街の長
9章141話になります!
本日1回目の投稿です!
それではどうぞ!
ゴンゴンゴンッ!
「ごめんくださーい!入っても良いですかー!?」
「リーシャ、ノックが強過ぎて荒くれ者の仲間に間違われるよ……?」
「えへへ、私こういう場面で役に立たなそうだから、大体の会話はクジラに任せるね?」
リーシャは街の長の自室に力強いノックをして、入室の許可を貰おうとドア越しに大きな声を出す。荒くれ者達に家を占拠され、心が病んでいるであろう人に対して明らかに得策ではないと感じ、苦笑いしながら彼女の頭に優しくチョップして注意をするクジラ。
「うん、任されたよ。なんとかあのチンピラの人達が街に残れるよう説得してあげるよ。……コホン、連れが無礼な挨拶をして申し訳ございません。僕はフーの街で魔王をやっている者です。部屋に入室してもよろしいでしょうか?」
ガタッ……カチャ
クジラがリーシャとは違って礼儀正しく挨拶をして入室の許可を求めると、立ち上がって扉の鍵を弄る音がする。
「お、開けてくれたみたい。入って話を聞こっか。……ん?」
ガチャッ、ガチャッ…
「……閉められたみたい」
「ほぇっ!?なんで!?」
鍵の音は予想とは逆みたいだ。もともと扉は開いていたようで、逆に鍵を閉められたらしい。
『……魔王様というのが嘘でないならば、能力で入ってくだされ。嘘ならば嘘だから扉を開けて欲しいと正直に話しなさい。貴方が街の不良達の仲間でも、別に私は入室を拒みませぬ』
2人揃って困惑していると、ドア越しに街の長と呼ばれていた男が話し始める。どうやら、声のしゃがれ具合からしてお爺さんのようだ。それに荒くれ者達が言っていた話しひとつ聞かないという印象とは違い、誰の話でもキチンと応じる姿勢でいるらしい。
「なるほど、魔王というのが本当か試した訳ですね。わかりました。リーシャ、行くよ」
「うん!それにしても、チンピラ達怖いだろうに、扉開けっぱなしでいるとか凄い度胸のお爺ちゃんだねぇ」
クジラはリーシャにひと声掛けると、街の長の部屋の中に繋がった空間の裂け目を具現化して足を踏み入れる。彼の声に頷いて応じながら、街の長の度胸に感服したという事を口にしながらクジラの後に続くリーシャ。
「……おお、本当に魔王様でしたか。疑って申し訳ありませぬ。私はニニの街の長をしている者です。どうぞ、こちらの椅子にお座りください」
出迎えたのは、しゃがれた声から出来た想像よりも若いお爺さんであった。本当に魔王特有の能力である空間移動をしてくるとは思わなかったらしく、頭を下げて詫び、4人ほどが座れる横長のソファに腰掛ける事を勧める。
「ありがとうございます。アポ無しで出向いて本当に申し訳ないです。早速ですが、色々とお話を伺ってもよろしいですか?」
「ええ、構いませぬよ魔王様。なんなりとお聞きください。私が知っている事ならば、包み隠さずお話しする事を誓いましょう」
リーシャと共に勧められたソファに座ると、落ち着いた口調で早速話を始めていいかと尋ねるクジラ。それに快く街の長であるお爺さんが了承した事で、ニニの街が無くなる事で起きた事件についての話を開始するのだった。




