リーシャより上に
9章122話になります!
それではどうぞ!
「んふふ〜、クジラの運転、中々良くなってきたんじゃないかな〜?いま私、結構快適に乗れてるよ?」
「本当?それは良かったよ。ちょっとだけ嬉しいかな」
クジラの運転で車を走らせること1時間。だいぶ慣れてきたようで、現在は60kmの速度で旅路を進んでいた。まだ少し車の速度を遅く感じているようだが、それでもマトモな速度は出せるようになってきた為、及第点としてクジラの事を褒めるリーシャ。若干照れながら、彼は褒められて嬉しいと口にしていた。
「ところでリーシャ」
「ん?なーにクジラ?」
「もしかしたらこのままだと、知らない街とか村を発見する前にフーの街に到着しちゃうんじゃないかな?結構な距離を車で走ったのに、ツイスの街を出てからは建物ひとつ確認出来てないから、そんな気がするんだよね」
「…ん〜、それはないはず。確か、フーの街から北に進むとフーの街ほどは大きくない街が1つと、結構小さな村が1つあったはずだもん。もしかして、進行方向間違えてたりするかなぁ…。でも方位磁石を見る限り、いま車はキチンと南に向かって走ってるから合ってるはずなんだよね〜…」
クジラの言葉を聞き、難しい顔をしながら仕事で愛用している方位磁石を取り出して見つめるリーシャ。進路に間違いはないようなので、特にクジラに進路に対する指示はせず、可愛らしく唸り声をあげていた。
「まあ、もしも道を間違えてたとしても、旅の時間が長くなるって考えればよくないかな?そう考えると楽しくなって来ない?」
「えへへ、クジラのそういうお気楽な考え好きだよ。そうだね、無駄に色々と考えてた私がバカだったよ!」
そんな絶賛悩み中のリーシャに、お気楽な言葉を伝えるクジラ。それを聞くと、悩んでいる自分がバカらしくなったのか、リーシャはホニャッと微笑んで彼の言葉に同意をしてみせた。
「難しく考えたり、悩んだりするだけ無駄だからね。流れに身を任せて適当に行こうよ」
「うんっ!適当が1番だね〜。それじゃあ、引き続き運転よろしくね?運転で私をキュンキュンさせなきゃダメだよ?」
「あはは…、まだ上達させなきゃいけないのか…。厳しいなぁ、僕としてはそろそろ車の運転すら変わってもらいたい所なんだけどね」
「ダメだよっ!もしも今すぐ運転代われって言うのなら、断固拒否って意志を持ちながら眠りに就くよ!クジラは私っていうかけがえの無い話し相手を失って、1人寂しく運転をしなくちゃいけなくなるんだから!」
まだまだ自分が運転をしなくてはならないと知ったクジラは困った顔で交代を要求するような発言をするが、リーシャは楽しげな笑顔で彼を脅し、継続するよう告げた。
「…はあ、わかったよ。僕って本当にリーシャには逆らえないなあ」
「私のお尻に敷かれてるよね〜」
「否定出来ない…。いつかは立場逆転してリーシャの上に立ってやるんだから」
「無理無理!クジラはずーっと私のお尻の下だよ!絶対にお尻の下から退かしてやらないもん!ほら、話し込んでて車の速度が下がってる!」
「あ、ごめん気を付けるよ」
クジラはリーシャより上の立場になるという野望を抱きながら、リーシャから注意を受けてヘコヘコするのであった。




