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忠犬の勘違い




9章189話になります!


本日は1話のみの投稿です!


それではどうぞ!









「クジラァ!!大変大変!!」

「えっなに!?」


部屋から飛び出したと思うと、20秒もしないうちに全力ダッシュで部屋へと戻ってきたリーシャ。


「洋館のお外!お外でリコリオが!なんか凄い事になってる!」


リーシャはアワアワと取り乱した様子で必死に何かを伝えようとしていたが、言葉が上手く纏まらないようでいったい何があったのかはクジラに全く伝わっていなかった。


「えぇ?なんかよくわからないけど洋館の外にリコリオがいるって事?それでなんか大変な事が起きてる……みたいな?まあいいや、一緒に洋館の外に行こう!」

「うん!状況を伝えるならそれが1番早いや!」


クジラはルームウェアのまま、リーシャの手を引っ張り玄関に向かって走り出す。リーシャも動揺で回らない頭ながら、その行動がきっと最善だと判断すると彼の手を握り返し、足を引っ張らないように彼の速度に合わせて玄関まで駆けた。


ガチャンッ!!


「……えっ!!??」

『ワフー!』『ワウ!ワウー!』


玄関を思い切り開けると、目の前にはクジラとリーシャの登場に喜ぶリコとリオがいた。……それと2匹のもう少し前には、約10人程の武装したおそらくは迷宮探索者だと思われる人達が見える。昨日出来たばかりなのだが、よくたった1日でこの街へとやって来れたものだ。


「おい小僧っ!!てめえとこの犬、何者だっ!!??この黒い犬は魔王みてえな空間を操る能力を使って迷宮に入らせないように妨害しやがるんだ!どうにかしやがれ!」

『ガルルルルルゥッ!!』


1人の中年冒険探索者が怒鳴りながらクジラの元に近寄ると、いつでも襲い掛かれるんだぞというような威嚇をし始めるリオ。


「……もしかして、この洋館を僕達の新しい家だと勘違いしているのかな?」

「私もそんな気がする。ねえねえリオ、そんな怖い顔してないで落ち着いて?」

『……ワウ〜』


クジラはリオが凄まじい勢いで怒っている原因を考え、もしかしたらと思いながら1つの説を口にする。リーシャがその呟きに頷きながらリオを優しく撫でて落ち着くように伝えると、尻尾を振って先程までとは別の犬かと思う程の落ち着きを見せ始めた。


「よしよし、リオは良い子だね〜。もしかしてリオは、私達のおうちに知らない人が入って来ようとしてたから、阻止してくれたのかなぁ?」

『ワウワウ!』


これなら言葉が通じそうだと思ったリーシャは、優しく微笑みながら1つの質問をする。それにピコピコと尻尾を振りながら元気に吠えて応じるリオ。吠え方のニュアンスからして、おそらくはクジラの考えが正しいのだろう。


「ねえねえクジラ、やっぱりリコとリオはこのおじさん達を不法侵入しようとしてる人だと勘違いしちゃったみたいだよ?」

「う〜ん、これは僕らが悪いね。ちゃんと教えなきゃダメだったなぁ。それじゃ、謝るか」


自分達が忠犬過ぎるリコとリオに説明をしてなかったせいで、現状を引き起こしたんだと話を纏め上げたクジラは、迷宮探索者の皆さんに向けて深くお辞儀をした。


「今後、この迷宮を管理する事になった魔王クジラと言います。この子達は勇者と魔王の力を持った僕のペットです。この子達はこの洋館型迷宮を新しい自分達の家だと思っていたらしくて、皆さんの事を不法侵入者だと勘違いし、自発的に防衛を行っていたみたいです。本っ当にごめんなさい!!今からニニの街の迷宮を解禁しますので、許してください!」


深く頭を下げたまま、クジラはリコとリオが何故迷宮に足を踏み入れさせなかったのかを説明し、とにかく必死に謝罪をした。


「……ま、魔王のペットだったのか。ペットに歯が立たないんじゃ飼い主には勝てるはずがねえな。な、なあ魔王さんよ、阻止されたと言っても20分程度だし今回は許してやるよ。だから早く迷宮に入らせてくれ。良いか?」


迷宮探索者達は、クジラの謝罪を聞くと驚き言葉も出ないといった様子で固まった。初めにクジラに小僧と言い放ったおじさん探索者は、冷や汗を垂らしながらリオに掛けられた迷惑に関しては快く許すから早く迷宮に入れて欲しいと頼んだ。魔王にイチャモンを付けるのは自殺行為だと考えたのだろう。


「ふう、許してくれてありがとうございます。地下が迷宮になってるんで、目の前にある階段を下りていってくださいね」


クジラは洋館の大きな玄関扉を開き、ストッパーを使い扉を開きっぱなしにすると探索者達を中に迎え入れた。


「おぉ〜!?迷宮には思えねえ!お前ら!早速行こうぜ!」


おじさん探索者は驚きの声をあげた後、仲間達に声を掛けてダッシュで迷宮へと向かっていく。


「……ふう、問題なく事が済んで良かった〜」


探索者が全員迷宮へと向かうと、クジラは安堵のため息を吐くのであった。





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