何不自由なく
9章69話になります!
本日2回目の投稿です!
それではどうぞ!
「ふぅ…、あっという間だったけど楽しかったなぁ」
クジラはリーシャの部屋へと戻り、彼女と自身の2人分の旅仕度をしながら満足げな声色で呟く。訪問直後は悪い方向で暴走してしまっていたルーシュによって迷惑ごとに身を投じる事になったが、その後の義弟妹達とのふれあいや、リーシャとララの帰還祝いという名目の宴会で十分に笑う事が出来た為、嫁の実家訪問は結果的に満足のいく有意義なものになったみたいだ。
ゴッ!…ゴッ!
「あ、僕だけしかいないですけども、どうしましたー?(扉を殴ってるようなノックの仕方だな。リーシャはそもそもノックと一緒に入って良い〜?とか聞いてくるし、誰だろ…?)」
昨夜から今日にかけて、面白かった事を思い浮かべては1人笑みを浮かべていたクジラだったが、扉が強く叩かれた為に一旦旅仕度をやめ、誰だろうと思いながら声を出す。
ガチャッ!
「おう、クジラとやら。俺だ」
「お義父さんですか…」
「おい!いま若干嫌そうな顔をしたな!?俺にはわかったぞ!あと俺はまだお前が義理の息子だとは認めていない!お義父さんと呼ぶな!」
クジラがノックに対して声を掛けてから数秒後、入室してきたのは義理の父であるルーシュであった。初っ端からテンションは最高潮で、色々と文句を言うルーシュ。入室と同時に静かな部屋を騒がしい部屋へと変えてみせた。
「あははは、別に嫌そうな顔なんてしてませんよ。あと、お義父さんが認めてくれなくても僕はお義父さんと呼び続けますから」
「ケッ、少しでも俺の可愛い可愛いリーシャを困らせたら即離婚させっからな?」
「ええ、いつもニコニコ笑っていてくれるように努力しますよ。…それより、お義父さんはどうしてここに?それと、リーシャの部屋って僕が来るまでは男性は1度も入った事無かったらしいですけども、そんなすんなり入っちゃって良いんですか?」
不満げな顔をしているルーシュに笑顔で対応するクジラは、何故自分だけしかいないこの部屋に入室して来たのかと聞く。
「リーシャが起きて部屋にいる間はな。どっかのバカ長男は固有能力の為とか言ってリーシャのパンツを勝手に拝借しているし、俺だって夜な夜なリーシャの可愛らしい寝顔を眺める為に結構部屋に入った事あるぞ。まあ、そんな事はどうでも良いんだ。おい、クジラとやら。お前達の結婚を認めてしまった訳だが、収入や住居、食生活について改めて聞いても良いか?お前の事はどうでも良いが、リーシャには何一つ不自由の無い生活を送って貰いたいんだ」
ルーシュは本題の話に移ると、とても真剣な表情でクジラに基本的生活に関する事を問う。その目と言葉からは本気で娘を思う気持ちが溢れていて、娘を大事に思う気持ちが痛い程に伝わってきたようだ。
「わかりました。特に心配する事は無いんですけど、嘘偽りなく1つ1つキチンと僕の経済面を話そうと思います」
特に経済的に困っている事など一切無く、むしろ経済的余裕がある為、簡潔に質問に答えるだけでも良かったはずだが、とても真剣な面持ちのルーシュを心から安心させてやる為に、クジラは懇切丁寧に自身の経済面を話し始めるのだった。




