父
9章29話になります!
本日2回目の投稿です!
それではどうぞ!
「えへへぇ、あなたただいまぁ〜♪」
「…え?アリシヤ!お前何処からっ!!??」
クジラの空間移動を最初にくぐり抜けたアリシヤは、広間にいた夫、もといリーシャ達の父親に笑顔で声を掛ける。空間移動により唐突な帰還を果たしたアリシヤに驚き声を掛けようとしていたが、後続から現れたリーシャを見た途端、口をパクパクと開閉して声にならない声を上げ始めた。彼女達の父親は、彼女達に色濃く遺伝した綺麗な白髪と紅い目を持ち、ランドが歳を取ってダンディなおじ様になったら、このような姿になるのではないかというような容姿をしている。
「えへへ、帰って来たよ!」
「リーーシャァァァッ!!!」
そんな驚愕という言葉を越えた反応を取っている父親を見てクスリと笑いながら、帰還の報告をするリーシャ。すると父親は娘の名を絶叫しながら娘目掛けて駆け出し、キツく彼女の事を抱き締めた。
「うわぁっ!?お父さん感動し過ぎっ!」
「リーシャ!良かったっ!ようやく会えたっ!ララ!もちろんお前もだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「うおぉっ!!??やめろ離せバカ親!」
リーシャを抱き締めて10秒ほど経つとゆっくりと彼女を解放する父親。しかしそれで落ち着くことなく、アリシヤ、リーシャ、ランドに続いて広間に現れたララの事を思い切り抱き締める。まさか自分まで激しい抱擁をされるとは思わなかったララは、驚きにより変な声を出しながら必死の抵抗をし始めていた。
「…ハッ!?お前は死ねえええええええええええっ!!!!」
「えっ!?…グゥッ!!」
最後にクジラが空間の歪みをくぐり抜けて広間に到達するのを目撃したリーシャ達の父親は、ゆっくりとララを解放すると目をカッと開きながらクジラに殴りかかる。あまりに唐突過ぎた為、クジラは反応が出来ずに右頬を思い切り殴られていた。
「お父さん…?何してるの…?」
「リーシャ!俺はリーシャがこんな男と婚約するのは認めんぞ!何処の馬の骨かもわからない男と暮らすのはやめて、パパの元に帰っておいで!なあに、リーシャの結婚相手は、パパがリーシャに見合う素敵な人を全力で探してあげるから心配しなくて大丈夫さ!はっはっは!」
「…は?」
バキィッ!!
「ぐおぉぉぉぉぉっ!!??」
リーシャは父親の身勝手な言動に、怒りが頂点に達してしまったらしい。無表情かつ全力で、クジラにやって見せたように父親の頬を殴りつける。リーシャの馬鹿力をモロに受けた父親は、頬を押さえて泣きながら転げ回った。
「あららぁ…、お母さんが出る幕無かったね…。あなた、泣いてるけど大丈夫〜?」
「アリシヤぁ…、リーシャのパンチで頬が、頬が砕けた気がする…」
「真っ赤だけど砕けてないから大丈夫だよ。娘に殴られてヒンヒン泣いてるあなたってば、情けなくて可愛い♪」
「ぉぉぉぉぉっ…!アリシヤ、押したらダメ…ッ。アァンッ!本当に痛すぎる…!」
泣きながら転げ回る夫を見て、自業自得だとクスクスと笑いながら大丈夫かと声を掛けるアリシヤ。夫の方は、アリシヤに甘えるような声を出しながら殴られた頬を指差す。そんな情けない感じの夫に対し、アリシヤは穏やかな笑顔を浮かべながら彼の真っ赤に腫れる頬をプニッと強めに押し、苦しむ様子を楽しみ始めた。…普段のリーシャの打たれ弱さと泣き虫、弄られ体質は、父親遺伝なのかもしれない。
「クジラの事を何にも知らないのに、クジラに対して酷い事ばっかり…。私が心の底から恋している人なのに、こんな奴なんて良い方ありえない!お父さんなんて大っ嫌い!これ以上クジラの悪口言ったら絶縁してやるもん!」
「ハゥワッ…!?リ、リーシャに大嫌いって言われ…た?」
リーシャに本気で怒られたショックか、はたまた頬を殴られた痛みに耐え切れなかったのか、リーシャの父親は顔面蒼白になりながら気を失う。
「あらら、気を失っちゃった。ランド君、お父さんをお部屋に運んであげてくれるかなぁ?」
「お安い御用だよアリシヤ母さん。へへっ、リーシャを激怒させるなんて、父さんも本当に馬鹿な事をやったなぁ」
そんな意識のなくなった父親は、ランドの手によって広間から強制退出させられるのであった。
多忙により、明日から3日間、1話のみの投稿にします。




