第5話 光と闇
「ん……う〜ん……朝か」
ベットから起きあがるユリアン。
今日は司祭ホルンが、娘ディリンと別れる宴の日だった。
「娘かぁ、突然いなくなる時の父親って、どんな気持ちなんだろか…仕方ないか」
一人呟くユリアン。
その時ドアをノックする音が聞こえた。
「ディリンです。少しお話が聞きたいのですが、宜しいでしょうか?」
「ああ、構わない。入ってくれ」
ユリアンがそう答える。
ドアを開けて入ってくるディリン、とアルティー。
「なんだお前もか」
ユリアンがそう言うトアルティーは不機嫌そうな顔をした。
「で、話と言うのは?」
「勿論、聖獣の事です。私が聖獣の後継者と言うのは、本当なのでしょうか?」
ディリンは悲しそうな表情で尋ねた。
「嫌なのか?それとも怖いのか?」
「怖くは在りません!しかし、私は後にここの神官になり、司祭も継ぐでしょう。それなのに……」
「行きたくないなら、来なくてもいい。でも俺達は2人でも聖獣を見つけ無くてはならない。いや、俺1人でも……そして紅蓮を倒す。それができるのは聖獣の力を持つ者だけ。なんかさ、使命みたいなのを感じちゃうんだよ」
ユリアンがそう言うと後で話しを聞いていただけの、アルティーも話し出した。
「あんたさぁ〜本当に!……それだけ?理由。自分のためとかじゃないの?永久追放されたって聞いたし、そのためじゃないの?」
アルティーはユリアンに近づきながら言った。
ユリアンは暫く俯いた。
「かもな、たしかに俺は単純に強くなりたいだけかもしれない。でもいいじゃん。何かしら人は理由をつけて生きている。だから俺の理由はそれ……だからお前らもさ、理由をもって行動すれば?」
ユリアンは顔を上げ、堂々と言った。
それを見たアルティーは少し笑った。
「そうだね。私も聖獣探し着いて行くよ!まだ魔法使えないから…足でまといになるかもしれないけど、魔法使えるようになって、お母さん元に戻す。だから……ヨロシク!ユリアン」
アルティーは右手を差し出した。
それを見たユリアンは、しっかりと握手をした。
「後で、ヴァンって人にも挨拶しなくちゃ」
それを見ていたディリンは少し赤面した。
(ユリアンさんとアルティーさん……なんて大人なんだろう。私なんかわがままみたいに言っちゃって,馬鹿みたい)
「ディリン様!敵襲です!」
バタバタと駆け込んで来た兵士が言った。
ユリアンはそれを聞くと血相を変えて叫んだ。
「剣を!俺に剣を貸してくれ!」
近くに居た兵士が剣を差し出した。
それを受け取るとユリアンは、凄い勢いで走っていった。
「私の弓を持ってきて」
ディリンは言った。
そしてそのまま走っていった。
「アルティー様。これで身を守るだけはしてもらえませんか?」
兵士が持っていたのは銅製の杖であった。
アルティーは頷きながら受け取った。
(これで自分の事は守らなくちゃ)
「グオオオオォォォォォォォ!!!」
大地が裂けんばかりの雄叫びをあげるレブルセヴァ―。
その雄叫びに引き寄せられ、森の中から100頭ほどのモンスターが現れた。
レブルセヴァーの強襲が始まったのだ。
「間違いない。あの雄叫びは紅蓮の獣だ」
ヴァンは断言した。
ヴァンは岩の上に立っていた。
「ヴァンさん!?こんな所で何を!?武器を持っていないじゃないですか!」
ヴァンを見つけたディリンは叫んだ。
「ディリンだっけ?武器なら持ってるよ。俺の槍は親友だ。駆け付けてくれる……そうだろ?装填十字槍」
ヴァンが空を見上げたその時だった。
狼の獣がヴァンに飛びかかって来た。
「危ない!!」
ディリンは自分の弓矢で射貫こうとするが、ヴァンに当りそうで射貫けない。
空から光、一本の雨。
それは獣を貫いた。
「ありがとう。助かったよ装填十字槍」
ヴァンはそう言って、地面に獣と一緒に刺さっている装填十字槍を抜いた。
―――さぁ闘いの時だ。
後から駆けつけてきたユリアンとアルティー。
そしてサンラインの兵士達。
100頭はいる獣達。サンラインの兵士は50人ほど。
それでも必死の思いで闘った。
何匹も何匹も倒した。でも終わらない戦い。
しかし最後の刺客が出てきたのであった。
空を通っていく巨大な鷲獣。
それに捕まっているのはレブルセヴァーだった。
「レブルセヴァ−だ」
ユリアンは震えた。そしてヴァンも。
武者震いなのか恐怖なのか、真相を確かめるため走った。
サンラインの兵士は獣と闘った。
ユリアン、ディリン、アルティー、ヴァンは、レブルセヴァ−の目的地に走った。
そこは司祭の間。
扉を開け、息を切らしながら入ってきた聖獣の後継者達。
「会いたかったぜ、聖獣の後継者ども!!今すぐぶっ殺してやる!」
レブルセヴァ−はあの奥義『クロコダイル.キャノン』の構えに入った。
「気をつけろ!あの闇の力だ」
ユリアンは言った。
それを聞いたホルンはユリアン達の前に走っていた。
「ホルンさん危ないです。ここは俺達に任せて」
「案ずるな、奴の闇の力は私の光で消せるかもしれん!!」
そう話しているうちにレブルセヴァ−腕は、前のように膨らんでいた。
そしてギロリと睨みつけると放った。
闇の光が目の前を包んだ。
その次に光が目の前を包んだ。
「何ィ!!光の力だと!?」
「獣ごときに負けるわけにはイカンのだ」
光と闇が正面衝突した瞬間だった。