ベロベロ勇者
9章180話になります!
本日1回目の投稿です!
それではどうぞ!
「お腹いっぱ〜い……。えへへ、クジラ〜。私、ベットで寝た〜い」
「私の事も運んでくれて良いぞ〜クジラ君!私は〜、とっても満足だ〜!この街、救えて良かった〜!」
開始から2時間。バーベキューもそろそろ終了間近だという雰囲気が漂ってきた頃、顔を真っ赤にしたリーシャが、隣でずっと自身の世話を焼いていてくれた心配性なクジラにグデッと倒れ掛かり、ちゃんとした所で横になりたいというワガママを伝える。アルコールが入り過ぎて調子が悪くなってきているのだろう。マールもリーシャと大体同じ様子なのか、クジラに自分を寝られる場所に連れて行ってくれとお願いしていた。
「自分達から退散してくれるみたいで良かった〜。凄い飲んでベロンベロンだし、いつストップ掛けて連れて帰ろうか迷ってたんだよね。そしたら、リーシャはおんぶしてあげるから僕に乗って?くれぐれもおんぶされてる時に吐かないように。マールさんはリーシャよりも若干歩けそうな感じがしますから、肩を貸すのでなんとか歩いてくださいね」
「あ、ああ。頑張るぞ私はぁ〜……」
「(肩を貸すつもりだったのに、思いっきり抱きしめられてるって不思議。……というかこの人、ほぼすべての体重を僕に掛けながらヨロヨロ歩いてるから負担がヤバイ!!)」
クジラは、2人の方からバーベキュー会場から退散したいと要求をしてきた事をラッキーだなと思いながらリーシャをおんぶし、マールには自身の肩へと腕を回して良いから必死に歩けと伝える。ちなみにどちらも同じくらい酔っ払っており、マールの方が歩けそうなんて言葉は嘘っぱちだ。溺愛する彼女を優先するのは当たり前のことである。そんな発言の後、クジラは酔って半分以上眠っているような美少女をおんぶしながらヨレヨレな美女に肩を貸すつもりが抱きしめられ、全体重を掛けられて2カ所からくる負担に苦しむという珍妙な姿を披露していた。
「り、リーダーさん……。リーシャもマールさんも完全にダメなようなので、僕らはこれで退散しようと思います。……マールさん、お願いですから全体重掛けながら寝ようとするのは勘弁してください」
「あぁん?ん〜……、わかったぞぉ」
そんな珍妙な姿を周囲に見られ、尊敬、嫉妬、羨望、嫌悪、憐れみ、殺意など多種多様な感情が込められた視線を浴びながらリーダーの前にたどり着くと、自分達が一足先に帰宅することを伝える。また、マールが眠ろうとしていた為、本気で辛そうな声のトーンで声を掛けながら体を揺すってやっていた。本当に苦労人である。
「な、なんかパッと見は羨ましそうに見えるが、近くで見ると負担が半端なさそうで辛そうな格好だな……。とりあえず、わかったぜ。ところで魔王の兄貴は今後、ニニの迷宮の管理をするんだろ?腕試しとしてウチのチームの奴らが迷宮に挑戦する事があるだろうから、偶然会って声を掛けられたら気軽に接してやってくれ」
「はは、了解です。それじゃ、リーダーさんも暇だったら是非迷宮にチャレンジしてみてくださいね。今日はバーベキューに招待してくれて本当にありがとうございました。とっても美味しかったですよ」
「おお、そりゃあ良かった!……最後にひとつだけ良いか?」
クジラの挨拶を聞いて楽しんで貰えたようで安心したといった様子を見せるリーダー。だが、数秒後に少し真剣さが伺える表情に変わり、頼みを言っても構わないかと告げる。
「ん?良いですけど?」
「魔王の兄貴、兄貴の見た目的に多分俺達の方が年上だが、今後迷宮で偶然出会った時とか、この不良チームの面々にはタメ口で話してくれ。もちろん俺にもな。俺達はタメ口なのに街の救世主が敬語で会話するのはなんか変だろ?」
「……あー、確かにそうだね。それじゃあお言葉に甘えてタメ口を使わせてもらうようにするよ」
リーダーの頼みはタメ口を使ってくれという事みたいだ。彼の敬語が気になって仕方がなかったらしい。クジラはそう頼まれたのだし、敬語を使わなくて良いなと判断してタメ口に切り替える。
「ありがとう魔王の兄貴。さて、長く引き止めて悪かったな。勇者の姉御がもうダウン寸前だし、サッサと連れて帰ってやってくれ」
「うん、そうだね。それじゃあ今度は迷宮でね?」
「はははっ!ああ、わかったぜ魔王の兄貴!今度、迷宮に挑戦しに行くからな!」
クジラは不良チームのリーダーと笑顔で言葉を交わすと、空間移動を使ってすぐ横にある洋館へと移動するのだった。




