表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
具現化魔法で異世界乱舞  作者: 桃山
9章閑話
1942/2000

彼女の職場へ




最終章前日譚19話になります!


本日2回目の投稿です!


それではどうぞ!










結婚式後のパーティ会場が決まってから、1週間程の日が過ぎた。この1週間、クジラは1日置きにせっせと招待状を友人に配り歩いたらしい。予備含めてぴったり50枚あった招待状は半分まで減っていた。


「……ここが最後の招待状配達だけども、1番不安な場所だなぁ。まあ、会長さんならばきっと、上手く立ち回ってくれるよね」


いつも通り晩御飯の後に家を抜け出したクジラは最後の配達だと口にしながら、勇者理事会の前に立っていた。リーシャの仕事仲間達を結婚式に誘う為である。


「……正面から入って誰かに見られて、リーシャに報告されたら確実にリーシャから何しに行ったのか問い詰められるよなぁ。多分、会長さんは自分の部屋にいるはずだし、部屋の前まで空間移動で行くか。もしも部屋の前で誰かとバッタリ会ってしまったら、その人も巻き込んで一緒に会長の部屋に入って貰えば良いかな。よし、それじゃあ行ってみるか」


勇者理事会の玄関に手を掛けるが、クジラはそこで動きを止めた。そして、真正面から堂々と建物内へと入ったら翌日に自分が勇者理事会へ来ていた事が目撃者からリーシャへと伝わってしまいそうだと考える。その結果、無礼にならないように会長の部屋の前に空間移動をする事に予定変更し、早速行動に移った。


「……ふぅ、誰もいないな?」

「気配も消さずに忍び込んでくるとは、どこの派閥の魔王の侵入者じゃ?」

「……へっ?……あれっ?」


クジラが空間移動をして会長の部屋の前に立つと、廊下には誰も人がおらず、見つかる事なく侵入が出来た事にホッとして息を吐く。だが、次の瞬間には何故かクジラは仰向けに倒れており、彼は何が起きた?と思いながらしわがれた声を耳にした。


「おや、クジラ君か。てっきり侵入者かと思ってワシが直々に出向いてやったのだが、違ったようじゃの。すまんすまん」


会長はクジラの顔を覗き込み、侵入者がクジラである事に気付くと、ケラケラと笑いながら詫びの言葉を伝え、仰向けに倒れた彼に手を差し出す。


「何が起きたのかわからなくてビックリしましたよ。会長さんの仕業ならば納得です。とりあえず、極めて重要な話があるのでお時間頂けますか?……ああ、仕事絡みではないので気楽に聞いてください」

「うむ、構わんぞい。さあ、入っとくれ」


クジラは、痛みもなく一瞬で仰向けに倒されたのは会長の熟練の技なのだなと納得すると、差し出された手を握って立ち上がり、話があるんだと伝えた。会長はそれに快く応じると、目の前にある自分の部屋の扉を開け、クジラに入るように告げる。


「失礼します」

「うむ、別に仕事絡みで無いなら、そんなに固くならなくて良いからな?さて、こっちに座って話そうじゃないか」

「はい、わかりましたよ会長さん」


会長は、若干固いクジラにもっと気楽に構えてくれて良いと言って彼の肩にポンと触れた後、向かい合わせになったソファの一方に腰掛けた。


「それじゃあ早速話を聞こうかのぅ?」

「はい。まずはこの紙を見て頂きたいのですが。この招待状は会長さんの分です」


クジラが反対方向に座ると、会長は穏やかな笑みを浮かべながら話を聞く姿勢になる。それによりクジラは、紙の量で分厚くなったクリアファイルを荷物の中から取り出し、1枚の招待状を会長へと渡す。


「うむ、なになに?……ほぅ、結婚式の招待状とな。しかもリーシャちゃんにサプライズで。クジラ君が空間移動で勇者理事会に侵入してくる理由がようやくわかったぞい」


それを読み終えると、クジラが不法侵入して建物内に入った理由も納得したと言いながら楽しげに笑った。


「リーシャにサプライズなので会長さんに上手く立ち回ってもらって、リーシャが仲の良い勇者の方々に、招待状を渡して欲しいんですよ。もちろん、リーシャにバレないように」

「なるほどのぅ。ワシを直接指名する依頼が舞い込んで来るなんて、何十年振りじゃろうなぁ」


会長はクジラの頼みを聞くと、お爺ちゃんな見た目とは正反対なキラキラとした少年のような目で、直接指名なんて久しぶりだと語る。依頼とは少し違うと思うのだが、本人が嬉しそうなのでクジラはその点に関しては何も指摘しなかった。


「それでは引き受けてくれるでしょうか?」

「うむ、引き受けた!伝説の初代勇者を直接指名なんて、本来ならば億単位のお金が発生してもおかしくないんじゃが、今回は特別に、報酬はクジラ君とリーシャちゃんの結婚式に参加して祝う権利を貰うって事にしてあげるぞい」

「ありがとうございます会長さん!一応10枚渡しておきますけど、みんなの都合もありますし、10枚全部配りきれなくて構わないですからね?あと、式場の広さの関係で10人以上だと中に入れなくなる可能性があるので、申し訳ないですけども10人まででお願いします」

「了解じゃよ。まあ、リーシャちゃんは人気者だから、金払ってでも祝いに行きたいって同僚が沢山いるじゃろ」

「あははは、リーシャはいつも笑顔で元気ですから、嫌われる訳が無いですもんね」


やる気に満ち溢れた会長とガッチリ握手をし、よろしく頼むと伝えるクジラ。会長は10枚の招待状を受け取ると、絶対にバレずに配りきってみせると意気込んでいた。こうして、招待状配りは終わるのであった。










おそらく次で前日譚はラストです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ