明るい表情の裏側は
9章157話になります!
本日は1話のみの投稿にさせていただきます!
それではどうぞ!
「むぅぅ……」
「これは思った以上に難しい依頼だな。お爺さんを唸らせられるような提案が全く出ないぞ……」
引かぬと宣言し、街の長からニニの街の存続許可を得る為の対談を開始してはや1時間。リーシャ、マールともに難しい顔をしながら頭を悩ませていた。どの提案も軽くダメ出しされ、全く首が縦に振られる様子は無い。
「私はここにいますので、何か良い解決策でも思い付いた時にまた来たらどうです?流石にお互い疲れたでしょう?」
流石に1時間も対立して疲れたらしく、街の長であるお爺さんは相当困った様子で2人に一旦退出して貰えないかと遠回しに要求する。
「うぅ……、本当にごめんなさい。でも、あと少し……、あと少しで何か凄いアイディアが思い浮かびそうなんです……!」
「……本当に申し訳ありません。依頼は失敗の可能性がチラついても、最後まで諦めないというのが勇者としての鉄則なものでして。せめてあと10分ほど耐えていただけないでしょうか?」
「わかりました。ですが、本当に10分で終わりにしてくださいね?私も歳ですから、少し休まねば倒れてしまいますから……」
退出要求に対して謝罪をして、もう少しなのだと言いながらウンウンと唸るリーシャと、彼女のフォローに回って頭を下げ、もう少し時間をくれと要求するマール。真面目に話の1つ1つを聞き漏らさずに聞いてくれるような良い人なのだが、鋼の意思と言わんばかりの超頑固者な街の長は困り果てながらもマールの要求に応じ、あと10分だけ話を聞いてやると2人に伝えた。
「あと10分……。落ち着かなきゃ。私達に可能で、荒くれ者さん達だけでニニの街を存続させても大丈夫って言い切れる最高な案……」
リーシャは付け加えられたタイムリミットを口ずさみ、自分に落ち着けと暗示を掛けながら最適案は無いかと考える。
「……すまないなリーシャ。最強だなんて言われていても、考える事に関しては凡人レベルにしか出来なそうだ」
「ん〜、マールさんは隣にいてくれるだけで安心感が半端ないから気にしないで?私が最高な提案を考えるから!」
そんな必死に頭を悩ますリーシャを見て、珍しく弱った顔をしながら謝るマール。それにリーシャはホニャッとした柔らかい笑顔を見せ、自分に任せろと伝えた。
「……わかったよ。はは、リーシャも成長したな。それなら、私は隣で見守っている。……頼んだぞ?」
「えへへへ、マールさんにそこまで本気で何かを頼まれるの初めてかもね!嬉しいな〜。私、頑張らなきゃ!」
マールが頼んだと一言伝えると、パァっと嬉しそうな表情を浮かべながら頑張る!と告げるリーシャ。だがしかし、行き詰まっているのは確かだ。笑顔の裏で、どうしよう、何か良いアイデアを思い付かなければ……。と不安になっているのは言うまでも無い。
コンコンコン。
『すいませーん、さっき来た魔王の者です。なかなか戻って来なくて不安になったので様子を見にきました。入室しても良いでしょうか?』
リーシャが表に出す表情とは真逆な感情を心の中で蠢かせていると、優しいノックと共に扉越しから彼女の最大の支えである彼の声が聞こえた。
「クジラ!お爺さん、私、開けてきますね!」
「構いませんが、あと8分ほどでキチンと退出して頂きますよ」
リーシャは心が不安定な時に現れてくれた心の支えの登場に心から喜びながら、扉を開けて彼を部屋へと招き入れるた。




