異世界料理専門店への配達
最終章前日譚17話になります!
本日2回目の投稿です!
それではどうぞ!
ガラガラッ
「女将さんこんにちは〜」
トトリ家に招待状を届けた翌日のお昼時。クジラは仕事を昼休憩にすると、フーの街にあるジャパンという名の小料理屋に足を運んでいた。この世界では出入り口にあまり見ない引き戸の扉である。
「あらクジラさん、こんにちは。ひと月振り位ですね。最近あまり来なかったので何かあったのかと思って心配しましたよ」
「あはは、ごめんなさい。今はニニの街の迷宮の管理をしているんで、ニニの迷宮にいる探索者と仲良くなって一緒にご飯食べるって事が結構あるんですよ。今日はそういうお誘いがなかったので、久々に女将さんの料理を食べにきました。今日はカツ丼大盛りでお願いします」
「元気に過ごしているようですね。とても安心しました。注文はカツ丼大盛りですね。今お作りします」
ジャパンの女将は、同じ異世界からの転生者であるクジラがひと月も来店していなかった事が心配で心配で仕方がなかったらしい。クジラがひと月もの間、この小料理屋に来店しなかった理由を話すと、おかみは安心したと言って胸を撫で下ろし、彼の注文の品を作ってくると言って厨房へと向かった。
「ん〜、相変わらずこの店に来ると、日本の料理屋さんに来たみたいで落ち着くなぁ。やっぱり僕的に、結婚式後のパーティはここを貸し切ってやりたいなぁ」
ガラガラガラッ……
「……あれ、クジラ団長!?」
「ん?シータ達か。奇遇だね。お昼休み?」
クジラが店を見回し、落ち着く内装だなと思いながらおしぼりで手を拭いていると、控えめな音と共にゆっくりと扉が開き、シータ達元盗賊団の女性達が入店してきた。
「はい、お昼休みです!このお店はヨシノ店長に教えてもらったんですけど、凄く美味しくて値段も安いから、私達のお気に入りのお店なんですよ!」
シータは昼休憩?という質問に笑顔で答え、この店はお気に入りなんだと話す。ヨシノとの関係も非常に良好みたいだ。
「へえ、そうなんだ。とりあえずこっちに座りなよ。今日は特別に魔王様が奢ってあげるよ」
「本当ですかっ!ありがとうございます団長っ!ほら、みんな座るよっ?」
クジラは楽しげにシータの話を聞いた後、今日は奢ってやると言いながら手招きをする。クジラ魔王軍団結成から1年弱が経過している事もあり、クジラの人となりをよく理解したシータ達はその言葉に対して遠慮する事なく喜び、クジラの周りの空席に座った。
「いらっしゃいませ〜。あら、クジラさんはシータさん達と知り合いだったのですね。注文が決まりましたら呼んでくださいね?クジラさんのはあと少しで完成なので、もう少しお待ちください」
シータ達の来店から少し遅れて厨房から出てきた女将は、仲良さそうに会話しながら相席をするクジラとシータ達を見て微笑むと、決まり文句を口にして再び厨房へと戻っていく。
「……そのうち渡そうと思ってたし、シータ達にも今渡しておくか。みんな、これを読んでくれるかな」
クジラは縦横30センチ程度の空間の歪みを自分の目の前に出現させるとそこに手を突っ込み招待状を取り出し、シータ達盗賊団の女性陣6人に招待状を1枚ずつ手渡すのだった。




