埋まる溝
9章215話になります!
本日2回目の投稿です!
それではどうぞ!
「それじゃ、私とクジラが旅を終えて帰って来た事を祝って……、かんぱーい!!」
「「「「かんぱーい!」」」」
ヤヨイのマッサージを受けるクジラから放たれる間抜けな声にリーシャが文句を告げてから約20分後、リーシャの乾杯の音頭により、おかえりなさいパーティが始まった。プラモはヨシノが連絡したところ、やる事があるからと言ってパスしたらしく、リコとリオは未だにクジラのリーシャの相部屋もとい愛部屋にて眠っていた為、そのまま寝かせたままにしているみたいだ。2匹は旅で溜まった疲れと自宅に帰れた安心感が重なり、ちょっとやそっと揺さぶったくらいでは起きない程に爆睡しているらしい。
「コホン、始まった直後にこういうのは悪いと思うのだけれど、帰還を祝う前に改めて言わせてちょうだい?リーシャにクジラ、本当にごめんなさいね。わたし、今では自分の行いに心から後悔してるわ。この後悔の気持ちは絶対に忘れはしない。もう二度とあんな酷い事は企まないから今まで通り仲良くしてくれないかしら……?」
「わ、私も!クジラお兄ちゃん、リーシャ。ヤヨイお姉ちゃんに加担した私も同罪よ!だから私も、本当にごめんなさい!」
乾杯が終わると、軽い咳払いで視線を集めたヤヨイが祝う前にといってクジラとリーシャに頭を下げる。そもそも旅に出たのが自分のせいである為、祝う前に改めて謝らなければ気分が悪かったのだろう。謝るヤヨイを見たカーリーは、自分も同罪だと言って同じように深々と頭を下げる。
「えへへ、もう良いの。頭を上げて?あれは異性の好意に対してキッパリとしてない緩い拒否と曖昧な態度を続けていたクジラと、もっと必死に意地汚いほどの独占欲を表に出さなかった私にも原因があると思うもん。それにあの旅のおかげで改めてクジラと好意をぶつけ合う事が出来たし、そう悪いものじゃなかったからね!だから気にしないでとは言えないけど、普通に今まで通り接して欲しいな。私も今まで通り仲の良い大好きな家族として接するからさ!」
リーシャは頭を下げるヤヨイの右手を自身の両手で包み込み、もう終わった事だからそんなに謝らなくても良いのだという事を話す。彼女も旅を通して相当成長したようで、とても晴れやかな顔をしながら自分達の悪かった点などを口にし、器の広さを見せつけていた。
「まだわたしの事を大好きな家族として見てくれるのね。リーシャ、もうあんたには絶対に酷い事をしないって誓うわよ。あんたはわたしの大切な大切な親愛なる家族なのだから。ようやくその事に気付けたの」
ヤヨイはリーシャに愛する家族であると言われると、照れながらも嬉しそうに微笑む。そして、リーシャの事を大切な大切な親愛なる家族なのだと告げると、リーシャの両手に包まれていた右手を優しく引き抜き、彼女の事をぎゅっと抱きしめた。
「えへへ、ヤヨイから私を抱きしめてくるなんて初めての事じゃないかなぁ?改めてこれから家族としてよろしくね?」
「ええ、よろしく頼むわねリーシャ」
2人は互いに改めてよろしく頼むと口にすると、更に強く抱き合う。もしも状況を知らない人がその光景を目撃したら、美女2人の同性愛!?と驚く事だろう。
「リーシャ!ヤヨイお姉ちゃん!私も混ぜて!私を放置しないで欲しいわ!」
ヤヨイと共に謝ったのだが、リーシャがヤヨイの事を優先した為に放置されてしまったカーリーは、ふくれっ面をしながら抱き合うリーシャとヤヨイに向かって抱きかかった。
「あはは、ヨシノもあの中に入ったら?」
「こっぱずかしいから嫌に決まってるんよ。それよりお前ら!私様がせっかく作った料理様の数々が冷めちゃうから早く食べろ!レズるのは夜中にしろ!」
「なっ!?れ、レズなんかじゃないわよ!あんたがわたしに喧嘩を売るなんて珍しいじゃない!」
「うっせえバーカ!冷める前にさっさと飯を食べるんよ!」
ヨシノの暴言混じりな忠告によって、抱き合うのをやめてご飯を食べ始めるリーシャ達。仲睦まじく会話をしながら食事をする様子は、まさに家族といった光景である。クジラ家に刻まれた溝は、たった今埋められたような気がした。




