうとしたらしいが、お前まで来たらリーシャが家で1人きりになってしまうから、リーシャと2人で待ってろと仲間達から告げられたみたいだ。
「……。」
「ねえクジラ?聞いてる?」
「……へっ?あ、ごめんねリーシャ。ちょっとボーッとしてたよ」
クジラは翌日に控えた結婚式の事を考えていたのかリーシャの言葉には全く応答せず、それを不思議に思ったリーシャに肩をツンツンと突かれた事で我に返り、軽く謝った。
「もう、食べてる時にボーッとしてたらご飯が冷めちゃうよ?……もしかして、愛しくて愛しくて仕方がない私と久しぶりに2人きりのお食事だったから、緊張でもしちゃったの?」
リーシャはクジラの頭を撫でながら、食事中にボーッとするのはダメだと子供に注意をするように伝えた後、小悪魔のような笑顔を浮かべて彼の事を茶化す。
「あははは、別に夜寝る時にいつも2人きりなんだから緊張なんてしないよ」
「本当かなぁ?それじゃあアーンしてあげるね?緊張してないなら普通に食べれるよね!」
クジラがボーッとしていたのは、久しぶりに自分と2人きりで食事をしているからだと変な勘違いをしているリーシャは、自身の食べかけのからあげを彼の口へと運んでいく。きっと恥ずかしがってキョドると思ったのだろう。
「あむっ、うん美味しいよ。ほら、おかえしあげるからアーンして」
「ほえぇ?本当に緊張とかしてた訳じゃあ無いの?むむむ、本当にただボーッとしてただけなんだ。そしたら、こんな可愛い子とお食事してるのに別の事考えるなんてダメなんだからっ!次ボーッとしてたら、クジラの分のおかずをソーッと強奪するからね?」
クジラが平然と食べ、平然とアーンを返してきたのを見て、リーシャは間抜けな声を漏らした。そして、地震の推理が外れた事を少し恥ずかしがりながら、次にボーッとした時の罰を告げる。彼女は言葉を発し終えると、クジラが箸で摘まんでこっちに向けていたからあげをパクリと食べ、ご満悦な様子になっていた。
「そうだよね。こんな可愛くて性格も最高な女の子と一緒に入れる僕って幸せ者だよなぁ」
「き、急にどうしたのさクジラ!い、いきなりそんな事を言われると恥ずかしいよ!?不意打ちみたいな事は反則なんだから!」
リーシャの言葉を聞くと、翌日に結婚式が控えているせいか、若干くさいセリフをポツリと呟くクジラ。しっかりとその呟きを耳にしたリーシャは、顔を真っ赤にして不意打ちはダメだと文句を口にする。
「リーシャは恥ずかしいと顔が一瞬で真っ赤になるよね。可愛いよ」
「うぅ〜、そういう弄り方やだぁ〜。心が乱れて何も言い返せなくなっちゃうからダメぇ」
「あはは、ごめんごめん。リーシャが大好きすぎて少し暴走しちゃったよ。早くご飯食べないと冷めちゃうね。イチャイチャの続きはご飯食べ終えてからにしよっか」
「食後になったら、もう不意打ちは効かないんだから!ご飯食べ終わったらクジラは恥ずかしさで今の私以上に顔が赤くなるんだから!覚悟しててよね!」
リーシャが真っ赤な顔を手で覆い、フルフルと首を横に振っているのを見ると、クジラは穏やかに笑いながら謝り、一時休戦にして食事を再開しようと伝える。それによってリーシャはいつもの調子は戻ると、今度はクジラに今の自分以上の恥ずかしい思いをさせてやると宣言した。
「あはは、望むところだよ」
クジラは快くそれに応じる。クジラからの甘い囁きに弱いリーシャが、それを深く理解しているクジラに真っ向勝負で叶うはずがない。よって、リーシャは食後に再び顔を真っ赤にする羽目になるのは言うまでもない事だった。




