お父さんはゲームマスター
9章49話になります!
本日1回目の投稿です!
それではどうぞ!
「お父さんお父さん!クーちゃんはね!凄いんだよ!凄い手品を見せてくれたし、ゲームが凄い上手いんだよ!」
年少なロンを除くトトリ家男性陣によるテーブル増設作業が終わると、ロンは携帯ゲーム機片手に父親であるルーシュの元に駆け付け、クジラは凄いんだと、饒舌かつ活力的な表情で語っていた。
「おー、そうかそうかぁ。遊んで貰って良かったなあロン。だがお父さんの方が凄いぞ?何せ俺はずっと昔に、稀代の遊び人王子とか、ゲームマスターとか呼ばれていたんだぜ!」
子供に激甘なルーシュは、顔をこれ以上ないと言うほどに緩ませ、自身の過去のあだ名を息子に教えてやる。元々トトリは亡国の王族である為、なかなか洒落にならない蔑称な気がするが、本人がケラケラと笑っているから特に気にする事もないのだろう。
「遊び人!?ゲームマスター!?お父さん、なんか凄そう!」
「ああ凄いぞ!お父さんは凄いんだ!それで、クジラとやらはどんなゲームが上手いんだ?チェス?トランプゲーム?それともリバーシとかか?」
ロンがよくわかっていないながら凄い凄いとよいしょする為、徐々に鼻が天狗になっていくルーシュ。クジラよりもゲームが上手な所を見せ付け、クジラなんかよりお父さんの方が超上手いと言ってもらいたいのか、ゲームでクジラと対戦をしたいという意思を見せつけた。
「ゲームはこれだよお父さん!1つしかないし、クーちゃんのスコアを上回ってみせてよ!」
「…んっ?ゲーム?さっきリーシャが見せつけてきた魔道具と瓜二つなそれがか?」
ロンはルーシュに携帯ゲーム機を差し出し、クジラのスコアを上回ってみてと告げる。もちろん、電子ゲームなど見た事もやった事もないルーシュは、目をまん丸にしながら差し出された携帯ゲーム機を受け取り、これがゲームなのかとゲーム機に映し出された画面をマジマジと眺めた。
「それは僕の住んでいた場所で流行っていたゲームですよお義父さん。さっきまで、ロン君とこれで遊んでたんですよ」
クジラは携帯ゲーム機に困惑するルーシュに、それは自分の世界で流行っていたゲームだという事を教える。サラッとお義父さんと呼んでいたが、ルーシュはそんな言葉よりも携帯ゲーム機の方に興味があるらしく、それに関する指摘は特になかった。
「これが自称異邦人の故郷のゲームか…。これを複製し、アゼルトリア全土で販売をすれば億万長者になれそうだな」
ゲーム画面をジッと眺め、やましい考えを口にするルーシュ。確かに、ゲームなどボードゲームかカードゲームくらいしかないこの世界で携帯ゲーム機などという物が突如販売されたら、飛ぶように売れるはずである。もしも超高額な値段を付けたとしても、物珍しさに目を付けた富豪層がなんとなく購入し、そこから口コミで富豪層からの購入希望が殺到する可能性大な為、ボロ儲けに失敗する可能性はゼロなのだ。
「販売する気はないし、おそらく複製は不可能ですからね?」
「ダメか。金になる木を見つけたと思ったんだがなぁ…」
意外にも、クジラが一言ダメだと告げると簡単に引き下がるルーシュ。別に金銭に困っている訳でもないようで、ダメならダメで別に構わないらしい。
「ねえお父さん、クーちゃんより凄いんでしょ?ゲームマスターの凄さを見せてよ!」
ルーシュとクジラのよくわからないお金に関わる話が始まり、退屈そうな表情を浮かべていたロンは、ルーシュのズボンをグイグイと引っ張って早く実力を見せてくれと伝える。
「…えっ?いやぁ、あのだな…。俺はボードゲームとかのマスターっていうかなんていうか…」
電子ゲームなどやった事がない為、敗北が確定しているルーシュは、ロンの言葉に対して視線を彷徨わせながら言い訳を口にし始めた。
「へへっ、父さん。あれだけ大口叩いたんだから、もちろんクーちゃんに勝つんだよね?なんたって父さんは稀代の遊び人王子なんだから!」
テーブル増設作業が終わり、つまみを食べながら酒を飲み、思いっきりくつろいでいたランドは、そんな言い訳を始める父親を追い詰めるようなイタズラを仕掛ける。なんだかランドが茶々を入れるのは珍しいなと思い、クジラは彼の方へ顔を向けると、察したようになるほどと呟いた。どうやら彼は若干酔っているみたいだ。
「くそっ、お前はどっちの味方だランド!だが男は吐いた唾なんて飲み込めん!ゲームマスターは初見であってもゲームならば大概なんとかなる!…はずだ。クジラとやら!お前のスコアなど簡単に抜かしてやるからな!…だがその前にクジラとやら、操作が分からないとフェアじゃないから少し操作法を教えてくれ。あ、あと少しばかり練習時間がなければダメだからな!?」
ランドの一言により、覚悟を決めざるをえなくなったルーシュ。クジラに思いっきり啖呵を切った後、少し恥ずかし気に操作方法を聞いて試プレイを始めるのであった。




