訓練の後は
9章108話になります!
本日は1話のみの投稿とします。
それではどうぞ!
「まったく、模擬戦はしないって言ったのに突然襲いかかってくるんだから」
「えへへ〜、ごめんね?クジラが珍しく私と一緒にトレーニングしてるのを見たら、身体が疼いちゃった!」
テントの中にて、緩んだ顔でクジラの膝を枕にして寝転がるリーシャ。クジラはそんな見てて癒される彼女の雪のように白くてフワフワな髪を手で優しく梳きながら、小言を呟いていた。リーシャは気持ち良さそうに髪を梳かれながら、無邪気に笑って彼の言葉に応じている。
「それに、自分の身体の状態がわからなくなるほどに夢中になっちゃダメだよ。多分、あのまま続けてたら確実に風邪がぶり返してたよ?」
「むぅ〜…、だってクジラと戦うのが本っ当に楽しくて楽しくて堪らないんだもん!私の戦って楽しい相手の1位はクジラなんだからね!自分の思い通りに戦闘が進まなくて展開が読めない戦いって大好き!…あ、もちろん命懸けじゃない試合とか模擬戦に限るよ?」
クジラが戦闘にのめり込み過ぎだとリーシャに忠告すると、彼女は人差し指をピンと立てながら、クジラとの戦闘が1番楽しいから仕方がないんだと熱弁してみせた。
「なるほどなぁ。でも、マールさんとか勇者の会長さんと戦った方が展開が読めなくて楽しいんじゃないかな?何故に僕が1番?」
「私、一方的にやられるのがわかりきった負け戦は嫌いだよ?クジラにならば半々くらいの確率で勝てるし、正攻法な会長とマールさんじゃあ絶対にして来ないような予想を超えた卑怯な戦法をしてくる時があるから、行動が全く予想出来なくて好きっ!」
「あはは、そっか。マールさんとか会長さんと模擬戦をしたらボロッボロに負けるもんね。僕との模擬戦を本気で楽しむ理由がよくわかったよ」
どうしてリーシャは自分との模擬戦が1番楽しいと言うのか理由を理解すると、負けず嫌いな彼女らしい理由だなと思って笑うクジラ。良い訓練だとは理解しているのだろうが、彼女はタイマンで絶対に敵わない相手とはいくら模擬戦をしても、心底楽しいとは思えないらしい。
「むう、クジラの言うとおりだけどさ。それを面と向かって言われるとムカっとする…」
「ごめんごめん。それよりもそんな怒った顔しないで?」
「うぬぅ〜、ほっぺ弄るのダメぇ〜」
クジラが、リーシャはマールや会長に模擬戦を挑んでもボロクソに負けてしまうという事をストレートに告げると、少し腹を立てたようだ。ムスーッとしたと顔で不満を口にするリーシャ。それに対してクジラは楽しそうに笑いながら、彼女の両頬を優しくつまんでムニムニと動かしたり軽く引っ張って伸ばしたりする。リーシャはダメだと言いながらも抵抗せず、どこか嬉しそうな顔で彼の行為を受け入れていた。
「ふにゃふにゃで触り心地最高だよ。ふぁぁ…、模擬戦で激しく動いたら眠くなっちゃった…。昼寝でもしようかなぁ〜」
クジラはリーシャの頬を揉む手を止めると、大きなあくびをする。襲い来る彼女に追い掛け回され、必死に逃げて避けて受け流してを繰り返した為、精神的にも肉体的にもヘトヘトなのだろう。
「私も疲れたからそうする〜。なんか、こうやって旅をお休みにしてテント内でダラダラ過ごすのもアリだね〜」
「僕らは少し頑張り過ぎてたからね。これからはのんびりダラダラと、極限まで楽をして旅をしようね」
「えへへ、これからはって言っても、1週間もしないうちにフーの街に到着すると思うよ?でも、それに賛成!なるべくトロトロと旅を長引かせるようにしながら帰ろっか!」
「そうだね。…ふぁぁ、それじゃあ寝よっか。晩ご飯はしっかり食べたいし、19時にアラームをセットしてっと…」
「ふはぁ〜、何もせずにダラダラと時間を無駄にするの最高〜。おやすみクジラ〜」
2人はゴロンと横になると、ボーッとテントの天井を眺めながらポツリポツリと交互に喋っていたが、いつの間にかどちらからか口を閉ざし、スウスウと寝息を立てて幸せそうに夢へと旅立つのだった。




