戦闘狂と戦闘狂と魔王
9章146話になります!
本日1回目の投稿です!
それではどうぞ!
「……おいリーシャ、君は一体何をしている?」
「ほぇぇっ!?なんでバレちゃったの!?…コホン!リーシャって誰の事!?私はこの荒くれ者さん達の仲間だよっ!そんな女の人知らない!」
勇者である仲間と目出し帽を被った状態で再会を果たすリーシャ。持ち前のちょっぴり抜けた性格により、自ら暴露してしまっていたが、気にせず言い直してリーシャなどという女は知らないとしらばっくれる。
「……言い直してもセーフにはならないと思うなあ」
同じく目出し帽を被ったクジラは、引き攣った表情を浮かべながらボソッとツッコミを入れていた。その引きつった表情というのは、リーシャに対してではなく、自分達と対峙している相手の問題である。
「そのちんまりとした姿と紅い目と、目出し帽の後ろから出てる隠す気の無い白くてフワフワな髪と聞き慣れた声、おまけに扉からひょっこり顔を出してるペット達だな。これだけの判断材料があって君と親しい私が間違えるはずがないだろう?……それで?どうして2人が街を占拠していた犯罪者共の味方を名乗っているんだ?君達は元々この街を救いに来たとギルドにいた兵士から聞いたのだが……。場合によっては怒るぞ?」
対峙している相手というのは、リーシャの良き先輩であるマールであった。タイマンだと愛用の武器を使わずに手抜きしてもリーシャを圧倒してしまう実力の持ち主である為、勇者と相対する事を決めたクジラが嫌そうな顔をするのも当然だ。勇者としての仕事中に相応しい凛々しい目でリーシャを見つめながら、目出し帽を付けたリーシャから見える身体的特徴プラスアルファを口にした後、不思議で仕方のない疑問を投げ掛ける。どうして街を救いに来たのに、街に危害をもたらす輩と一緒にいたのかが不思議で仕方がないという様子だ。
「クジラ〜、マールさんにもろバレしてるじゃん!この1ミリも役に立たなかった目出し帽、もう外して良いよね?」
「うん、ごめんね全く意味が無かったね。外しちゃいなよ。……マールさん、今回ばかりはこの荒くれ者達だけが悪い訳では無いと判断したので、僕らは荒くれ者達の味方をする事にしました。もちろん、武力行使とかを企て始めたら全力で止めるつもりですよ?」
目出し帽の必要性の無さを感じ、唇を尖らせ不満を口にする彼女を見て微笑み声を掛けるクジラ。その後、真面目な表情に切り替えてマールと目を合わせながら堂々と口を開く。
「……はあ、私は頭を使う事は嫌いなんだ。ただ襲撃で街がピンチになったとか、そういう訳ではない複雑な事情のありそうな緊急事態に私を派遣するなど会長の予想も外れたな。武力行使の前に話を聞いてやろうじゃないか」
「ほえぇっ!?クジラと組んでマールさんをボコボコにしてやろうと思ったのに!」
マールはとてつもなく嫌そうな顔をしながら、面倒ごとは勘弁しろと会長に対する愚痴をこぼした後、仕方がないから話を聞いてやると告げる。戦闘狂だが、仕事はキチンとこなすマトモな勇者だ。戦闘を心待ちにしていたリーシャは少し不満げに同じ勇者だとは思えない事を口走っている。
「……サラッと畜生な事を言うよねリーシャは。僕は戦いたくないので話し合いをしてくれるなら助かります」
「あ〜……、リーシャの発言聞いたらやっぱり気が変わった。とりあえず2人をぶちのめした後に話を聞こう。万が一、私に勝ったら勇者としての理に反する事のない話であれば、私はお前達に快く全力で協力してやる。当然のように私が勝ったら話は聞いてやるが、面倒だったら2人に丸投げして勇者理事会に帰り、凄いくだらない内輪揉めに巻き込まれただけだったと会長に報告する。どうだ?」
クジラはホッとしながら話し合いをする為に部屋に戻ろうとしていたが、リーシャの口走った挑発まがいな言葉を受けたマールはギラギラとした獣のような目つきを彼に向け、その場のノリで決めた条件を提示する。
「勇者ってそんな適当なノリで判断を下して良いのか……?というか、荒くれ者達の事を見逃してくれるんですね。彼らは彼らでニニの街を思っての行動を取っていたので、ありがたいです」
「リーシャと君が悪人側に付くという状況だ。きっと悪側は実は良い奴だったとか、そういう事なんだろうと私は考えた。……この考え、当たってるか?」
「まあ、当たりっちゃ当たりです。彼らは街の……」
「待て待て、もう喋るな。後は拳で語れ。私も全力で肉体言語を使って対応する」
「えへへ、やったねクジラ!クジラと組んだ私は最強だよ!一緒にマールさん狩りを頑張ろうね!」
「この戦闘狂達め!まあ、勝てば心強い味方が増えるからやってやるしかないかぁ。リーシャ、空間移動でアシストしまくるから、足場が途端になくなったりしても冷静を保って行動してね?」
「了解!」
クジラは戦闘狂2人に巻き込まれ、大きなため息を吐く。しかし、彼女が味方になれば今回の事案解決は簡単になるかもしれない。そう思いながら、クジラはリーシャと肩を並べてマールの前に立つのだった。




