爆走!
9章194話になります!
本日1回目の投稿です!
それではどうぞ!
「えへへ〜、やっぱり運転は楽しいね〜。私、車の運転が大好き!また今度、この愛車を使って長い旅をしたいね!」
現在時刻は午後3時を少し過ぎた頃。出発から、はや5時間程が経過していた。リーシャは自身の手に馴染んできたハンドルを握りながら、隣の助手席でくつろぐクジラに声を掛ける。発している言葉通り、見ていてとても楽しそうな様子だ。1時間毎に停車して休憩を取っているようだが、それでもトータル5時間も運転をしている。なのに関わらず、よくもまあそこまで元気でいられるものだ。
「ん〜……、毎度思うけど、僕はその運転が楽しいって感覚が全くわからないや。それよりさ、もうそろそろフーの街に到着するんじゃないかな?」
「そうだねぇ、あと1時間、いいや30分もしないうちに到着するんじゃないかなぁ?今日は平均時速120kmで爆走してるから、遅くても16時にはフーの地に到着するよ!」
リーシャの言葉に分かり合えないなと答えて苦笑した後、そろそろゴールも間近なのでは?と口にするクジラ。彼女は左手人差し指を顎に当てて軽く唸り考えた後、到着までの予想時間を口にした。
「まったく、僕の言う事を聞かないで速度超過しまくるんだから。……本当の本当に、事故には細心の注意をしてよね?」
クジラは彼女がサラッと口にした平均時速を耳にすると愚痴をこぼす。また、愚痴の後に数秒の間を置いて安全への配慮は怠らないようにという事を伝えた。どうやらリーシャは出発前の怒りの影響で、クジラがいつも口酸っぱく言っている速度に関する言葉を無視し、アクセルを踏み込んでいたみたいだ。クジラの方も何度か注意をしたみたいだが、彼女が全く聞く耳を持たない為、諦めて助手席側から周囲を注意深く警戒する事にしたらしい。そのせいか、見た感じ運転手のリーシャよりも隣にいるクジラの方が数倍は疲れているように見えた。
「えへへへ、クジラはいつも心配し過ぎだと思うなぁ。遮蔽物ひとつ無い平原なんだから、人とか魔物がいたらすぐに気付くし事故するはずがないもん」
「まあそうだけどさ。こんなに速度出されると不安で仕方が無いんだよ」
「大丈夫だってば。私を信用して?車の運転は十分手慣れてきたし、多少の危険は回避出来る自信があるから!最悪の事態が起き掛けても、クジラの空間移動があればどうとでもなるしね!」
「車の運転って慣れ始めた時が1番怖いって言うからなぁ……。危なくなったら僕を頼りにしてくれてるのは嬉しいけど、そもそも危なくなるような事にはならないようにね?」
クジラは自信満々な様子で心配するなと語るリーシャを見て、更に不安そうになる。だが、彼女が頼ってくれた事が嬉しかったらしく、先ほど以上に心配するような言葉は掛けず、今回は軽い警告だけで済ませた。
「えへへ、全力で快適で安全な旅を提供してあげるからね!」
「う〜ん……、この速度だと全然安心出来なくて快適は無理かなぁ」
「慣れだよ慣れ!フーの街まであと少しだけど、最後まで楽しんでね!」
リーシャはキラキラとした瞳でクジラに楽しむように告げると、会話によって少し落ちていた速度を上げながら鼻歌を歌い始めるのだった。最終的に130kmほど速度が出ていた為、クジラが不安で押し潰されそうな顔をしていたのは言うまでもない。




