operation reinforcement
「operation reinforcement」
「これは興味深い!」
マルエッティーこと私は喜びに叫んだ。
私は治療室を記録するカメラ映像とデータをモニターで確認した。
すると昨日の患者に変化があったのだ。
補給したばかりの医療用ジェルがほぼなくなっている。
恐らくはナノマシンの身体再生と強化改造を平行して行っているのだろう。
その証拠に昨日治療されていた額に切れ目が入りまさに第三の目よろしく赤い宝石のようなものが露出していた。
しかもそれは瞳孔やカメラアイのように映ったものに反応しているのだ。
他には腫れていた顔等の皮膚が通常に戻り火傷の跡は完璧に消えてる。
今になって分かったことだがカプセルに覗く容姿は将来が楽しみな美少女だった。
「でも男の子だったよね?・・・カワイイのがついてたし・・・残念だ!」
まあそんなことはどうでもいい。
とりあえずアシストロイドにジェルの補充をさせているが今だ起きる気配が無い。
「さあ!
早くどんな化け物になるのか私に見せてくれ!!」
「何が化け物なんですか?」
『ビックウ!!!』
突然後ろから掛けられた声に飛び上がってしまう。
見てみると声の主は近所の女の子のミレイユだった。
「や、やややあ、ミス・ミレイユどうしたのかな?」
私としたことが動揺でどもってしまった。
「マルさん何かあった?
ちょっと・・・いやすっごく不信なんだけど~」
固まった私を金色の前髪越しに上目使いで覗き込んでくる。
「イ、イヤ、ソンナコトハナイヨ・・・」
「なんで片言なのかな?」
疑うように穢れの無い碧眼が半目で見つめてくる。
ああ、そんなキレイな目で私を見ないでおくれ。
「そんなことより~! ねえ、あの子は?
大丈夫だったの?」
汚れた自分に自己嫌悪で酔っていたのにぶち壊してくれる。
これだから美学のないおこちゃまは・・・。
「あ、ああ、彼なら峠は越えたよ
恐らくは大丈夫だ」
「ホント!? 心配だったんだ~あんな子供が大怪我してたから・・・」
本当に心から心配していたのだろうミレイユは涙まじりの少々大きなため息をついた。
「あ、あの医療カプセルだよね、どれどれ~」
患者の方を覗こうとするミレイユの前に『シュバッ!!』っと立ちふさがる。
「ど・・・どうしたのマルさん?」
少し怪しかったか、私を見てキョトンと目を見開いてる。
「あ~いやあ・・・ね。
まだ、峠を越えたと言っても安静にしとかなければいけないのは確かなんだよ。
それにまだ皮膚が完全再生できてないから覗くのは感心しないな」
なんとか理由を言いつくろう。
その言葉に彼女はバツが悪そうに考え込んでしまう
「(額に光物がついてるとこなんか見せられるかって!)ボソボソ・・・」
「ん・・・何か言った?」
「イイヤナンニモ~!」
ミレイユは細い眉を寄せて何か考えた後・・・
「そうだね、私が考えなしだったね、ごめんなさい!」
彼女はこの歳の・・・言っても15歳にしては賢明なほうだ素直に己の非は認めて謝ってくる。
そんな彼女に更なる罪悪感を募らせて無理に笑顔を作る。
「いやいや、いいんだよ分かってくれれば」
「じゃあ、また明日来るからさその子のことよろしくね
助けた手前ほっとけないし・・・まだ小さい子だしね!」
手を上げて部屋を出るミレイユに「分かった」と手を振る。
『パタンッ』
扉の閉まる音を聞いてヘナヘナと力が抜けた。
「なんっとかごまかせた~!」
一見マッドドクターなようだが案外小心者なようだ。
ソウマ内面世界
・・・orz
「マスター何を打ちひしがれてますか?」
素朴な疑問を投げかける様にベルが小首を傾げている。
「なんかさ~なんか越えちゃ~いけない一線を越えちゃった気分?」
「理解不能、明確な説明をお願いします」
無表情で返答してくるベルが今はニクイ!
落ち着け~落ち着け~俺~ドウドウ・・・。
「説明は拒否する・・・」
忘れるんだあんな感覚はーーーよし復活!
「さて、とりあえずベルさんや」
「はい、マスター」
「今後一切ああいうことは却下だ!」
「了解、マスター」
『ハア~』と息を吐き出し本題に入る。
「一応知っておきたいんだがな・・・
俺の身体はどれくらい変わっちまう?」
「了解、説明します
現在マスターの身体の再構成と平行に行っている強化
細胞と骨格組織、神経組織の間にナノマシンを配置しての耐久度と情報伝達速度強化
破損のあった脳の前頭葉から小脳、脳髄にバイパスを繋げ間に体積は寸分変わらないISBを常駐
各種情報のサポートと私ことベルのBOSー00(ベルセルクオペレーティングシステムー00)がインストールされています
また、モニターとして網膜投影モニターは網膜に各種情報を視覚的に表示
イメージ透写システムは圧縮情報として思考で閲覧できます
この、二つの出力装置はBOSで表示のコンフィグから詳細設定できます
音声出力は耳内で鼓膜を任意に震わせることでの擬似音声
入力は各出力方式に連動した触覚キー
口頭による音声認識
イメージによる思考認識です
あと、前頭部に知覚センサーが現在隆起してますが・・・
外見的変更点はその一箇所のみです」
「へ?・・・え~と~つまりアンギャ~な化け物とかバイオハザードっぽいグログロ変異とかないの?」
ちょっと拍子抜けした。
「是呈、マスターがお望みならそういう方面に仕様変更可能ですが?」
「丁重に遠慮させていただきます・・・」
「了解、追記ですがこの惑星での通常生活ができる程度へと免疫力を付加させていただきました」
「あ、それはありがたい・・・ある意味ベルがいなかったら死んでた・・・ありがとう」
「私は初期プログラムに従っただけです」
「それでもさ、これから長い付き合いになるだろうしな・・・けじめってやつだ」
じいちゃん曰く、親しき仲にも礼儀ありってな。
「了解、これからもマスターのお役に立てるよう進化します」
「進化って・・まあ、ほどほどに・・・」
しかし外見変わらないのか・・・そう考えたら結構いろいろできそうだな。
「額のセンサーとかはバンダナとかで隠せるかな?」
「肯定、しかし隠蔽をするのでしたらBFで瞼のような開閉が可能です
イメージが頭に入ってきた爬虫類の透明な瞼っぽいものか・・・って・・・網膜透写って生態レーザー?!
目からビームとかできそうだな・・・あ、できるんですか止めときます。
眩しそうだしデ●子やX男はちょっと・・・生態兵器な装甲の生態ビーム兵器は好きだけど・・・。
聞いてみたら網膜透写モニター反転させたらこの星でならS男のヒー●ビジョンぐらい可能らしいです。
なんでこの星でなら・・・なのかはエネルギーの供給は、一つは強化した細胞電流。
一番使用されるのは大気中にあるナノマシンから永続的に電気エネルギーを取り込むとのこと。
だからこの星のようにナノマシンが散布されてないとすぐガス欠らしい・・・。
「あれ? ということは~ベルの力って俺の元の世界じゃ弱体化するんじゃ?」
「是呈、エネルギー残量により出力低下などありえます」
弱点あったな・・・あまり万能でもないらしい。
地域限定すーぱースキル?
「それで純粋に筋力とかはどうなってる?」
「現在通常通り今までのマスターと変わりありません」
「ええ!? 散々強化とか言っといてなんで?」
「単純に筋力アップも可能ですが短期間で上がるとマスターの微妙な動作等に問題が生じます
よってアシストとして必要強化までの伸び幅の上昇と上限の引き上げで解決します」
つまりはアニメでサイボーグ強化された者がいきなりその強化された力で被害を出してしまう。
それを防ぐ為に卵とか使って身妙な力加減を習得する方法が見られる。
ただし、筋力を上げる訓練を通常より効果を早く上げることでそれを省くわけか・・・納得。
「じゃあ筋力アップは実際に体が起きてからだな?」
「否定、シュミレーションを行なうことで現在の状況でも変更可能
脳から筋肉細胞への電気信号の調整なので同時に神経伝達速度の加速と併用を推奨します」
「シュミレーションか・・・なら今のままでの最高値って試せる?」
「是呈、試してみますか?」
「おう!」
「では、3秒後に2、1、どうぞ」
「おう!と!?『ビュン!』うわあ~~~!!!」
『ズザザザザザザ~~~~~~~・・・・』
一歩走り出したとたん大きく幅跳びのようにジャンプしてしまい足を前に背中から着地。
10数mを一人引き回しの刑で服がボロボロ・・・になってない。
「流石シュミレーション・・・てか内面世界?」
「是呈、そのためのシステムです。
どうします、通常出力に切り替えますか?」
「怪我をしないならもうちょっと楽しみたいかな~」
って、言ってみたが半分意地だ!
さっきは走ろうとして跳んだから今度は垂直に跳んでみよう
「せ~の・・・ッセイッ!!」
『ビュオッ!!』と風きり音が鳴りドンドン上昇していく
「!?」
視界に数字がタイマーのように現れ変動していく。
「網膜透写モニターを起動しました」
下に流れる景色にあって不自然に視界の中央でベルが固定されている
そのうちスピードダウンしていきカウントが止まる。
「高度メーターか・・・22.98・・・メートル!?
軽く跳んでこれか?!」
落下するにつれ加速していく。
「バランスを取らないと地上に激突します」
「おおう! フ~リ~フォ~~~~ル!!」
『ズダ~~~ン!!!』
着地とともに四つん這いで手足が地面にめり込んだ。
「これは心臓にわりいわ・・・でも面白れえ」
「マスターいくつかの提案があります」
何度かジャンプを繰り返して遊んでいるとベルから話しかけてきた。
「おう、どうした?」
すると目の中のベルが手を振ると、いろんなグラフや数字をまとめた表がPCのウインドウよろしく浮かびだす。
「今までのマスターの運動能力やバランス感覚等、身体を操作する能力・・・つまり制御能力がかなり発達しているのが確定しています」
「ああ、そうかもな~昔からじいちゃんと稽古とか修行とかやってたからな」
「了解、マスターの知識から推測すると反復練習等は効果的なようです」
「うん、『技は模倣から始まり己が物とし研鑽す』ってよく言われてたし」
「技は・・・意味はスキルをコピーしたのちさらにオリジナルにバージョンアップするでいいですか?」
「まあ~そんな感じで憶えとけ」
「了解、では、それを踏まえて提案します内容はーーー」
話の内容は要約したらこうだった。
まずISBを通してその行おうとした動作を自動で制御して最適な動きを行う。
その後でその動きを俺自身が真似て動くそれを憶えるまで反復するという方法。
なんでもジャンプでの動作で運動適応能力が高かったらしいのは先に言われたとおりで普通は急に高スペックの筋力で跳べばバランスを崩したりしてまともに着地できないそうだ。
なんにしても地味に筋トレとかするよりは一気に慣らしが終わることと面倒が無くなるのは良い事だ。
そして、後で解った事なんだがこの内面世界とは脳内でのバーチャルスペースで調整などのチュートリアルを始めてから感覚、神経伝達を加速で数倍に上げているそうだ。
つまりは外の世界とは時間の過ぎ方が数倍早い。
それに伴い俺の調整がコツを掴んだ後、加速度的に早くなったので予定より早く終わった。
『ヒュッボッ! バッボッ!! ビュウ~ッバッバッババババッ~ダンッ!』
軽くシャドウをするとどこぞのカンフーアクション張りに異様に大きい空気を裂く音が鳴る。
「~~~フッ~~~ッとこんなもんかな?」
「肯定、現在の強化において完全に制御されています
また、強化パーツの全外骨格装甲のシンクロもオールグリーン」
「OK~それで全力で動けるわけだな・・・」
「肯定、あらゆるマスターの動きにリンクし外圧、外気の制限を内部に及ぼしません」
確認し安堵する。
ここだけの話だが調整中にこんなことがあった。
「瞬動ってのをやってみよう!」
少年マンガによくある技だが強化された脚力ならできるかも?
そう思ってやってみたところ、力技っぽいが似たようなことができた。
似たような・・・であって完璧ではないがとりあえず置いとく。
問題はその瞬動中に攻撃を行った時起こった。
「覇ッ!!『ボワッ!』ノワアアッチチチチッ?!!!」
拳が・・・腕が燃えた!?
新技発見!! ではなく空気摩擦で高熱化、腕周りの衣服が燃えました。
よくできたシュミレーションだ・・・痛覚が10分の1でよかったよ。
今の強化された皮膚なら火傷は負わないが体感温度を調節すれば熱くは無くなるとのことだが、これからどんな状況で使わなければならないかわからない。
そこで外部のナノマシン等をハッキングして外部装甲を作ることになった。
理論や仕様は割愛。
ある意味ナノマシン・・・なんでもありかよ?!
と、思ったが使えるものは使うということで感覚的に変身みたいなのでデザインにそこそこ凝ってみた。
仮面ラ○ダーや特撮系はすっごく大好物なんで心から大歓喜!!
でも、マンマコピーは原作のイメージを自分で壊したくないからオリジナル!
「自分・・・不器用っすから・・・」
「否定、マスターは十分器用かと推定します」
「・・・ボケ殺し・・・ありがとうよ・・・」
そんなこんななベルとの調整もとい特訓も終わる。
「では、マスター覚醒シークエンスに入ります」
「りょ~かい、これからもサポート頼む」
「了解、コンゴトモヨロシク」
どこぞのデジタル悪魔みたいだな・・・
そんな感想の中・・・
俺は目覚めた。