荒くれ者達の頼み
9章140話になります!
本日は1話のみの投稿です!
それではどうぞ!
「ねえねえ、私達にこの街を救ってって頼んできた兵士さんが、生き残りの兵士は自分と逃げ隠れただろう数人とか言ってたんだけども、人、殺しちゃってる?殺しちゃってるなら、私も勇者として対応しなくちゃいけないけど……」
「いいや、俺達は1人も殺していない。少しやり過ぎて大怪我をさせちまった兵士もいるが、仲間に治癒魔法が得意な奴が2人いてな。そいつらのおかげで今は自宅で寝てるはずだ」
「それじゃあ、この街の住人はどこです?僕ら結構歩き回ったけど、1人も見当たらなかったんですけども…」
「昨日占拠を始めた時、今日は自宅から絶対に出るなと念を押して頼んだからな。住人の中には俺らの考えをわかってくれる人も多数いるから、律儀に守ってくれていたんだろう。それに逆らったり、破って逃げ出した住民は、金持ちでデカイ家に住む俺達の仲間の家に監視付きで滞在して貰っている。お前達は偶然そういう住民に会わなかっただけだな」
リーシャとクジラが順番に思った事を質問すると、律儀に1つ1つ返答をする荒くれ者のボス。いかにもチンピラといった見た目以上にマトモであり、人としての倫理観もキチンと持ち合わせているみたいだ。
「ん〜、それじゃあ子供の泣き声と大人の叫び声は?私、その声を聞きつけてこの家に辿り着いたんだけど」
「ああ、ついさっきだな。この家はこの街の長の家なんだが、2階の自室に待機してもらってる長の子供が俺達に対する恐怖にやられたのか、泣き喚きながら窓を開いて逃げようとしていたみたいなんだ。俺らもこんな顔だから、子供にビビられるのも当然だよな……。泣き始めた時点で仲間が1人子供の方に向かってたから、逃げる前に大慌てで阻止したって訳だ。今は子供の母親、街の長の妻に頼んで落ち着かせて貰っている」
「なるほど……。ちなみに街の長は今どこに?」
リーシャが聞いたという子供の声に謎が解け、これで大体の疑問が解けたなと多少スッキリとした表情を見せながら、この事件の発端であり、要である街の長についての所在を聞くクジラ。
「今は自室に引きこもっている。街の占拠前と変わらず、俺らの声なんて聞きやしねえさ。くそっ、なんで住民全員が強制的に移住しなけりゃいけねえんだ!別に残りたい奴は残って街を存続させても良いだろうがっ!」
それに冷静に返答するが、苛立ちが蘇ったのか壁を殴りながら不満を口にする荒くれ者のボス。
「ねえクジラ、私達で街の長って人に話を聞いてみようよ?私達はチンピラの一味じゃないし、話を聞いてくれるかもしれないでしょ?」
「え〜……、どうだろう……。リーダーさんはどう思います?」
「いや、俺に聞かれてもな……。まあ、もしかしたらっていう希望はあるか……?なあ、頼んでも構わないか?夕食を奢る程度の報酬しか出せないが……」
「それで良いよ〜。やったねクジラ!夕食奢ってくれるって!財布すっからかんにしてやろっか!」
「あははは……、リーシャならば本気でそれくらい食べそうだから、限度は弁えなよ?」
「ありがてえ……!勇者の姉御!あと黒髪の兄ちゃん!よろしく頼む!」
リーシャが二つ返事で頼みを引き受けると、ボスを筆頭に荒くれ者達は頭を下げる。
「オッケー!任せてねっ!クジラ行こうっ!リコとリオはここに残ってお兄さん達と遊んでてね?多分、10分もしないうちに戻ってくるから!」
リーシャは自信満々に任せるように伝えると、リコとリオに待機命令を出して、クジラと共に街の長の元に向かうのだった。




