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2章1〜5話




2章1〜5話の修正版です!


それではどうぞ!!











「そこの2人、ちょっと待て。

街に入る前に身なりの調査だ」



クジラとリーシャは、疲れで多少ぼーっとしながら街の入り口の門をくぐろうとすると、門番らしき兵士に呼び止められた。



「調査って何するんですか?」



「なに、所持物に変な薬とかがないか確認するだけだ。

お前達の荷物はその小僧のリュックだけか?」



「あー、はい。

そうです」



「よくこれだけでここまで来れたな。とりあえず中身を見せてくれ」



「どうぞ」



クジラはそういってリュックを兵士に手渡す。



「どれ...ふむ...何も入ってなくて逆に気になるな。

どこからきたんだ?」



「タナベの村です。

長旅で食料とかが全部無くなっちゃったんですよ。

そのせいで疲れるわ、お腹は減るわ最悪でしたよ」



クジラがそういうと、兵士は納得したように頷く。



「なるほど、納得した。

それでは入るといい。

ようこそ、フーの街へ」



「はい、お疲れ様です。

リーシャ、行くよ。

リーシャ?」



「...はっ!?ごめん何か言った?」



リーシャは疲れにより立ちながら眠りかけていた。



すると、



「お前さん達、妙に疲れてるな。

見た限り金もあまり無さそうだし、この先を真っ直ぐ行くといい。

値段が安く、良心的な宿があるからな」



「本当ですか?

それでは、宿はそこにしようと思います。

教えてくれてありがとうございます!」



「ははっ、いいって事よ。

それじゃあな」



兵士はそれだけ言うと、さっさと定位置である門の前へと戻った。



「リーシャ、大丈夫?」



またうとうとし始め、立ったまま夢の世界に行こうとしているリーシャを心配し、クジラが話しかける。



「...あっ!?

ごめんね、また寝てたみたい...」



「本当に大丈夫かい?

(早く宿に連れて行って寝かせてあげたいな...。

って、そういえばお金ないじゃん。

なんか簡単にお金を稼げな...、あ!魔法を使えば簡単に稼げんじゃん!)」



クジラは、リーシャを心配しながら経済面にて、ある事をひらめく。



「大丈夫、うん大丈夫。

もう寝ないようがんばるよ」



リーシャは次は絶対に寝ないと意識を高く持ち、クジラに心配はいらないと伝える。



「ところでリーシャ。

僕ら、今お金ないじゃない?

そこで一つ提案があるんだけど...」



「あー、そういえば...。

クジラ、一体どうするの?」



「具現化魔法で屋台作って、そこで何か食べ物売り出そう。

それならば、ノーコストで稼げると思うんだ」



経済的な危機を解消するひらめき。



それは、露天商だった。



まぁ、これならばどれくらい稼げるかは予想できないが、目立つ所でやれば面白半分でお金を落としてくれる人もいるはずだ。



「あっ、凄いいい案だね!

そしたら私が宣伝やるね!」



リーシャも屋台で露天商を始める事に異論はないみたいだ。



「よし、そうと決まればお金稼ぎだ。

人目の無い所に移動しよっか」



2人は簡単にお金稼ぎの方針を決定すると、即時実行する為に人通りの無い場所を探しに歩き始めた。






「ここらへんなら人いないよね?

リーシャ、疲れてるところ悪いけど、人が来ないかしっかりと監視頼むね」



「うん、わかったよ!」



2人は、薄暗く明らかに人が好んでこないような路地裏を発見し、ここで準備を始めることに。



「うーん...。

作るとしたら、簡単に運べて、なおかつ丈夫な屋台だよなぁ」



クジラは細部まで細かくイメージを膨らめ、車輪の付いたリアカー式の屋台を具現化させた。



「よし、これでいいね。

肝心の売り物なんだけど。

リーシャ、なにかいいアドバイスないかい?」



考えなしの突発的な行動のため、商品は何も考えていない。



なので、ダメ元でリーシャへと質問してみる。



「そうだねぇ...、お米とかどうかな?

すごい美味しかったから、きっと売れると思うんだよね...」



はっきり言って返事にはあまり期待をしていなかったのだが、意外にまともな意見が返ってきて、彼は軽く驚いていた。



「うーん、お米かぁ...。

お米をどう販売するかにもよるんだよなぁ」



「お米を歩いてても簡単に食べれるように、丸くして売るのはどうかな?」



リーシャは至ってシンプルな、おにぎりを提案してくる。



「そっか、それだね。

リーシャ、お店の経営者とかに向いてるじゃない?

お米を売るなら、おにぎりにすればいいんだよね。

そうだそうだ、見落としてたよ」



クジラはやはり疲れているようだ。



簡単な事も容易に見落としていた。



「へぇ、お米を丸くして持ち運びしやすくすると、おにぎりって料理になるんだ」



リーシャは、


それにしてもなんでおにぎりって名前になるの?


と言って不思議そうな顔をしていたが、クジラも由来はよくわからなかったので適当に誤魔化していた。



「それじゃあ、おにぎりの中に具を入れて売ろうと思うから、僕が今から出すおにぎりを、一個ずつ食べていって評価をしてくれないかい?」



「お安い御用だよ!

どんどん作って!」



リーシャは食べてくれと言われた途端、元気になった気がする。



疲れていても、胃の動きは活発なようだ。



「それじゃあまずは紅しゃけかな」



クジラが念じると、中に紅しゃけの入ったおにぎりとして代表格な品が具現化する。



「はい、食べてみてリーシャ」



「いただきまーす!

はぐっ、もぐもぐ...」



リーシャは、クジラからおにぎりを手渡されると、美味しそうにもぐもぐ食べる。



「...ごくんっ、これは...」



「どう?」



「このしゃけっていうの?

これがいい具合なしょっぱさで、お米のほんのりとした甘さを的確に引き立ててすごく美味しい!!」



「そ、そう?

それならしゃけは決定にしよっか」



リーシャは、饒舌な早口でおにぎりを評価する。



クジラはそれに圧巻されながらも、紅しゃけのおにぎりの販売を決定した。



「これは絶対に売れるよ!

私が保証してあげる!」



「リーシャがそこまで言うなら売れるのかもね。

でも、最低あと2つは種類用意するから、引き続き試食を頼んでもいい?」



「任せて!何個でも食べるからいくらでも作ってね!」



「ありがと、頼りにしてるよ」



人通りの少ない路地にて、2人きりのおにぎり試食会が始まった。






それから10分ほど...、



「リーシャ、試食ありがとう。

この4種類のおにぎりを売り物にしようと思うよ」



リーシャがなかなかのペースでおにぎりを食べ、的確な評価をしてくれるおかげで意外と早く試食会は終わったみたいだ。



ちなみに、最終的に商品化が決まったのは、紅しゃけ、のりの佃煮、シーチキンマヨ、明太子の4つだ。



「それじゃあ、作ってる途中、人が来ないか見張ってるね?」



リーシャは具現化作業中は邪魔になると思い、人が通らないか警備する事にし、その場を離れる。



「そうしてくれると助かるよ。

よし!いっちょ頑張りますかね!」




ポンッ、ポンッ、ポンッ、ポンッ...



クジラはリズム良くおにぎりを具現化していく。



「(そうだ、情報能力で相場がどのくらいか、確認してみよう。

それで、1個でも多く売れるように、少し安めな値段設定にしようかなぁ...)」




《情報能力メニュー》

《道具鑑定》

《結果》

おにぎり【紅しゃけ】(相場200モール)

・鮭が具のおにぎり




「(多分、この世界のお金って、価値が『円』と同じくらいなんだよね。

そう考えると、元の世界と比べて少し高いんだな)」



クジラは売り出し価格を考えながら、他3種類の鑑定もしていった。



結果、どれも紅しゃけと値段が変わらず200モールだったらしい。



「とりあえず全品100モール均一、そして仕込みは1種類につき50個で計200個でいいかな?

まだ昼過ぎだから、100個売れれば作戦成功ってところだなぁ」



クジラは料金と数量を決定し、意識を具現化魔法へと向けて制作に力を入れた。



5分もすると、屋台には200個のおにぎりが50個ずつ、4カゴに分けて入れられて置かれた。



「リーシャ、見張りありがとね。

もう終わったから大丈夫だよ」



クジラは屋台を引きながらリーシャの元に向かい話しかけた。



「うわぁ、それにしてもすごい量...。

それならさ、この路地裏を出たすぐにあった広場でさっそく売り始めようよ?」



「あれ、そんなところあったっけ?

まぁいいや。

それじゃあそこに向かおう」



疲れで来た道にあった光景すらおぼろげなクジラだったが、キンキンに冷えたスポーツドリンクを口に流し込み、なんとか屋台を引きながらリーシャの言う広場へと向かった。



リーシャが言うには、先ほど2人が通った時よりも人が増えているようだ。



それと、広場の人々は、クジラが引っ張る屋台に目線がいっており、注目されていた。



「こういう露店ってこの街は少ないのかな?」



クジラはあまりの好奇の目線が気になり、それを紛らわすためにリーシャへ話しかける。



「そもそも露店って、お祭りとか特別な日以外は見ないんじゃないかなぁ?」



「へぇー、そうなんだ。

まぁ、それならライバルはいないと考えていいのかな?」



「まぁ、その考えであってるね」



「そっか。

それじゃあリーシャ、この注目を利用して呼び込みを頼めるかい?」



「任せて!すぅ〜...


広場にお集まりの皆さん!!


旅商人の私達は本日、世に出回っていない美味な料理を持ち込みました!!


昼食前の方!小腹が空いた方!


是非!クジラ屋へお越しくださいね!


全品100モール均一!品も限りがあるので先着になります!


クジラ屋!クジラ屋です!


是非お食べください!!」



「いい宣伝だったけど、なんか旅商人になっちゃったよ僕達」



クジラは苦笑いでリーシャの宣伝に対して呟いていた。



「よぉ、兄ちゃん達おもしれぇ事やってんじゃねぇか。

とりあえず1つ頼む」



リーシャの宣伝につられたのか、40台くらいの気の良さそうなおっちゃんが興味本位で1つ買ってくれる。



「ありがとうございます!

お味の方は、紅しゃけ、のりの佃煮、シーチキンマヨ、明太子がございますがどれにしますか?」



「聞いたことねぇ味だな。

それじゃあこの紅しゃけで」



おっちゃんが100と刻まれている銀色の硬貨を屋台に置いた。



これが、100モール硬貨なのだろう。



「はい!ありがとうございます!」



クジラはそれを受け取り、その代わりにおにぎりを渡す。



「どれどれ...これはうめぇ!!

おい兄ちゃん!全種類1つずつ頼む!!」



おっちゃんはクジラからおにぎりを受け取ると、すぐにかじる。



すると、大声でそのように叫び、追加注文してくれた。



「ありがとうございます!

400モールです!」



クジラも負けじと声を張り上げて返答をする。




ザワザワ


おい、あのおっちゃんによると凄いうまいらしいぞ、

おれらもかってみるか

よし、いこう



おっちゃんのオーバーリアクションがなかなかの宣伝効果を生んだようで、周りの人も興味を持ちはじめ、10人ほどがぞろぞろと屋台に向かって歩いてきた。



「順番に並んでくださーい!!

まだたくさんあるので慌てなくて大丈夫でーす!!」



リーシャもそのおかげか、接客に熱が入り始めた。






「はい!ありがとうございます!」


「はい!紅しゃけ2つですね!」


「はい!全部1つずつですね!」




..........。






「はい!明太子ですね!

ありがとうございます!

後ろのお客様すいません!

明太子は終了です!

残りはのりの佃煮とシーチキンマヨになります!!」



「うわわわわっ、並んでくださぁい!大丈夫です!慌てないで!」






開店して、30分が経過する。



屋台は予想外にも大好評のようで、現在、長蛇の行列が出来ていた。



紅しゃけと明太子が特に人気があり、もう売り切れてしまったようである。



売り切れの報告を聞いた客が、我先にと押し寄せる事で、リーシャは涙目で忙しそうにしている。



その様子がウケたのか、色々なおっさんに声をかけられて可愛がられており、気がつけば看板娘になっていた。



「はい!のりの佃煮を4つですね!ありがとうございます!」


「次のお客様どうぞ!はい、のりの佃煮とシーチキンマヨを1つずつですね!」



クジラもクジラで大繁盛しているせいでとても忙しそうだ。



声もずっと張り上げているので、相当キツそうである。



たった1時間弱しか経っていないのに口コミでの噂は恐ろしい。



ふと気がつけば、だんだん行列が長くなっている気がしてくる。



「はい!シーチキンマヨを4つですか?

すいません。もう3つしか無いようで...。

そしたら、シーチキンマヨ3つと、のりの佃煮を1つでよろしいですか?

はい!ありがとうございます!」


「後ろのお客様ー!

シーチキンマヨ完売です!

すいません!

あとはのりの佃煮のみになります!」



「し、しっかりと順番に並んでくださぁい!

ほんとお願いしますから!!」



リーシャが半ば投げやりに接客している。



周囲のおっさんには大ウケだ。



お嬢ちゃん可愛いよー!頑張ってー!



などと声援があがっていた。



「はい、ありがとうございます!

これにて全商品完売になります!

後ろのお客様大変申し訳ありません!

また明日、今日よりも商品の量を多めにしてここで販売しますので、また明日お越しください!」



のりの佃煮もシーチキンマヨに続き、すぐに完売した。




ザワザワ


おわりだってよ、


あしたまたくるらしいから、はやめにたいきしようぜ


だな、そうしよう




並んでいた人達は残念そうに、明日へ期待して帰って行く。



「リーシャ、お疲れ様〜」



「う、うん...。

お疲れクジラ...」



長旅からの商売により、リーシャの疲労も最大らしく、今にも崩れ落ちそうなほどフラフラだ。



「疲れたし、今すぐ兵士さんが言ってた宿行こうか」



「うん、そだね...」



2人は重い足取りで一歩、また一歩と兵士に言われた宿を目指す。



「(大丈夫かなリーシャ...)」



その時クジラは、体力の限界寸前のリーシャが心配でたまらなかった。



「うぅ...辛い」



リーシャはたまに小声で弱音を吐きながら歩く。



「つらそうだね...。

屋台の上に乗っかって休憩してもいいよ?」



クジラはゴロゴロと引いていた屋台に乗って休むように促す。



「いいや、クジラも疲れてるんだから、そんな迷惑はかけれないよ。

...それならさ、フラついて転びそうで怖いから、手をつないでくれない?」



リーシャは迷惑はかけれないと断った後、クジラに手をつないで欲しいとねだった。



「うん、手を繋げば、ふらついても大丈夫だもんね」



クジラは屋台を引いていた片方の手をリーシャの方へ差し出した。



「ありがとっ!」



リーシャはニッコリと笑い、手を繋いだ。



「それじゃあ、改めて行こうか」



「うんっ!」



2人はほどけないようにしっかりと手を繋ぎ、極限な体力を振り絞って宿まで歩き続けるのだった。





ーーーーーーーーーーーーーー







「クジラ、多分ここが兵士さんが言ってた宿屋だと思うよ」



「ここか...。

ふぅ、疲れたから早く休ませてもらおう」



クジラとリーシャは、街の入り口にいた兵士が言ってたであろう宿屋へと辿り着いた。



「とりあえず売り上げの2万モールがあるから、余裕で泊まれるよね?」



「うん、5000モール以内で泊まれるんじゃないかな?

...確証はないけど」



「とりあえず入って聞いてみようか。

屋台は...、まぁ邪魔にならないように道の端に置いとくか」



「そうだね、行こうクジラ」



カランコロン



「いらっしゃ〜い」



入り口を開けると鐘の鳴り物の軽い音と共に、おばちゃんの声が聞こえる。



「どうも、2名ですが幾らくらいで泊まれますか?」



「あらあら、若いのね。

2人は相部屋でいいの?」



おばちゃんはクジラとリーシャの姿をみて少し驚きながら、部屋の数を問う。


「あ、2部屋でおねがいし

「相部屋で大丈夫です!」



クジラが2部屋頼もうとすると、リーシャは慌てて相部屋にするようおばちゃんに頼む。



「え?リーシャ、相部屋でいいの?」



「もちろん!逆に相部屋でお願いします!」



「そ、そう?すいません、相部屋でお願いします」



「あらあらうふふ、相部屋ね。

そうすると、部屋1泊代で1500モール、1回の食堂でのお食事券2人分で1000モール。

合わせて2500モールです。食事券は1枚500モールで追加できますよ」



おばちゃんは、2人のやりとりを見て微笑みながら、お会計を言う。



2人が予想していた値段の半額の値段で泊まれるらしい。



確かに良心的な価格設定だ。



「あ、食事券の追加は無しで大丈夫です。

2500モールですね?

えぇっと1、2、3、...。

細かくて申し訳ないです」



クジラは、袋の中から本日の売り上げである100モール硬貨を出していき、25枚数えておばちゃんへ渡す。



「君達、もしかしてだけど広場で屋台やってた子達?」



袋の中の大量の100モール硬貨を見たからなのか、突然おばちゃんは屋台について尋ねた。



「はい?...えぇ、僕達がそうですけど...」



クジラは何でわかった?という顔をしながら肯定の答えを返す。



「やっぱり!

その明らかに不自然な硬貨の量と、噂で聞いた特徴で、もしかしてって思ったのよ!

偶然来てくれたあなた達に、ちょっと頼みたい事があるんだけどいい?

勿論宿代安くして、多少サービスも追加するよ!」



「頼みによりますけど...、どんな事ですか?

(あ、成る程、これでばれたのか。

流石に100モール硬貨を、こんな大量に持ってたら変だよな)」



「明日1日、この宿屋のすぐそこの広場で屋台出してくれないかい?」



「はい?」



「あぁ、ごめんね。

ちょっと説明が無さすぎたわ。

実は、明日の朝食、昼食分の材料がちょっとしたアクシデントで用意できてなくてね?

明日の朝食、昼食分の食事券を販売しなかったのよ」



「そ、そうなんですか」



クジラは頼みがどういう内容なのかある程度察したが、とりあえず最後まで聞くことにする。



「それで、ここからがあなた達に頼みたい事。

あなた達が了承してくれたら、泊まってる人達に、食事券の追加が欲しいか聞きに行くわ。

明日の朝から昼頃まで、ここの食事券を持ってる人に、食事提供して欲しいのよ。

そしたら夜頃に食事券を、1枚につき800モールで引き取るわ。

いい話でしょ?

それに、今日の宿代も2000モールにしてあげるわよ?」



「本当ですか!是非その頼み受けさせてください!」



あまりにもうまい話だったので、クジラは即決でOKした。



「本当!?

あなた達ならきっと受けてくれると思ったわ!

ありがとう!

一応、どんな物を出すか聞いといてもいいかしら?」



「あっ、はい。

食事券は一枚500モールとさっき言ってましたよね?

なので、僕達の出してる売り物は1個100モールなので、5個セットで出そうと思いますけど、どうですか?」



「うん、じゃあそれで決定ね!

それじゃあ明日はよろしく頼むわ!

それじゃあはいこれ、お返しと部屋の鍵。

部屋はここから右奥の部屋ね」



おばちゃんは、先ほど払ったお金のうち、500モールと部屋の鍵をクジラへ渡す。


「ありがとうございます。

それでは夕飯楽しみにしてますね。

お待たせリーシャ、部屋に行こっか」



クジラは話が終わるともう半分寝ているリーシャに声をかけ、歩き始める。



「あっ、うん。

おばちゃん!

明日の朝と昼のご飯は私達に任せてね!」



さっきまで寝ていたと思われたリーシャは意外に話を聞いており、元気良くおばちゃんへ一言声をかけ、クジラを追いかけていった。



「えぇありがとね!

よろしく頼むわ!」



おばちゃん、も元気良くそれに返事を返してくれていた。



宿だけでなく、愛想も性格も良心的なおばちゃんであった。






「1番奥って言ってたからたぶんここだね」



「ふぁあ...。

うん、そうだね」



リーシャは欠伸をしながら生返事で答える。



睡魔が強大過ぎて、会話どころでは無くなっていた。



ガチャ



「はぁ、疲れたぁ〜」



クジラは鍵を開けて、そのまま二つあるベッドのうち、奥にあるベッドに倒れこんだ。



ボフッ



「...zzz」



リーシャは、手前のベッドに倒れ込むとそのまま泥のように寝てしまう。



「やっぱり限界ギリギリまで頑張ってくれてたみたいだなぁ...。

お疲れ様、リーシャ」



クジラは、夢の世界へと旅立ったリーシャに向けて、労いの言葉をかける。



「さて、僕まで寝たら夕飯食べそこなう可能性があるから、スマホでも具現化して、時間潰すかなー...」



ポンッ!



クジラは前の世界で自分が持っていたスマートフォンと瓜二つの品を具現化し、弄り始めた。



「うん、やっぱ圏外だよなぁ...。

まぁ、適当に電子書籍読みつつ、作業ゲーのアプリで時間潰せばいいか...」



当然、電波が無いのでインターネットは出来ない。



なので、スマートフォンの中に内蔵していたアプリや、電子書籍を読み時間を潰す事にするのだった。







それから3時間ばかしが経過した。



「お、もう6時か」



彼も眠たいだろうけど、責任感の強いものだ。



夕食を逃さない為に眠気を押し殺して今までずっと起きていた。



「それじゃあ、リーシャ起こして夕飯食べいくかな...。

リーシャー、夕食の時間だよー!」



クジラは1人呟いた後、明らかに声で呼んでも起きなさそうなリーシャ、を揺すり起こす。



「んんぅ...、ふぁぁぁあああ」



30秒ほど揺すり続けると、ようやく起き上がってくれる。



「疲れは取れた?」



「んんぅ〜...、なんか身体があちこち筋肉痛になってるけど多少は元気になったかな?」



「それは良かったよ。

それじゃあ夕食に行こっか?」



「うん...(よく考えたら、いま私クジラに寝顔見られてた!?)」



リーシャは、背中を向けて歩き出したクジラを見て、恥ずかしそうしていた。



「ん?どうしたのリーシャ?

もしかして筋肉痛が酷い?」



「あ、いやっ、大丈夫だよ!

ほら、行こう!ね?」



「そ、そう?

ならいいけど...」






ーーーーーーーーーーーーーーー







2人はかなり腹が減っていたようで、15分もしないうちに出された料理を平らげてしまった。



男性のクジラはともかく、リーシャがなかなかの大食らいで、宿屋のおばちゃんは驚いていた。



食べ終えると、2人はすぐに自分達の宿泊部屋へと戻り、談笑をしていた。



「はぁー、なかなか美味しかったね」



「うん!

でも、私はクジラの料理の方が好きかな」



「そう?

まぁ、僕がしっかりと作っている訳じゃないんだけどね」



クジラはあはは、と笑ってスマホを取り出す。



「クジラ、それは?」



「あっ、ごめんね。

いきなり取り出しちゃって。

これは携帯電話っていう機械なんだ。

(おっと、前の世界の癖だな。

恐るべき携帯依存症...)」



「へぇ、どんな事が出来るの?」



「んー、そうだねぇ...。

ふぁぁぁ。

なんか妙に眠くなってきちゃったよ。

説明は明日でいいかな?」



電波が無い為、大部分の機能を封じられているのでいい説明が思いつかず、大きなあくびをした。



その時、とある機能のちょうどいい説明をおもいつき、実演するために今日はもう寝ることを提案する。



「あっ、ごめん。

クジラも疲れてるもんね。

すごい眠そうだし、すぐ寝たいよね」



リーシャはクジラの疲労に気づき、多少申し訳なさそうに謝った。



「とりあえず今日はもう寝ようね。

とりあえず明日の朝になればこの携帯電話の便利機能がわかるよ

(屋台も出さなきゃいけないから、5時でいいよな...)」



「?、わかったよ」



リーシャはいまいち分かっていないようだ。



「それじゃっ、おやすみリーシャ」



しかし、クジラはあえて何も説明せずに眠りに就く。



そうした方が面白いと思ったからだ。



「うん、おやすみクジラ」



クジラに続き、リーシャも横になり目を瞑る。



先ほど3時間ほど寝たはずだが、まだまだ全然寝たりないようだ。




午後8時、2人はかなり早めに寝てしまった。









ピピピピピピピピピピピ



それから待ちに待った時刻5時。



スマートフォンにセットしたある機能、アラーム機能の時刻になった事により、機械音が部屋に鳴り響いた。



「何っ!?」



ガバァッ!



リーシャは、勢い良くベッドを飛び出し身構えた。



「んん〜...。おはよう、リーシャ」



それとは正反対に、クジラはのんびりと身体を起こし、挨拶する。



ピピピピピピピピピピピ



いまだアラーム音が鳴り響いている。



「そんなのんびり挨拶してる場合じゃないよ!!」



リーシャは本気でパニックになっている。



「あー、ごめんねリーシャ。

これだよ」



ピピピピピピッ



クジラがスマートフォンを弄り音を止めた。



「ふぇっ?携帯電話...?」



リーシャは気の抜けた声でクジラへ質問する。



「昨日言ったでしょ?

朝にこれの説明をするって」


「そういえば言ってたね...。

もう!本気でびっくりしたんだよ!?」



リーシャは昨日のクジラの発言を思い出し、怒り出す。



「あははは、ごめんね。

まさかこんな驚くとは思わなくてね」



クジラは笑いながらリーシャへ対して軽く謝罪する。



「もうっ、次は昨日みたいな意地悪な言い方しないでしっかりと話してね?

次は本気で怒るからね!」



「はいはい、肝に命じます」



「むぅ...、まぁいいよ。

さっそくおにぎり作り始めるんでしょ?

何か手伝える事はある?」



「そうだね、そしたらカゴに丁寧におにぎりを入れていってくれるかい?

種類はしっかりと揃えるように頼むよ」



クジラは前日におにぎりを入れる為に使っていたカゴをリーシャへ渡した。



屋台を宿の前に置いた時にカゴだけは持ってきていたようである。



「うん、わかったよクジラ」



「それじゃ、始めるよ」



ポンッ!ポンッ!ポンッ!......。



具現化作業を始めると、20分が経った。



「ふぅ。

とりあえず、今日は昨日の行列と口コミ的に考えて、1種類200個の800個作ったよ!」



「お疲れ様!

これが売れたらすごいお金になるね!」



「それじゃリーシャ、これを屋台に持ってくからまた手伝いよろしくね。」



「うん!任せてね!」



そして2人は、宿屋の前の道路に置いていた屋台におにぎりを乗せ、宿屋のすぐ近く、100mほど先の広場へ移動した。



運んでいる途中に、偶然通りかかった人が4、5人いて、開店前にも関わらず、何個か売れていた。



たった1日で充分な人気を獲得した証拠だろう。



「よし、これで全部だね。

とりあえずリーシャ、お腹空いてるだろうし、何個か食べなよ」


「ほんと!?それじゃあ、全種類1個ずつ頂くね!」


「とりあえずそこのベンチに座って食べてなよ。

まだ人も来ないしね。

はい、どうぞ」



クジラは、ズボンのポケットからスマホを取り出して時間を確認、時間がまだある事がわかると、リーシャへ座って食べるよう指示しておにぎりを渡す。



「さて、今日も頑張りますかね!」



クジラもリーシャの隣へ座り、おにぎりを一つ頬張りながら気合を入れて、今日も1日を頑張って生きていこうと意気込むのだった。



















うへぇ...、過去に書いたものを書き直すのって相当辛いんですね。


身に染みてわかりました。



まさかこの修正版作るのに6時間もかかるなんて...。



1日25時間あればいいのに。







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