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メール  作者: ミナセ。
2/10

1通目

~メール 1通目~


 翌日、いくら携帯に電話しても出ない彼女に苛立ちながら、テレビをみていた。

 休日。

 この1週間になにがあったのか。自分で思い返してみた。私はその間、東京を離れていた。

会社の支店がある、大阪に行っていたのだ。携帯にたまにメールしていた。

 道頓堀のグリコを見たといって、写メを送った。


「今度一緒に行きたいな(^^)」


なんて優子から返事があったのを憶えている。確かに仕事が忙しくてメールをたまに電話はたまにしか出来なかった。不満は確かにあったと思う。忙し過ぎてすれ違っていたとも思う。いや、それは出張前からだったかもしれない。けれど、こういう結末になる前に、話して欲しかった。そう、私がもの思いにふけているとインターフォンが鳴った。


「警察です。ちょっとよろしいですか?」


 何が起こったか解る前に、事態は動いていた。そう、憶えているのはかすかに聴こえるテレビのニュースが流れていた。

「今日未明、桜井優子さんが死体で発見されました。警察では、事件、事故で…」

 そう、彼女、優子の死亡のニュースだった。



 事情聴取は短かった。夜中、何していたか?最後にあったのは何時か?ただ、途中からすべての声が音が遠くに感じた。ただ、唯一理解できたのは、彼女の、優子の死因は部屋にある照明器具からぶらさがっている、ひもが首にからまっての窒息死であったということだった。。


 事故にしてはどうも奇妙で、自殺であれば、かなり希なケースであると言われた。争った形跡もなく、他殺なら顔見知りの犯行の可能性があるとのことだった。そう、彼女のマンションはオートロックで、鍵はきちんとかかっていた。

 一度、優子はストーカー被害にあった事があるために、かなり戸締まりには気をつかっているからだ。

そこで、顔見知りの犯行として疑われたのが私であった。だが、私は昨日のショックのあまり、知人、友人に電話していたし、うち一人とはあってお酒を飲んでいた。ちょうど、死亡推定時刻の時である。


 疑いはすぐに晴れたが心のもやもやは逆に晴れなかった。自殺なのか?そこまで、悩ましていたのか?

一体何を悩んでいたんだ。私はつらくて呆然としていたら、携帯にメールが来た。死んだはずの彼女からだ。メールの内容はこうだ。



「私はあなたと一つになるの。

だから苦しまないで。これは、はじまりよ。

私が見てきたものと同じ景色に触れて。まずは私の部屋よ」


 なにかよく解らなかった。ただ、彼女が死んだのはウソだと思った。あまりにも、現実離れした事だったから、そう思う事しか出来なかった。そう、昨日も今日も私にはリアルなことのように思えなかった。


 だが、現実はそうではなかった。彼女のマンションには黒と黄色のテープが張られていて、警察官がまだいた。

 そう、日常とはちがう非日常がそこにはあった。


 警察官に私は通して欲しいと交渉した。

 彼女からメールがあった事を話すと、はじめは哀れむような目で見てきたが、そのうち真剣に聞いてくれ、中にいれてくれた。


 何回か入った事があるが、殺風景な部屋である。

 必用なもの以外は何もない、妙に無機質な部屋である。

所々に私が無機質に堪えられなくなって、持ってきたものがある。

 その一つが照明器具からぶらさがっているヒモだ。

 先にネコのぬいぐるみがついているものだ。


****************************


「こんなの必用ないのに」

 このぬいぐるみのネコをつけたとき、優子がこう言っていた。

そう言いながら顔はちょっとうれしそうな顔をしていた。

そのはにかんだ笑顔は、そう言っていたのがまるで、昨日のようにも思える。


****************************


一体ここに何があるのだ。

私は別れた理由が、自殺なのか、他殺なのかの何かがあるのかと思っていた。

自殺でないで欲しい。

 せめて、事故であって欲しい。

 いや、夢であって欲しい。

 そう祈っていた。


 なにも解らない。

 私は彼女がここにきたらといった理由すらわからない。

 特に変わった事などないからだ。

 解らず部屋を出た。

 ただ何か違和感があった。

 そう、何かいつもと違うのだ。


 部屋を出ると事情聴取の時にいた刑事がいた。


「死んだ桜井優子さんからメールが入ったとききましたが、本当ですか?」


 おもむろにその刑事は話しかけてきた。


「ええ、今でも何か解りません。だが、確かに彼女のパソコンからメールが送られてきました。この携帯に」


 私はそう言い、携帯を見せた。


「時刻は少し前ですね。桜井さんは死んでいるのに不思議に思いませんか。彼女の部屋にあるパソコンを調べましょう。それと、プロバイダーにも連絡を」


 そう、私はその刑事に指摘されるまで、思わなかった。


 彼女はもう、死んでいる。

 認めたくないといっても、事実だ。


 だが、その死んだはずの彼女からメールがきている。

 そうして、彼女の部屋のパソコンを調べはじめた。

 だが、電源を入れてすぐにパスワードを入れないと動かない。

 パスワードが解らない限りこのパソコンの中は調べられない。

 その時、刑事の携帯に連絡が入った。


 彼女がプロバイダー契約していた会社からの連絡だが、毎日1通指定時刻にメールを送信するようプログラムされている。

 その内容は見る事ができるのはまたパスワードを入力しないといけないのである。

 最終的にプログラムが完成したのは昨日の夜中。

 つまり、私に別れると伝えてから、彼女が死ぬまでの間だ。


 もしかしたら、このメールの中に、別れる理由が、自殺だったら、その理由が、殺人だったら相手が、

解るのでは・・・

 私は少しだけ望みを持った。


 そして、この日から、死んだ、彼女からのメールが毎日くるようになった。



 その夜、昨日一緒に酒を飲んだ友達がマンションの前にきていた。


「よっ!」


 こいつは、就職活動の時に知り合ったやつだ。

 今はメーカーで営業をしている。


 毎日、しんどいといいながらも、成績はいいらしい。

 普段はバカみたいな事いっているのに、何かあった時は一番に駆けつけてきてくれる。

 いうならば、親友だ。

 名は加賀谷 良。

 いつもは良とよんでいる。


 そういえば、彼女を紹介してくれたのも、良だったな。

 ちょっと、思い出した。


 もともと関西出身の私には東京には友達が少なかった。

 その中で良は数少ない友達だった。

 東京配属が決まって、知り合いがいないなどで落ち込んでいたら、飲みに誘ってくれた。

 その時何名か女の子がいたが、その中に彼女、優子がいた。

 そして、良の気配りもあって、つき合うことになった。

 良にメールの事、優子の事を聞いた。

 ひょっとしたら、私に話しにくい事を良に話しているかもしれないと思ったからだ。


 だが、良は首を横に振るだけだった。


「悪いな、力になれなくて。でも、桜井の仲いい女友達なら何かしっているかもな。ちょっとあたっておくよ」


 良はそういって、


「今日は帰るわ」


といって去っていった。


 一人になりたくないという思いもあったが、何をどう話していいかもわからなかった。

 正直一人になりたかったのだと思う。


 部屋に入ると妙に現実から隔離された気になった。

 まるで、今日の出来事が全て夢なのでは・・・


 ただ、なんとなくかけた優子の携帯はつながらなかったが・・・


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