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ぱわーぷれい~英雄志願S  作者: azuma
一つ目の世界
18/18

「古代兵器」

 「古代兵器」



 『ガヤガヤ・・・ザワザワ・・・』


 久しぶりに騒めく夕食時の食堂。


 飛び交う注文の嵐・・・


 「豚カツ定食2つ!」「このショウガ焼き?・・・ってのどんなの?」「塩焼きくれ~!!」「このテリヤキってのイケルな!」「スマイル一つ」


 捌くソウマ


 「ほい、トン定2、生姜焼きはちっとピリッとくるハーブ使った味付けでオススメの一つだ・・・全部オススメだけど!、塩1~、おう、ありがとさん、ニコリ」


 溜まるオーダー・・・調理するソウマ


 『タンタンタン・・・タタタタタダダダダダダ!』<切る音


 『ジュ~ジャ~ジュワ~ボワ!ゴウン!!』<焼く音?


 『カチャカチャ・・・チャチャチャ・・・・!!』<盛り付け?


 『ザシュッ!シュン!ヒュン!ピシ!バシン!!』<以下略? 


 できた料理を配膳するソウマ


 「ここはエール1、ビール2、ワイン2とブラッドソーセージ6だな?」


 「おう、まさかハーブボアの血で作った燻製がここまでうまいとは思わなかったぜ~まハマったってやつだな」


 「そうだろ~マイド!追加あったらまたよんでくれ、そっちは塩定2と照り定1だな?」


 「お、キタキタ~久しぶりのお肉様~追加であっちで食ってるの単品でいけるかな?」


 「単品お~け~、あれは生姜焼きだな好みによるがうめえぞ!」


 「ほ~あれがこのショウガ焼きってやつなのか美味そうな匂いがしててな~たのむわ!」


 「マイド!生姜単品1、はい、そっち照り焼き1ね!」


 「お~テカテカ光って見えるから照りか~これも初めて見るな・・・うめえ!!」


 「だろ~ありがとよ!」


 「ソウマちゃん結婚して」


 「寝言はねていいな、・・・でサッサと喰え他の客が待ってる」


 等、皿洗いや空いたテーブルの片付けまでソウマがやっていた



 そんな店内のテーブルの客のひと組の男女


 「・・・ねえ・・・団長・・・」


 「なんだ、ミレイユ・・・」


 ジョアンとミレイユは呆然と店内を見つめ


 「ワタシの見間違いでなければソウマが何人もいるように見えるんだけど・・・」


 「・・・そうか・・・じゃあ別段俺が酔ってるわけではないのだな・・・」


 「ソウマって・・・分裂で増える生物だったんですね・・・」


 「人をアメーバやプラナリアみたいに言わんでくれ」


 気づくとソウマがテーブルのそばに立っていた


 「な!いつの間に・・・なるほど・・・3Dホログラムか?」


 「ご名答~3Dホログラム影分身・・・ってね、注文聞きとかは集音マイクでもイケルからね」


 

  ニッといたずらっぽく笑って親指を立てる立体映像のソウマ


 「んで、ご注文は?」


 一見、子供のような無邪気な笑顔から営業スマイルへと変わり微妙な色気が感じられるのはある意味ゲイが細かい


 「あ・・・ああ、そうだなーーー」


 あっけにとられていたところを突かれ慌ててメニューを手に取る


 遅れてミレイユも我に返り


 「あ、わたしも・・・っていうか~ソウマのオススメのディナーってのは?」


 少し驚かされた意趣返しにワルぶった笑みを浮かべている


 「うん、私もそれで~あとワインに合いそうなつまみも一つ」


 忙しいのに待たせるのも悪いと気を使ってのオーダーのようだが少しばかりジョアンに苦笑が浮かぶ


 「オススメか~・・・オッシ!

ミレイユ~後悔するなよ?」


 更に意地の悪い笑みを見せ慇懃に礼をして他のテーブルに流れていく


 「え?え!?なんかわたし地雷踏んだような・・・罠に片足から突っ込んだ予感?!」





 ピークも過ぎて人がまばらになった店内


 現在ソウマだけで切り盛りしてるのを知ってる常連・・・というか顔なじみしか居ないのだが・・・


 気を使って注文を控えだす頃合に・・・ 


 目の前にはぐつぐつと煮える鍋


 いろんな具がいい具合に煮えているのはわかるが


 その色合いと・・・野菜に混じった穴だらけのものや形容しがたいたんぱく質な具材に緑色の煮汁に席についていた二人は戦慄をおぼえる


 「さあ、寒くなってきた夜にお勧めの一品『鍋』だ、心ゆくまで堪能してくれ!」


 いい笑顔でソウマが進めてくる


 「ーーーねえ・・・この緑色のポトフみたいなのはいいとしてこれってーーー?」


 ミレイユは冷や汗を流しながら指をさす異形の物体


 「これ・・・は内臓か?!」


 ジョアンは一見おちついているが・・・顔色はアオカッタ


 「おお~大当たり~ちっと材料そろえるのに苦労したが『モツ鍋』だ」


 自身満々に進めてソウマは小皿によそっていく


 周りの野次馬も初めて見るゲテモノ料理の様相に各自『うへえ~・・・』と言った感で遠巻きに眺めていた


 「赤唐辛子がなかったから探してみたら青唐辛子っぽいものがあったから見た目は緑で毒々しいが辛くてあったまるぞ~」


 ソウマは自分の分もよそってからいただきますと手を合わせ口にした


 「ちょっと!」


 黙って咀嚼するソウマをミレイユは心配げに声をかけるが・・・


 「美味い! 流石リーフボアってだけに薬草漬けな内臓は臭みも少なくて柔らけえ!!」


 その一言に嘘がないと見てジョアンは恐々と一口


 「!!」


 「「「団長!?」」」」


 目を見張るジョアンに数人が思わず声を出す・・・が


 「美味い・・・信じられん・・・だが・・・」


 「「「おおお!?」」」


 「え、ほんと?!」


 と、ミレイユも一口


 「か!・・・辛~~~・・・でも・・・オイシイ・・・」


 「だろう~」


 辛さに汗を噴出させながら具をかっ込みだす二人に得意げに親指を立てるソウマだった




 

 「ーーーで、森で自立兵器を見たそうだな?」


 「「「!?」」」 


 一息つき、お茶で場をにごしている中、重々しく団長が発した言葉に周りが息をのみ緊張する


 「ああ俺が見たのはこんなんだったなーベル出してくれ」


 『了解3Dホログラムで100分の1出力で出します』


 ソウマの額から光が溢れ出し昼間に見た恐竜型の二足歩行で歩く自立兵器が小さくスケールダウンされて現れる


 「団長・・・これって・・・」


 覗きこんでいた自警団の団員一人がつぶやく


 「ああ・・・獣戦機タイプから見て古代兵器・・・しかも竜型ならほぼ間違いなく・・・」


 「「「魔獣機!!」」」


 周りの恐れにも似た声が響いた


 「魔獣機・・・何それ?」


 ソウマの緊張の無い声に


 『マスター、データベースにありましたので転送しますーOK?』


 『たのむ・・・』


 


 ベルが提示した資料を見る


 網膜投影される図面と脳内で高速変換される解説文


 分かりやすく説明すると自立兵器は今も多用される無人兵器で主に重要拠点の警護や本隊の近辺での徒用が多い


 人工知能(AI)である程度の判断ができるこの世界の技術では普通の成人程度の判断力が平均だそうな


 まあ、歩兵クラスだとのこと


 ただ近年のものは多脚型、車輪型(キャタピラ含む)が一般的でコスト的に二脚型は古い方らしい


 だからといって古い=弱いではなく戦争時に無くなったロストテクノロジー(ベルもそれらしい)なんてのもあって整備さえ整ってれば今の現行機の数倍の性能だそうな


 その中でも態々獣の形を模した兵器を運用していた時代の物は郡を抜いて優秀らしい(技術者が凝りに凝った)


 獣のような俊敏な動きを倍速で行い機械特有の疲れを知らない兵器・・・獣機


 さらにその時代には多次元の干渉が多くあったらしく次元を超えた旅人が多くの異質技術をもたらした(俺があまり驚かれないのはこれでか・・・)


 その中には精神や思考力から生まれるエネルギーを効率的に運用する技術〔魔法〕も兵器に運用され・・・ 





 『ほうほう・・・え!?』


 解読していく内にある単語に思わず驚いた


 「ここって〔魔法〕があるのか?!」


 叫んだ俺に視線が集まる中


 「この星域には無いけどほかの魔法文化が発展したところもあるよ」


 苦笑気味にミレイユが答えてくれた


 「その魔法が使える〔獣機〕・・・で〔魔獣機〕だな」


 「機械が魔法を使えるの?!」


 団長のセリフに思わずツッコミを入れてしまう


 説明を要約すると


 

 魔法の使用できる有無は人だと才能に偏るたとえば純粋な力〔魔力〕それを使うための燃料的なエネルギーの〔魔素力〕まあマジックポイント(MP)みたいなもの?


 MPを魔力に変換し操る要素〔魔導力〕この三つが必要で何かが足らなかったり多かったりすると事故ったりそもそも使えなかったりする


 だが機械ならある水準まではそれを補える技術があるため魔法行使補助デバイスとして作られてたらしい(リリカル?)


 ただその後「それぞれ三つの要素を機械に補えるなら人が使う必要があるのか?」、とのことからAIに組み込んだところ効率が人よりよかったのが始まり


 戦時中に兵器に転用されるのは必然だった


 その中の一つが〔魔獣機〕


 物理装甲は歩兵以上搭載可能


 各種バリエーションに富んだ攻撃魔法


 周りの魔素を吸収して自動回復するエネルギーは稼動時間無制限


 〔NM〕での自己修理機能


 そこに獣機の攻撃能力があるんだから・・・どこのラスボス?って感じ


 しかし・・・魔法技術か・・・俺の〔闘気法〕の欠点も補えないかな~魔法に似た理論みたいだし?


 


 「さて、みんな魔獣機があの森にいたということは流れてきたか遺跡がある可能性がある」


 団長の言葉に周りの団員達が神妙に頷く


 「流れてきてた場合は集落の反対側に誘導しできることなら殲滅しときたいが・・・ソウマの情報から見て戦力不足だ」


 「最悪数百キロは誘導するしかないですね~・・・」


 「安全策なら無人機械ラジコンみたいなのでだがな」


 自警団の数人から意見がでる


 「ただ・・・遺跡のガーディアンの場合・・・」


 「あの森は閉鎖だな・・・」


 「しかし、あの森は漸く〔TF〕がすんで繁殖も進んでいる狩場だぞ?!」


 そう、あの森は今回の獲物のボア種等、多種の種を〔NM〕で適応させ繁殖させた一種の牧場のような物なのだ


 その為一種の異常適応や新種が生まれる可能性があるため新種調査も賞金が出る


 今回のリーフボアも上限体長の更新になったしねえ


 「貴重な食料資源を減らすのも・・・どうかと・・・」


 「今は中央部も物理的接触がまったく期待できないしな」


 意見を聞き黙っていた団長がその場を制するように手を上げる


 「結果はまだ不明だ数回にわたって無人探査機を飛ばして遺跡の有無、流れ獣機か確認!」


  指示を出しまた違う者に目線を合わせ


 「流れの場合は集落からできるだけ距離を離すため自動誘導機の作成設定を先に頼む!」


 「遺跡を発見した場合・・・〔軍〕に依頼するか決をとる・・・」


 

 「〔軍〕って・・・そんな根こそぎ森を焼かれるぞ!!」


 「焼かれないかも知れん・・・期待はしないが危険物を放置はできん・・・だから決をとって集落全員で決めよう」


 「!・・・わかった」


 そう決まってこの場は終わったが何とも言えない思い空気が・・・辛かった


 「「「なんだ!?」」」


 「この鼻を通ると涙が出そうな匂いは?」


 「おらおら、今からしみったれた顔してんじゃねえ!」


 店の奥から大なべを持ったソウマがでてきて捲くし立てる


 「俺の驕りだ激辛モツ鍋・・・みんなで食え、腹いっぱい食ったら今後に備えて今は忘れて寝ろ!」


 ソウマの不器用な気遣いに皆が顔を合わせ微妙な空気が漂う


 「あ~ちょっとグロいけど気になってたんだよな~おれ」


 渡された小皿片手に1人鍋に向かう


 「そだな、なんだかんだで団長も美味そうに食ってたし」


 「あ、俺もくうぞ」


 「まて、順番に並べ!」


 先ほどの重い雰囲気を他所に次々と鍋に向かう男たちにあきれながら団長ことジョアンは嬉しそうにため息をつき・・・列に並ぶのだった  

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