屋上の浮遊物
9章201話になります!
本日は1話のみの投稿にします!
それではどうぞ!
「ほわぁぁ……、なんか至る所に人、人、人っ!みたいな感じだねぇ。ヨシノは子供向けの遊園地だーって言ってたけど、カップルが1番多いね」
「あははは、なんだかそんなに楽しめそうにないね。どうする?遊園地は諦めてヨシノとかヤヨイを探す?」
クジラとリーシャはエレベーターガールなシータと別れ、屋上遊園地に足を踏み入れたのは良いのだが、人の量が多過ぎて人口密度に圧倒されていた。
「ん〜、多分あれヤヨイじゃない?ほら、あれあれ」
クジラの言葉に対して、首を傾げながら上空を指差すリーシャ。
「え、上?あ〜。あれだね。あんなのヤヨイしかいない」
「あれはなんのお仕事なんだろう……」
「お客さんを楽しませる演出……なのかな?おーい、ヤヨイー!」
「ヤヨイ〜!私だよぉ〜!リーシャとクジラだよ〜!」
クジラとリーシャは上空にふよふよと浮いているウサギの着ぐるみを見ながら、あれはどういう仕事なのだと考えた後、周囲にいる人の邪魔にならないよう手を振り、大きめな声で彼女と思わしき着ぐるみに対して呼び掛ける。
「……あっ!こっち向いて手を振り返してきたよ!やっぱりヤヨイだよ!……多分!」
「いや、確実にヤヨイだよ。ほら、こっちに向かって来てるよ」
クジラはリーシャの多分発言に対し、確実にそうだと返して徐々に近づいて来るウサギの着ぐるみに視線を送る。
「あんた達、なんでこんな所にいるのよ。旅は?」
「えへへ、旅はようやく終わったよ?さっきフーの街に帰ってきたら、デパートが開店してたから入ってみたの。ね、クジラ?」
「うん、リーシャの言う通りだよ。それにしても随分と繁盛してるね」
ヤヨイはふわふわとした飛行で2人の目の前に降り立つと、着ぐるみの頭の部分を少しズラして2人に声を掛けた。リーシャはそれに対して自然な笑みを浮かべて対応し、クジラに話を振る。ヤヨイと旅に出るきっかけとなった大喧嘩した時に出来た心の溝もだいぶ埋まりかけた様子だ。
「ふふっ、こんな世界観がおかしい建物、みんな気になってやって来るに決まってるじゃないの。今日でオープンから3日目なのだけれど、日に日に客数が多くなっていて本当に困るわ。人出は多い方が良いし、あんた達も働いてくれて良いのよ?」
「ごめんねヤヨイ。旅から帰って来たばっかりでヘロヘロだから遠慮させてもらうね?」
ヤヨイが忙しい事を口にし、2人に臨時で働けないかと頼むと、リーシャが申し訳なさそうにそれを断る。
「まあそうよねぇ。断られるの前提で聞いてみた感じだったから大して気にしてないわよ。私は念力で浮遊しながら上空から不審人物がいないか見回りをしているから、何かあったら呼んでちょうだいね。それじゃあわたしは行くわよ。わたしが見回りをサボって話をしている間に変な事件が起きたら大変だわ」
「あ、待ってヤヨイ!」
「ん?何よリーシャ」
「ヨシノがどこにいるかわかる?」
「ヨシノの場所?ん〜……、ヨシノは屋上以外の見回りをしているはずだから、具体的にどこっていうのはわからないわ。階段を使っていたから、遊園地から1階ずつ下りてしらみ潰しに探せば見つかると思うわ。それじゃ、今度こそわたしは行くわよ」
ヤヨイはヨシノの居場所を聞かれると、少し困惑しながら返答して再びふよふよと空中を浮遊し始めた。
「しらみ潰しかぁ。……遊園地は人が多いから諦めて、ヤヨイの言う通りにしらみ潰し作戦でヨシノを探していこう?」
リーシャは心底面倒そうな声を出しながら、しらみ潰しを決行する事に決めるのだった。




