剥製の博物館
9章118話になります!
それではどうぞ!
「すっかり話し込んでたね。やっぱりリーシャと話をすると、どんな話題でも基本的に楽しくて時間の進みが早いや」
「えへへ、私もだよ!今は全く知らない世界で1から生活を始めるとしたら、何をして生きていくかって話だったけどさ?今話した中には、きちんとした職に就いて忙しい毎日を送る私達でも十分可能な事が幾つかあったし、暇な時間が出来たらチョコチョコと1つずつ試していこうよ!」
2人はこの世界ではなく、全く知らない別の世界へと移住するとしたら、どのような事をして暮らしていくかという話題で大盛り上がりであった。約1時間もの間、その話題で様々な意見が飛び交っていたらしい。案を口にしたら2人で実現可能かどうか悩み、実行可能ならばクジラがスマートフォンにメモを残すという事をしていたようなので、彼のスマートフォンのメモには、実現可能な案が40個ほど記されていた。働かず哲学にふける遥か昔の思想家達のような時間の過ごし方である。
「今の僕らに出来そうなのでかなり達成感がありそうなのは…、自転車とかキックボードの組み立て方を書いた紙をアゼルトリア中の鍛冶屋とか部品を作って組み立てられそうな人達に渡して、便利で誰でも動かせる人力の乗り物を普及させる事か、魔物を捕獲してヨシノに剥製にして貰って、魔物の剥製で博物館を作る事とかかな?」
「えへへ、私は特にその博物館を作ってみたい!大体、50種類くらいの魔物を1種類3匹ほどで合計150匹くらい剥製にすればオッケーでしょ?魔物は私が狩って来るし、ヨシノは変幻魔法で100匹以上の魔物を剥製にしてってお願いしたら相当面倒臭がると思うけど、どうせやってくれるもんね!博物館を作る為の広大な土地はフーの街の外の誰の物でもない平原をクジラの具現化魔法で整備すれば良いし、かなり簡単に出来そうじゃん!」
ケーキ屋さんやパン屋さんなどという普通な案をそこそこあったが、時折、中々に壮大な案もあったみたいだ。壮大な案の中の1つである魔物の剥製博物館は、リーシャ曰く自分が口にした中で最高傑作な案のようで、クジラがそれを実現出来そうというと、嬉しそうに博物館を作る為の過程を口にし始めた。
「あはは、リーシャの話を聞いてる限り、僕達ならば本当にチャチャっと出来ちゃいそうだよね。ヨシノデパートも1日で建物を作り上げちゃったし、博物館は広さにもよるけど建物自体は3日以内に作れそうかなぁ」
リーシャの熱の入った演説を聞き遂げると、確かに実現するのは簡単そうだと口にし、頭の中で博物館の外見をイメージし始める。
「えへへ、クジラも乗り気で嬉しいっ!もしも博物館が出来たら、博物館の名前はえぇ〜っと…、リコリオ博物館!私がそこの館長さんになるの!クジラは副館長さんね!」
「もしかしてリコとリオも剥製にしようだなんて思ってないよね…?」
『ワフっ!?』 『ワオォっ!?』
「そんな事しないよ!私はリコリオに酷い事なんてしないもん!…ほぇっ!?なんで私が近づくとクジラの後ろに隠れるのさ!」
リーシャが博物館の名前を思いつき宣言すると、クジラは微妙な顔をしながらポケーッとしているリコとリオを見つめた。2匹はリーシャがよからぬ事を考えているのかもしれないと察知し、少しだけ警戒しながらクジラを盾にする。彼女はそれに対し、ガーン!という効果音が似合いそうな顔をしていた。
「あははは、リーシャがリコリオに警戒されるなんて珍しいね」
「うぅ〜、ごめんねリコリオ〜。絶対にリコリオを剥製になんてしないから許してよぅ〜」
リーシャが近寄ろうとするたびにスススッと逃げるリコとリオ。2匹が許してくれるまで10分ほど、彼女は必死になって謝りながら2匹を追いかけ回すのであった。




