死神と少年
誠也は今、先ほど出会った小さな死神と2人で駅前の商店街を歩いていた。
事故のせいかそれほど人はいない。
「えっと…どこへ向かってるんだ?」
事故現場であの世への迎えに来たみたいなことをいわれ、覚悟を決めた誠也だが、死神はなぜかその場から去ってしまったので、あとを追っていると知らぬ間に商店街に来ていた。
「べつに」
「俺を還るべき場所に還すんじゃなかったのか?」
「そうする、でも今はまだ出来ない」
「どういうことだよそれ」
言っている意味がわからなかった
「おまえは今、肉体から精神が離れた状態」
「幽霊ってことだろ?」
「そう。でも普通人間が死ぬとその精神はすぐに還るべき場所に還る、人間の言葉をでいうならあの世」
「え、んじゃなんで俺は今こんな事に?」
「普通じゃないこともある。この世に未練や憎しみ、そういったものを強く持っているとおまえのように精神がこの世に残る」
と、言われても誠也には思い当たる程のことがなかった。
「なるほど、で その精神を還すのが死神のお仕事と…でも、なんで今は出来ないんだ?」
「未練や恨みを残したままだと還せない」
「なんで?」
「……そゆ決まり」
死神は一瞬戸惑った様子をみせた
「そゆもんなのか、じゃぁ その未練やらを失くすのもやってきたのか?」
「必要なら」
「大変だな死神ってのも…ところで君の名前は?」
「ない」
「ない って、それじゃ呼ばれる時とか困るだろ」
「呼ばれることがないから困らない」
その言葉から、この小さな死神が長い時を独りで過ごしてきたとことがうかがえた。
「俺が呼ぶとき困るじゃん」
「知らない」
「んー、じゃあ……エル!これから君のことはエルって呼ぶからな」
エル、その呼び名は誠也が幼いころによく母親に読んでもらった絵本にでてくる少女の名前だった。
「なぜ僕に関わろうとする」
エルと名付けられた死神は振り向き、誠也の顔を睨みつけた。
急な剣幕に気圧されつつ
「い、いやだって、1人より2人のほうがいいじゃん?…それにエルは俺の未練やらそういうの失くすの手伝ってくれるんだろ?」
「やっぱりおまえ変だ」
再び前を向き歩き出すエル
「あ、そのおまえってやつ、おれにはちゃんと誠也って名前があるんだからな」
「せいや…わかった」
なにやら一瞬考えた様子だったが、名前で呼ぶことに同意してくれたようだ。
「で、俺は今からどうすればいいんだ?」
未練があるという自覚がないので、何をどうすればいいか全くわからなかった。
「行きたいとこにいけばいい」
「って言われてもなぁ、この街あんまし知らないしなー、遊べるとことかわからないな」
「はぁ…そゆ意味じゃなくて、心残りとかある場所」
この状況でその返しはないだろう、という呆れ顔でエルは誠也を睨んだ、がその顔は少し笑ってるようにも見えた。
「あ、あぁ そゆことなら何箇所かあるかも」
自分の勘違いに少し顔を赤らめる
「そこへ行けばいい」
「んじゃ、さっそく」
と、目的地に向かおうと歩きだしたが、エルが違う方向へ向かっているのに気づきすぐに足を止める。
「エルはついてこないのか?」
「僕は用がある」
「用って?」
「さっきの事故で死んだ人間の何人かの精神が、そこらで彷徨ってるから還しにいく」
そういって先へと進んでいった。
「それじゃ、また後でなー!」
そう声をかけ
(僕ってことは男の子だよな、エルってちょっとかわいらしかったな)
そんな事を考えながら自分の目的地へと向かう。
「エル、、」
そう呟いた小さな死神は少し笑っていた。




