秘密裏の作業(招待状)
最終章前日譚3話になります!
本日1回目の投稿です!
それではどうぞ!
「……よし、とりあえず今日明日くらいで招待状を完成させよう。それで、僕が元いた世界で大量印刷したら、ユキさんとかエリちゃんとか、トトリ一家に配らなくちゃ。僕の両親とかも、こっちの世界に来てもらうか……?」
話し合いの翌日。クジラはニニの迷宮にて本日の仕事を終えて家に帰って晩御飯を食べると、ちょっと用事があると言って再びニニの迷宮の迷宮管理層へと戻ってきた。ここは自分とヴァーチュでしか侵入が不可能な為、秘密裏に作業をするのならば、うってつけの場所なのだ。
「とりあえずなんか洒落た感じの便箋を具現化してっと……。まずは大きく招待状って書けば良いか。そこからなんで書くかが問題だな……」
クジラは1枚の可愛らしいピンク色の便箋を具現化すると、同時に具現化したボールペンを使い、アゼルトリア語で招待状と書く。2年弱の期間、この世界で過ごしていた為、アゼルトリア語の読み書きはほぼ完璧にマスターしたらしい。
「……あぁ、日本語版も書かなくちゃな。……というか、言語はなんでも良いんだけど、文章が思いつかないなぁ」
初めの招待状という言葉以降、全く文章が思いつかない様子のクジラ。額を押さえ、ウンウンと唸りながら自然な動きでペン回しをしていた。
「……『僕達、結婚式を挙げる事にしました。是非とも結婚式に参加してください。リーシャには直前まで秘密にして、アッと驚かせてやる予定なので、彼女には御内密にお願いします。』……文章はこんな感じか?あとは場所と開催日時と、何か書くことあるかな……?というか、開催日時が決まってないからまだ完成は無理じゃん。……はぁ、とりあえず今日は開催日時の欄以外を記入して、明日からは素敵な式場探しをしなくちゃ」
約20分掛けて、クジラは4行の短文を頭から捻り出す。そしてひと息吐きながらこの文以降に何を書くかと考えていると、開催日時が決まっていないから今日明日で完成は不可能だと気付くクジラ。まあ仕方が無いと割り切り、今日中に開催日時以外の部分を書き上げてしまおうという結論に至り、再びウンウンと悩み始めた。
「……そういえば、フーの街の全体マップを見ると何処かに教会があったっけ。明日の仕事が終わった後、そこに足を運んでみようかな」
だが、まだ完成しない事に気付いて気持ちが落ちたせいか、集中力も一気に消失したみたいだ。ペンを器用にクルクル〜と回しながら、フーの街内にあるが足を運んだ事のない教会を思い出し、明日の仕事終わりに足を運んでみようかなと呟く。
「リーシャは豪華とか煌びやかな雰囲気って感じより、落ち着いた温かい雰囲気の方が好きみたいだし、リーシャ好みの雰囲気を持つ教会だったら即決かなぁ?リーシャと結婚……、リーシャのドレス姿……、ああ、絶対可愛いや。楽しみだなぁ」
クジラはリーシャとの結婚式から、リーシャのドレス姿を想像したらしい。1人密室でニヤニヤとしていた為、完全に危ない人のようであった。そこから先、リーシャのドレス姿を妄想する事に夢中だったようで、その日の作業はそれ以降進歩なしだったらしい。




