第1話 聖獣と眼
紅蓮の騎士を倒すまで、ロア.クリスタルから永久追放を命ぜられたユリアン。
(―――紅蓮の騎士。強かった、とても俺のかなう敵じゃない。でも、強くなる方法はあるはずだ。絶対。でもどうやって?)
酒場で一人蹲るユリアン。
「てめぇっ!インチキだろが!!やってられるか!」
後で叫び散す腕っ節の強そうな一人の男。
「ふぅ〜。言いがかりはよしてくれないか?それとも、金が払えないってのか?」
椅子に腰掛ける一人の美少年と言える男は呆れたように言った。
その男は威厳を保つような雰囲気を持ち、深く帽子をかぶりコートを着ていた。
「ああそうだよ!こんなものインチキ意外にあるか!?」
罵声を散す男は手に持っていたトランプを投げ捨てた。
それを見たユリアンは、ため息をつきながらそのテーブルへと向かった。
「喧嘩か?ロアでは御法度だぜ?賭け事もな」
そう言うユリアンを罵声を散していた男が睨む。
「なんだぁ?……緑髪に紅の眼。まさか…ユリアンか?」
ユリアンを見たその男は声を多少、声を嗄らしながら言った。
「だったら?」
剣に手をかけながらユリアンは言った。
「じょ、冗談じゃねぇ!逃げろぉ!」
男はそのまま走り去っていった。
しかし腰掛けていた男は残っていた。
「ふぅ〜。ロアの最強剣士ユリアン様に見つかるとは運が無いねぇ〜」
帽子からユリアンの覗いた眼は綺麗な蒼色をしていた。
「でも、あんた今は関係無いだろ?ロアとは。聞いたぜ?理由は知らんが永久追放だってな」
その男はユリアンの事を知っていた。
「その通りだ。でもな、レイチェルという騎士団長が居るんだ。気を付けな」
「なんだ。レイチェルに追い出されたって思ってたけど違うみたいだな。そう言ったって事は」
何故かこの男の蒼の眼には全てを見透かされている気分だった。
ユリアンはその場に居ずらくなり、酒場を出ようとして扉に手をかけた瞬間。
「あんた。本当に強いの?」
とっさに言われたその言葉にユリアンは振りかえった。
「なんだと?どういうつもりだお前」
怒りの表情を浮かべユリアンは言った。
するとその男は立ちあがり、そばにあった身の丈ほどある槍を出した。
その槍は剣先の部分が十字になっていて宝石がついていた。
「こういう事さ……」
おもむろにその男はそう言った。
「表に出ろ……」
限界を越えかけたユリアンはそう言って外に出た。
外に出たユリアンは剣を抜き構えた。
男も槍を振りかざした。
「俺の名はユリアン。ロアの誇りにかけて闘おう」
そう言ったユリアンに男は一度眼を閉じ、パッチリと開き言った。
「俺の名はヴァン。親の形見―装填十字槍にかけて闘おう」
周りには沢山の人山ができていた。
その中に宝石の装飾品に身を固める老婆が居た。
二人が睨み合い間合いを取るだけに半刻が過ぎようとしていた。
その時、強風がユリアンの追い風となって吹いた瞬間。ヴァンが踏み込んだ。
鋭く獲物をしとめる高速の突きだった。辛うじてかわすもユリアンの頬には赤い傷跡がついた。
ユリアンは剣の柄の部分と槍を擦り合わせながらヴァンの懐へと入っていく。
鳴り響く金属音。
さっきまで全く動かず間合いを取っていた二人は一転、激しい攻防戦となった。
二人とも鋭い攻撃を出せば堅い守りを見せる。
目にも止まらぬ連続技の闘いであった。
「やめぇ〜〜〜い!!!!!」
二人が止まったのはその大声があった瞬間だった。
それを言ったのは先ほどの老婆であった。
「おい、なんだよ婆さん。近づくと危ないぜ?」
ヴァンの静止を無視し、老婆は二人の手を掴み強引に連れ去った。
老婆の力は予想以上のものであり、二人は抵抗することなく老婆の家へと押し込まれた。
「おいあんたら若いの!自分の事が解ってやってるのかい!?」
怒った様子で叫ぶ老婆。
「解ってるさ。こいつが俺に喧嘩を売ってきたからやったのさ」
ぶっきらぼうに答えるユリアン。
ユリアンの頬に老婆のビンタが飛んできた。
「何にも解っちゃいないよ!ちょっと待ってな!」
そう言って老婆は置くの部屋から古びた本を持ち出してきた。
「これはね、古い書物でね。あんたらの事が書いてあるんだよ!」
そう言われてヴァンとユリアンは本に目を通そうとするが、不思議な文字だらけで何がなんだか解らない。
「なんだよこれ?意味わかんねぇ!?」
そう言うヴァンに老婆は言った。
「これには聖獣ついて書かれているのさ!」
「聖獣?」
ヴァンとユリアンは不本意ながらも声が合わさった。
「そう。聖獣と言うのは聖なる力を持った獣でな、それと契約を結ぶと絶大な力をを与えられる。その代わりに、聖獣がつくと永遠に離れないけどね」
(力……)
ユリアンは力と言う言葉に強く引かれた。
「おい婆さん。それはどうやって手に入れるんだ?」
ユリアンは興味心身で尋ねた。
「この世の何処かに居ると言われるが、詳しくは解らん」
そう言う老婆。
「うさんくせーな」
ヴァンがそう言うが、最もであった。
「しかし、お前らを見て確信したよ。聖獣が居るってな」
「なんで?」
老婆の言葉にどうも信じられないヴァン。
「書物によると聖獣は火、水、雷、風の聖獣があるらしい。そしてそれぞれの聖獣には選ばれし者が居る。火には紅の眼を持つ者。水には蒼の眼を持つ者。雷には黄金の眼を持つ者。風には碧の眼を持つ者。それでな、お前らの眼の色よ。それで確信した」
「婆さん。俺はその力が欲しい!どうしたら良い!?」
ユリアンは血相を変えて老婆に尋ねた。
「ふん!私はあんたらを見たくなかったんだよ!聖獣の後継者が現れるって事は世界の危機って事なんだよ!まぁ出たには仕方ない!あんたらが世界を守るんだよ!」
「ふ〜ん。それでかぁ、まぁいいぜその聖獣ってのを見てー気がするし、その話し……乗った!」
ヴァンが老婆を指差し言った。
「聖獣の事でわかんない事があったら私のとこに来るんだよ。ユリアンとヴァンとか言ったか?いやとは言わせないよ!さっさと行かないか!」
老婆はそう言って叩いて二人を追い出した。
「…テメーと行くのは嫌な事だが、強くなるためだ。協力してもらうぜ?」
ユリアンはそう言った。
「俺に付いて来れるか?」
ヴァンも負け地と言った。