初めての異世界
主人公異世界到着!
まだまだ活躍はできないみたい・・・
「初めての異世界」
覚悟を決めて新しい世界の大地に立つ。
そこは木々の緑がまばらな赤い岩山の切り立った景色。
ギラギラと容赦無く照りつける太陽が・・・気のせいで無ければ二つと、昼なのにでっかい月見たいのが浮かんでる。
実寸はわからんが目測50cmぐらいの月?
うん、異世界だな・・・少なくとも地球じゃありえねえ。
詰襟の学生服が暑いので脱いで頭から日よけ変りにに被る。
さっきまでの春の軟らかな気候が懐かしい。
とりあえずは体力があるうちに人里を探そう。
・・・いるよね・・・人。
『ひゅううう~~~~~~・・・』
乾いた赤い砂塵が風に舞う・・・
いたらいいな~・・・。
「ゼイ・・・ゼイ・・・」
見晴らしの良さそうな小高い丘を目指して歩いていく。
自分では体力はある方だと思っていたが30分ほど歩くだけで息がきれてきた。
「何だろう・・・体がだるい・・・まさか熱射病か?」
日陰を探すが森らしきものが遥か向こうに霞んでる。
歩いてきた逆方向かよ・・・。
先に丘を登りきることにする。
「ゼエゼエ・・・つ、ついた・・・。」
体力が限界・・・気のせいか息苦しい。
丘の先は少し急な崖だった下りれないこともないが・・・高い、目測20m弱か?
小さなドーム型の白い建造物。
視界の先に見える明らかに人工物な建物の群に安堵のため息がもれ・・・
「ハァ~・・・ッガハアッ!!」
発作的な咳とともに地面に「バシャッ!」と赤い水が・・・。
吐血した?!
え、なんで?!!
疑問の解決する間もなく意識が薄くなり・・・。
地面から足が離れ崖を転がる前に暗転した。
今日、意識無くなる事多くないかい?
少しこの世界の話をしよう。
この世界の人類が戦争や天災、疫病など幾多の困難の末繁殖し続けた世界。
地球や他の星の名前がすでに過去の遺物になり記号になった世界。
この世界で一番進化した技術は『ナノテクノロジー』である。
それにより開発された『ナノマシン』は原子を組み替えることも可能となり医療や軍事あらゆる面で活躍することになった。
開発当初は「人類が滅びるきっかけになるのでは?」と危ぶまれた技術。
確かに人類を滅ぼしかねない大戦が過去いくつか起こった。
しかし、その危機から人類を救ったのも皮肉にも『ナノテクノロジー』であった。
人口増加と星間移動がある程度安易に行える科学力を持つに至り宇宙開拓がさかんになった。
宇宙に進出する人類に課せられたのは『ナノマシン』を体内に取り入れることによる身体の強化だった。
開拓において必ずしも人間に適した星が幾つもあるわけでなくある程度の誤差は『テラフォーミング』で『ナノマシン』散布する。
『テラフォーミング』
惑星を地球に近い環境に作り変える方法としても『ナノマシン』は有効だった。
その場にある原子を組み替え同じ『ナノマシン』をコピーすることも修理することも可能な技術で大気の組成やあらゆる人体に影響のある毒素を分解して組みかえる。
そんな『ナノマシン』でも制限はある。
幾つかあるがこの場合、基本行動プログラムと時間である。
過去、この世界で起こった幾多の大戦が切っ掛けで『ナノマシン』という物は残ったがそれを動かすプログラムの書き換え方法がロストしたこと。
また、『ナノマシン』を散布しても自己増殖にそれ相応の時間がかかるのと惑星の状況によりテラフォーミングが完了するのに最低でも20年。
場合によっては100年以上かかってしまう。
そこで先に『ナノマシン』によってある程度悪質な環境でも生活できる身体強化をされた開拓者の子供たち(ホライズン)が活躍するようになる。
「EM型惑星078」
二つの恒星に照らされた惑星。
元は火星に近い大気成分の星であったが開拓の為テラフォーミング中の未開惑星。
ホライズンがこの星に居住を始めて約20年ほどの惑星
つまりそれは・・・
未だ大気に普通の人体には有害な物質が残留し、オゾン層代わりのナノマシン層も無い為宇宙線が肌を焼く・・・
死の星である。
しかし、この星には先の古代大戦時に使用された自律獣型機械兵器や生物兵器が稼動している。
そんな中でも人類はたくましく生きていた。
「さて、困った。」
とある施設の一室で男は呟いた。
清潔に保たれた白一色で統一された病室。
いや、いろんな医療機器らしき物が置かれているところから診察室だろうか。
なんにせよ神経質そうな男が一人目の前の患者を見て悩んでいた。
「なぜこんな者がここにいる?」
ありえない現実。
この星。
いや、この世界に住む人種は多々あれど性能の差はあれ必ずホルダー(ナノマシン保有者)なはずだ。
ナノマシンは遺伝的に親から子へ受け継がれる。
この時代・・・遥か古代とも言える過去からホルダー以外には生存してないはずなのだ。
さもなければ目の前の患者のように死んでしまうからだ。
否、目の前の患者は死んではいない・・・ただ、まだ・・・というだけだ。
このままのーーーそう、ありえない『ノンホルダー』では。
いずれ命を落とす。
簡易無菌室で横たわる。
おそらくは子供であろうノンホルダーはなんら強化されてない体で有毒物質の漂う外で活動していたのだろう。
発見された時は崖から転落していたとのこと
そのまま崖下まで急な斜面を転がって全身打撲。
少なくとも全身のいたるところの骨が軽い骨折を13箇所。
紫外線、赤外線等の照射で露出していた顔や手は火傷で腫れ上がり。
肺については約半分が重度の炎症を起こし末期である。
前頭部の骨折はさらに深刻だろう。
この子は身長から推測するに10歳に満たないだろう。
可哀そうだが普通の治療では助からない。
細面の顔にニヤリと狂気めいた笑みを浮かべる。
そうなのだ!
普通の治療では助からないのだ!!
だからこそ!
「私のコレクションを試せる!」
「軍の研究施設に所属していたころ持ち出した古代大戦時の試作ナノマシンを!!」
「患者の命を救うために! 仕方なく!! 白紙のモルモット・・・いや奇跡のノンホルダーに!!! 実験できるのだ!!!!」
大仰に腕を振りまるで舞台で叫ぶように。
男のセリフは哄笑へと変わる。
「さあ!!」
男は冷蔵庫から厳重に保管された金属製のケースを取り出し開いた。
5本の圧縮式インジェクターを取り出し患者の後頭部、首、脊椎、両手の甲に手際よく処置をしていく。
ハアハア息を荒く目を血走らせる姿は病的である・・・
「さあ・・・どういう結果になるか、私に見せてくれ~!!」
楽しそうに笑う姿はどう取り繕ってもまともに治療してるようには見えない。
そんな治療室に転がる空のケース
ケースにはこの世界の古代文字で『狂戦士計画』と書いてあった。