迷宮所有者
9章162話になります!
本日2回目の投稿です!
それではどうぞ!
「おいっ!クジラッ!!お前さんどうしてここにっ!!??」
「うおおっ!?よくやったクジラァッ!!」
後ろから聞こえた声に振り返るクジラとリーシャにマール。
「……えっ、邪神のおじさんにヴァーチュ!?えっ、えっ!?な、なんか魔王の方々が続々と集まってきてる!?どんな状況!?」
背後の声は、魔王理事会会長である邪神とクジラの先輩魔王であるヴァーチュだった。彼らの後ろには、続々と魔王という職業に就く者達が空間移動で現れている為、クジラは驚愕している。
「おいおいクジラァ!よくやった!お前は最高な奴だぜっ!!」
「え、何が?ちょ、なんか後ろにいる魔王の方々が凄まじい勢いで睨んでるんだけど!?」
何故か途轍もなく嬉しそうにしながらクジラに近寄るヴァーチュ。クジラは目線の先で凄まじい睨みを利かせている魔王の集団に驚き、ヴァーチュにどういう訳だと若干パニックになりながら聞く。
「迷宮ってのはな?所有者がいない状態だと、1番初めに触れた魔王に所有権が与えられるんだ。だからこの迷宮はお前のものになったって事だ。新たな迷宮が出来上がったから、それに気付いた迷宮を欲しがる魔王どもが一斉にやって来たみたいだが来た意味がなかったみたいだし、ざまあみろって感じで笑えるな!」
ヴァーチュはホクホク顔で迷宮の所有者の定義をクジラに伝えた。そんなヴァーチュの軽口にカチンと来たのか、半分くらいの魔王はヴァーチュに殺気を飛ばしていたが、ヴァーチュ自身は何食わぬ顔でスルーしている。
「この迷宮は僕の迷宮になったって事で周りは殺気立ってるのか……。ちなみに何故ヴァーチュはそこまで喜んでいるの?ヴァーチュも迷宮狙いでここに来たんじゃなかったの?」
「ああ、もちろん俺も迷宮狙いだったぞ。所持する迷宮が増えれば、多少は忙しくなるがググッと昇給するからな!俺自身は獲得出来なかったが、クジラが迷宮を獲得してくれたから大丈夫だ。形式上、お前は俺の部下だからお前が迷宮を獲得してくれた事で昇給の恩恵が俺にも多少はあるんだ!いや〜、持つべきものは優秀な部下だな!クジラ、本当に良くやった!」
クジラの肩に手を回し、喜びを全身で表現するヴァーチュ。昇給が嬉しくて嬉しくて堪らないといった様子だ。
「なるほど、そういう事なんだね。つまりこの迷宮は僕が管理しなくちゃいけないんだろうし、これから忙しくなるのか……」
「ああ、俺にクジラ以外の部下が居れば負担はかなり減らしてやれるんだけどな。ま、俺はそこらの魔王と違って本当に優秀だと思える奴しかスカウトしねえからな!……すまん、調子乗った。俺のスカウト能力が低過ぎるだけだわ」
クジラがこれから忙しくなるだろうという事にため息を吐くと、ヴァーチュはケラケラと笑いながら周囲の魔王を盛大に煽る。その後、クジラにだけ聞こえるような小声で彼にだけ謝っていた。ただ単に見栄を張りたかっただけのようだ。
「ヴァーチュ、悪いんだけどさ?今日含めて2、3日だけこの迷宮の管理を頼めない?あと本当に僅かでフーの街に着くし、こんな目的地まであと少しな所で旅を強制終了したくないからさ。お礼として、甘いものでも美味しいお酒でもプレゼントするからお願い!」
クジラは、忙しくなるのは構わないが、2、3日の間はここの迷宮の管理も頼むとヴァーチュに依頼をする。あと目と鼻の先で旅は終わるというのに、強制終了などしたくないみたいだ。リーシャとの甘い時間をもう少しだけ続けたいという気持ちも多少混じっているのは内緒である。
「おう!3日くらいならお安い御用だぞ!あと礼は美味い酒で頼むわ!」
「うん、ありがとうヴァーチュ。それよりも中を軽く見てみようと思うんだけど、一緒にどう?」
「こんな見た目の迷宮を見るのは初めてだし、気になって仕方がないから行かせてもらうぜ。なあ邪神のおっさん、おっさんも中を見せてもらう目的でここに来たんだろ?一緒に行こうぜ!」
「うむ、そうだな。クジラ、魔王理事会会長として確認しなければならないから、ついて行かせて貰うぞ」
「ええ、勿論オーケーですよおじさん。じゃ、行きましょっか」
クジラは2人の同行に快く頷き、改めて玄関扉のドアノブを捻って入り口を開いた。




