仕事復帰の朝
9章最終話です!
本日2回目の投稿です!
それではどうぞ!
「ほら、クジラ〜、起きて起きて〜?愛するお嫁さんが早起きして暇してるよ〜?」
現在時刻7時。クジラの両頬に手を当て、ムニムニと頬を弄りながら目を覚ませと伝えるリーシャ。2人は軽い紛失指輪騒動の後、愛を伝え合い気が付けば眠ってしまったらしい。夜中に起きてしまい、かなり目が冴えた様子だったリーシャも少し泣いて疲れたからか、無事に二度寝が出来たみたいだった。だが、それでも熟睡とまではいかなかったらしく、普段起きる時刻よりもだいぶ早くに起きてしまったみたいだ。
「ふぁぁ……、おはようリーシャ。なんか相当早くない?」
「おはようクジラ!なんだか早く起きちゃって暇で暇で仕方がなかったからクジラを起こしたの!……えへへ〜」
クジラの挨拶に元気よく応答した後、いつもより2時間近くも早い目覚めについて説明するリーシャ。話し終えると、自身と彼の左手薬指を見比べてニヨニヨと笑っていた。
「僕も元気いっぱいなリーシャを見てたら目が冴えてきたし、二度寝はやめておこうかな。朝ごはんにする?」
「うんっ!今日から仕事復帰だからね!たっぷり食べて元気を付けなくちゃ!……そっか、今日からお仕事なんだ。……決めたよ!いつもは遅刻ギリギリに到着してるけど、今日は準備出来次第に勇者理事会に顔を出すよ!みんなに仕事復帰する事を伝えて回らなくちゃいけないもんね!」
朝ごはんを沢山食べて仕事に備えるんだと口にした後、いつもの出社時間までクジラとダラダラとした時間を過ごさずに、準備が完了次第、仕事に行く事を口にするリーシャ。久々の仕事が楽しみでウズウズとしているみたいだ。
「そっか、まあ初日だしね。僕も迷宮行く前に魔王理事会に顔を出して、邪神のおじさんに仕事復帰の報告をしようかな?」
「そうした方が良いよ!なんたって、約1ヶ月ぶりの仕事復帰なんだから!何も言わずに仕事復帰するのも変だと思うなぁ」
「リーシャがそういうのならば、そうした方が絶対に良いね。それじゃあ、さっさと朝ごはんを食べて仕事の準備をしよっか。何が食べたい?」
「体力付けなきゃだからステーキ!肉厚で噛み応えあるやつね!」
「あははは、朝から豪快だなぁ。わかったよ!リーシャが大満足するようなステーキを具現化してあげるから!」
クジラはリーシャのリクエストに大笑いした後、任せろと言って大きく頷き、手を取り合いリビングへと向かっていった。
「ぷはぁ〜!食べた食べた!ご馳走様〜!とっても美味しかったよ!」
「うん、良かったよ(マジか。ワンポンドステーキを食べきるとは思わなかった……)」
それから約20分後、リーシャはクジラが具現化した肉の塊とも言えるステーキと白米2杯をペロリと平らげ、お腹をさする。455.923グラムの肉塊と白米2杯を朝から平然と食べてしまった彼女を見て、クジラは目をまん丸にして驚きを表情にガッツリ出していた。残った肉は自分が食べてあげようなどと思っていたみたいだが、完全に無駄な考えで終わってしまったらしい。
「ぃよしっ!それじゃあ顔洗って歯を磨いて、着替えて、おトイレ行って、荷物の用意かな!」
リーシャは指を折り、やるべき事を数えると食後とは思えない迅速な動きでリビングから出て行った。
「久々の仕事だからか、すさまじく浮かれてるなぁ〜。可愛らしいけど、何かしらのミスをしでかしそうで怖いね。僕も早く食べ終えて、色々と準備をしなくちゃな」
リーシャが食べていたのとは比べ物にならない薄っぺらいステーキを食べながら、元気いっぱいなリーシャの後ろ姿を見送るクジラ。その元気が有り余っている様子が逆に不安を呼び寄せるらしく、保護者のような目線で彼女の事を心配していた。
「クジラクジラクージラー!ま〜だ〜!?準備終わった!?私、すっごく待ってるよ!」
「……これあげるから大人しくしててね?もうすぐ終わるからさ」
「あむっ、おいひー!」
それからまた20分が経過した頃、リーシャは散歩をまだかまだかと待つ犬のように騒がしくしながらクジラを急かしていた。クジラはそれが鬱陶しかったようで、ビーフジャーキーを与え、彼女の口を封じさせて着替えを再開する。
「……よし、準備完了。お待たせリーシャ」
「……ごっくん。えへへ、うんっ!今は8時前だから、マールさんとアネくらいしか勇者理事会に来てないかなぁ?まあいいや、早速お仕事行こっ!空間移動お願いね?」
「うん、任せて。それじゃあ行こ……」
「待った!……えいっ!」
チュッ
「えへへ、出発して良いよ?」
リーシャは空間移動発動寸前だったクジラに待ったを掛けると、自慢の跳躍力を披露して彼の唇にほんのりビーフジャーキーの香りがするキスをお見舞いした。
「ビーフジャーキー与えなければ良かったな。まあ良いや、帰って来た時の分に期待してるね?……それじゃあ行ってらっしゃい!」
クジラはニッコリと笑いながら帰宅後の分に期待と言って、さりげなくキスを要求すると、空間の歪みを具現化する。
「えへへ、頑張ってくるね!行ってきます!」
ゆっくりと一歩踏み出すと、満面の笑みをクジラに向けて軽く手を振るリーシャ。クジラがそれに手を振り返すと、満足そうに駆け出して行った。
「……よし、僕も魔王理事会に行こう。今日からニニの迷宮での仕事、若干楽しみだな。頑張らなくちゃ!」
クジラは彼女の白く美しい髪が揺れる背中を見送った後、ギュッと拳を握りしめる。そして仕事復帰の挨拶をする為、魔王理事会へと向かうのであった。
普段なら2話か3話掛けてやるシーンを駆け足気味に1話で纏めた感がありますが、これで9章はおしまいです。
9章は割とキャラが出た気がするので、明日はおそらくキャラ紹介のみになります。
明後日からは、最終章に繋がる前日譚的な閑話になります。
9月中……は多分無理ですので、10月中には完結させる気でラストスパートを掛けようと思います。
最後の最後まで、お付き合いよろしくお願いします!
この作品が完結しましたら、1ヶ月空けないうちに次回作を始める予定です。
ちなみに次回作は異世界系ではなく、忍法と学園モノにしようと思ってます。




