再開と現実
「とりあえず、引っ越し先でもみにいくか」
エルと別れた誠也は心残りがありそうな場所、我が家になるはずだった引越し先の家に向かっていた。
引っ越し先になっていた家はさほど遠くなく、歩いて20分程度でついたが日は沈みかけ、あたりは薄暗くなり始めていた。
「ここだっけな、あっ鍵…」
目的の家の玄関につき、鍵が入ったカバンが事故現場であることに気づく。
「あ、そういえば向かいの家はあの子の」
前に一度、少しだが一緒の時間を過ごした少女のことを思い出す。
が、すぐに自分が今置かれている状況を思い出し、少女の家に背を向けた。
とりあえず、鍵がかかっているか確かめようとドアノブに触れようする。が、その手はドアノブに触れることなく家の中へと伸びていった。
「まぁ、なんとなく想像はついてたけどさ」
自分は死んでいる。その事実が胸につきささる。
家の中に入って始めに目に入ってきたは、運び込まれた自分の荷物。
「荷物届いてるんだ、そっか死んだのってついさっきか」
そんな事を思いながら家の奥へと入って行く。
独り暮らしにしては大きい2階建の一軒屋、1人でやっていけるかという不安や1人になれるという開放感、前に来た時は様々な感情が渦巻いていた。
家の1階から2階、浴室から空き部屋になるだろうと思っていた部屋、すべてをみてまわった。
気がつけば外はもう日が沈み、夜になっている。
「これからどうなるんだろう…」
何もないリビングで仰向けになり、天井を見つめながらこれから先の事を考えようとしたが、全く想像がつかない。
「俺、いつ消えるんだろう」
そんな事を考えているとだんだん眠気がやって来て、静かに目を閉じだ。
このまま、消えてしまいそうな気もする。
(それも悪くないかもな)
今日一日の出来事で疲れない人の心などはないだろう、誠也は深い眠りに落ちていった。
目覚めは、ごく普通におとずれた。
「んー、朝…いやもう昼か」
目が覚めて、昨日のことが実際に起こったことだと改めて実感する。
だが昨日より悲しみはなかった、自分は死んでいる、しかしまだ消えてはいない。
そしてなにより、独りではない。
「次、行ってみるかぁ」
なぜか心はすっきりとしていた。
外は昨日と変わらず晴天
家の外に出て、玄関の手前で引っ越してくるばずだった家へ振り返る。もう2度と訪れることはないだろう、そんなことを思っていた時。
「せいやくん!」
聞き覚えのある少女の声
声のした方へ視線を向けると、そこには向かいの家の少女が立っていた。
名前は
「えっと…」
誠也が名を出そうとしていると
「やっぱり、せいやくんだよね!…よかった…ほんとによかった…」
少女はその場でポロポロと涙をこぼし始めた。
「え、ちょっと なんで泣いて」
慌てて少女の元へ駆け寄る。
「だって…今日…学校で先生が…せいやくんは死んだって、言って…でもちゃんとここにいる、ほんとによかった…」
死んだ、その言葉で慌てていた心が一気に冷静さを取り戻し、駆け寄ろうとしていた足が止まる。
「ごめん…紀川さん 俺、死んでるんだ」
口に出してから自分が突拍子もないことを言っていることに気付く。
「なにいってるの…だって、せいやくんはここに」
「確かに俺はここにいる、だけどそっちにはいないんだよ」
「どういう…」
わけがわからないという顔をしている、無理もないことだ。言っている本人ほとんどわかっていなかった。
ただなんとか今、自分が置かれている状況を伝えようとしている。
誠也はそっと自身の手を愛華の手に伸ばす。
「えっ」
初めは突然手を繋ぎに来たことに驚いた愛華だったが、その驚きはすぐに別のものに変わった。
伸ばした手はただ空をきる。
「まぁ、こういうことなんだよね」
目の前の少女にできる限りの作り笑いを向けることしかできなかった。




