お仕事する人と寝る人
9章209話になります!
本日1回目の投稿です!
それではどうぞ!
「は〜、美味かった。ごちそうさま。んじゃあカーリー、早速仕事場に帰るんよ。私はお前を連れ戻しにここに来たんだから」
「一口ずつしか食べてなかったのに……。半分くらいしかあげないって言ったのに……」
「だ、大丈夫だよ?まだ私のチョコトリュフが沢山残ってるよ?あと、私の分のチョコケーキとガトーショコラ、一口ずつだけあげるね?あーんして?」
ヨシノはクジラの分のガトーショコラとチョコケーキを全て食べ終えると、満足そうな顔をしながらカーリーに視線を向ける。その近くでは、気が付けば自分の分として切り分けられたお菓子が全て食べられていた事にショックを受けて絶望するクジラと、それを甲斐甲斐しく慰めるリーシャがいたが、ヨシノは全く気にしていなかった。
「そ、そういえばそんな事を言っていたわね……。というか、何で私がここにいるってわかったのよ!」
カーリーは、何故ヨシノが自分の居場所を特定する事が出来たのか気になって仕方がないみたいだ。まだサボり足りないのかソファから立ち上がる素振りを一切見せずにヨシノへと質問をする。
「見回りしてる時に客が、喋る黄金色の毛並みをした狐を頭に乗せた白髪の可愛らしい子がいたって喋ってたんよね。気になってその客に何処いるのか聞いたら、デパートから出て行ったって言ってたんよ。だから、多分家にいるだろって思ってここに来たら見事に現行犯逮捕ってわけ(問題児2人のスマホは細工をして、私のスマホから常に位置情報を見れるんだけどね)」
ヨシノは現地で獲得した情報によってサボって向かった場所を予想したと自信ありげに語るが、心の中では自分しか知らない事実がある事を思い返しながらほくそ笑む。実際は現地で情報を得た後、自分しか知りえない細工を利用して場所を特定したのだろう。
「うぅ〜!あんな人でギュウギュウな場所で列の形成、誘導なんてもうやりたくないのよ!どうしても働いて欲しいなら、働く場所をレジか1階のランス達のビラ配りにシフト変更を要求するわ!」
「ん〜、そんなワガママ言わないで欲しいんよね。ちゃんと日によって労働場所が変わるようにして、楽な持ち場と面倒な持ち場で働く時間が全員平等になるようシフトを組んであるんだから。それにみんな、どんな持ち場でも文句を言わずに働いているんよ?」
カーリーがイヤイヤとワガママを言うと、困った顔をしながら、楽な時間と面倒な時間が平等になったシフトを組んだ結果なのだから素直に従ってくれと言い聞かせるヨシノ。珍しく彼女がまともに見えた。
「えへへ、それなら今日だけは私が一緒に列形成とか誘導をしてあげるよ!だからさ、頑張ろうよカーリー!」
「リーシャ……!本当かしら!?」
なんだかんだ言って、カーリーはまだ10歳の子供だ。厳しい労働を強いるのは可哀想だと思ったのか、自ら協力を名乗り出るリーシャ。カーリーは絶望の中に見えた光の如く、リーシャの事を見つめる。
「なら僕もなにかし……」
「クジラは私が手伝うからって無理に手伝いに出る必要はないよ?」
リーシャが協力するなら自分だって!というように名乗り出ようとしたクジラだったが、リーシャはそれを予測していたように言葉を被せて抑止した。自分から買って出た面倒ごとなので、クジラは巻き込むのはダメだと思ったのだろう。
「えぇ〜、だってそしたら僕はぼっちで暇になっちゃうよ?」
「えへへ、シャワーを浴びて旅の汚れを落としたら、お部屋に戻ってグッスリ眠ると良いよ。寝てればぼっちだってあんまり気にならないでしょ?」
「……わかったよ。こういう時のリーシャは頑固だからなぁ。シャワーでも浴びて、のんびり眠るとするかな」
「うん!お利口さんだね!それじゃあヨシノとカーリー!デパート行こっ?」
1人寂しく待つのは嫌だと訴えるが、リーシャが全く聞き入れようとしない為、諦めて首を縦に振るクジラ。リーシャはちゃんと聞き分けたクジラに向けて笑顔を見せると、ヨシノとカーリーに早速デパートに向かおうと切り出す。
「ん、オッケー。その前にクジラ、カーリーが来てる制服のリーシャサイズ版を具現化してくんない?」
「ああ、良いよ。……はい、出来たよ。それじゃあ頑張ってね?」
ヨシノの一言でクジラが軽く具現化魔法を行使した後、それぞれデパートとシャワールーム、目的の場所へと向かうのだった。




