半日休み
9章224話になります!
本日1回目の投稿です!
それではどうぞ!
「それじゃあお仕事に行ってくるので、団長さんとリーシャちゃん、シータの事をお願いしますねぇ」
「は〜い!私達に任せてね〜」
「では、いってきま〜す」
シルミア達は、シータを置き去りにして仕事へと向かっていく。そんな彼女達を笑顔で見送るクジラとリーシャ。
「ほ、本当に私は行かなくても良いんですか……?」
布団に入り横になっているシータはクジラとリーシャとは違い、心底不安そうに彼女達を見送った後、クジラに向けて1つ質問をする。
「うん、午後1時まで猶予を貰ったから安心して?本当なら、全休を取ってあげたかったんだけどね。とりあえず二日酔いに聞く食べ物を幾つか出してあげるから、なんとか昼までに復活するんだよ?」
「ありがとうございます団長。団長の慈悲を無駄にしないよう、昼までに回復するよう全力で努めたいと思います!……うっ、大声出したら気分が……」
どうやらクジラがヨシノに通話を掛けて交渉をした結果、午後1時までの休暇を認められたみたいだ。ちなみに交渉内容は、リーシャがシータと遊びたいと駄々をこねているからシータを貸してくれといった感じだ」
「シータってばこんなフラフラな時でもクジラに対する忠誠心を忘れないんだねぇ。なんか凄いや。でも、無理はしちゃダメだよ?ほら、クジラ特製はちみつレモンジュースのリーシャ風改良版だよ?」
シータが弱りきっていてもビシッとクジラに返事をする所を見て、凄いと言いながらも無理は禁物だと注意するリーシャ。また、言葉を伝え終えると、先程からカランカランと音を立てて制作していたジュースをシータに手渡していた。クジラに二日酔い用のはちみつレモンジュースと、自身が指定した材料を具現化してもらい、それを混ぜていたみたいだ。
「……あ、凄く美味しい。味もサッパリしていて飲みやすいし、こんな具合悪い状態でもゴクゴクと飲める」
「えっへん、私が二日酔いで死んでた時、クジラがはちみつレモンジュースを飲ませてくれたんだけどね?改良すればもっと良くなるな〜って思ってたんだ。それで、ちょうどシータが二日酔いでくたばっててくれたから試してみたって訳なの!」
「私を実験体にしてたのね……。まあ、甘い飲み物の試飲だし、凄く美味しいから良いんだけども」
シータははちみつレモンジュースの匂いを嗅ぎ、ストローでチビっと啜ると、その美味しさによって目をまん丸にしながらジュルジュルと勢い良く啜り始める。それを満足そうに見ながら、自信ありげに胸を張ってクジラの物をわざわざ改良した理由を口にした。実験体にされてた事を複雑そうな表情で呟くシータだったが、別に美味しい飲み物を飲ませてもらっただけだし、変な実験を無理やりやらされている訳でも無いのだから別に良いかと頭の中で結論を出してストローで啜る作業を再開する。
「もしも不味かったら怒られてたかなぁ?ふぅ、私の味覚が正しくて良かったぁ〜。クジラも1杯飲んでみて?すっごく美味しいからさ!」
リーシャはホッと息を吐くと、いつの間にか作っていた自分用のはちみつレモンジュースを少しだけ飲み、スッとコップをクジラに差し出して美味しいから飲んでみてと頼んだ。
「どれどれ?……ああ、なるほど。これは僕が具現化する前よりもずっと美味しくて飲みやすいや。流石はリーシャだね。今度から身近に二日酔いの人が現れたら、これを飲ませてあげる事にするよ」
「うん、そうしてあげてね?また何か改良の余地がある食べ物飲み物を発見したら教えてあげるね!」
クジラははちみつレモンジュースを軽く啜ると、これは美味しいなどと呟いて流石だとリーシャを褒め、頭を撫でてやった。すると彼女は目を細めて気持ち良さそうに撫でられながら、また発見があったらいち早く教えると口にする。
「ふう、美味しかった。二日酔いなんかで半日仕事を休ませて貰っているのにこんな美味しい物を飲ませて頂いて、なんだか申し訳なさがいっぱいですよ団長。本当に休んでいて良いのでしょうか」
ほぼサボりみたいな状態なのに、驚く程に美味しいジュースを貰ったりと良い思いをしている現状が、不安を駆り立てるらしい。若干暗い表情をしながらクジラに対して言葉を漏らすシータ。
「普段頑張ってるみたいだし、たまにはこういう日があっても良いんだよ。不安で仕方が無いのなら、お昼から始まる仕事で人一倍頑張っている姿をみんなに見せれば良いよ。誰も責める人はいないと思うな」
「えへへ、そうだよシータ!むしろ、いつも頑張ってるシータに文句を言う人がいたら、私が本気でブチ切れるもん!」
「団長にリーシャ……。ありがとうございます。私、少し弱気になり過ぎていたみたいです!お昼からの仕事、ヨシノ店長がビビる程に活力に満ち溢れた接客が出来るように二日酔いを飛ばさなければいけませんね!私、少し寝直そうと思いますので、団長とリーシャは家に戻ってデートとかをしに行っても構いませんよ?」
シータは2人から優しい言葉を掛けられると、目をウルっとさせて今にも涙をこぼしそうになりながら寝直すと言って布団を被る。
「えへへ、どうせ暇だからシータがしっかりと出勤するのを見届けるまで一緒にいてあげるよ。ね、クジラ?」
「うん、リーシャがそうしたいならそれで良いよ。もしも寝坊しそうになっても僕らが起こしてあげるから安心してね?」
「わかりました団長!人に見られながら寝るのは少し慣れないですが、よろしくお願いします!」
シータは最後にそう言うと喋るのをやめ、数分後にはスヤスヤと寝息を立てていた。
「シータったら、目覚まし時計セットしないで寝ちゃってるよ。まったくもう、私達が残るって言わなければ寝坊ほぼ確定だったじゃん!起こすの忘れたら大変だし、セットしておこうかな?」
リーシャはシータが目覚まし時計をセットせずに寝直したのを見て、12時前に設定を直してセットしてやる。翌日に、タイマーのセットがズレているのに気付かず、元盗賊団女性の従業員が全員若干の遅刻をする事になるのだが、現在それを知る者は誰もいない。




