巨大ななにか?
「巨大ななにか?」
「うっわ~~~・・・よくこんなの捕れたねえ・・・」
目の前にぶら下がる3m以上のイノシシ・・・もといビッグリーフボアを眺めてミレイユは驚いていた。
メットを収納し獲物をポンポンとたたく。
「いや~上手いこと罠にはまり込んでたから?楽だったよ」
『あれはマスター意外だと楽に・・・は無理なのでは?』
『じいちゃんなら素手で指先一つでダウンさせる・・・絶対』
『マスターの身内の方は一子相伝の怪しげな拳法の達人ですか?』
ベル・・・頼むからうれしそうに目をキラキラさせて期待しないで・・・怪しげなのは否定せんが北斗とか南斗とか付かないから。
そういえば昔じいちゃんが遅延系で内側から気が爆発する技を畑で使ってたっけ・・・『耕すのが早くて遅れて発動するから土を被らんで済む』って足でステップ踏みながら・・・。
『この畑が耕されるまで・・・あと3つ』ってネタフリもしてたな~その後数十発って爆音が響いて苦情がきたっけ。
「・・・マー・・・ソウマー・・・」
「・・・っとごめん、何ミレイユ?」
「いや、いきなり黄昏ちゃって、ボーっとしてたから・・・やっぱり疲れてるんじゃ?」
心配そうに見つめてくるミレイユに少し心配性かな~と思う今日この頃。
「あ~・・・ちょっと昔のこと思い出してボーっとしてたかな?」
「そう? それならいいんだけど・・・あまりそんな憂いた顔をしないようにね・・・特に食堂とかは・・・」
急に深刻な顔でミレイユは詰め寄ってきた、なんでだろう?
「?・・・なんで食堂?」
「あんた、時々なんか思い出して悩んでるでしょ~?」
あ、確かに暇なときにどうしたら元の世界に戻る条件を満たせるかとかイロイロ考えちゃってます。
「思い当たる節があるようね・・・」
言いよどむ俺にミレイユはズイッと詰め寄ってくる、近いですオネエサン!
「まあ、無理に聞こうとは思わないけど、食堂の客の中には心配してるやつらもいるからしっかりなさい」
「うん、気をつけとく・・・」
「無論その中には私も入ってるからよろしく~♪」
「・・・プ、くハハハハ」
おどけてそれでも照れてるのか顔を赤く染めて元気付けてくれるミレイユがおかしくて笑いがもれる。
「あ~~~笑うこと無いじゃない~これでも可愛い妹みたいに思ってるんだから!」
そんな風に怒った振りするミレイユに一言!
「・・・せめて弟にしてくれない?」
「その顔で言われても~」
まあ、慣れてるけどね・・・さて
「気持ちを切り替えて・・こいつ乗せるよ!」
「OK~手伝いは?」
「だいじょぶ、だいじょぶ~~~よっと!」
ぶら下がった獲物の前足を片手にワイヤーを遠隔操作で切って肩に乗せ後ろ足ももって荷台にのせた。
『ドスン・・・ギ、ギシ・・・』
車体の下のシャフトが軋む音が獲物の重量を物語る
「は~いつものことだけど古代のNM強化って規制掛かってない分凄いねえ~」
「確かにね~でも俺からしたらここの世界の人ならこれくらい2~3人で持てるでしょ?」
「2人は・・・まあ3人ならね、それが?」
何で?と不思議そうに見返すミレイユに
「俺の世界ではこのサイズなら8~10人はいないと持ち上がらないと思うからここの基準が高い事に逆に感心するけどね」
陽光を反射するシートをかけて保冷ガスをトラックの後部操作盤で噴出させる
「あ~そっかソウマの世界にはまだNTは発展してないって言ってたっけ・・・うっわ~このボア体重820kgもあるよ!」
ミレイユは話しながらトラック運転席に乗り込み嬌声じみた声が上がる。
「流石大物・・・820か・・・1t持てるかもな・・・」
『マスター、今度高重力下でのシュミレーションで最大数を試して見ますか?』
『竜玉でそんな修行あったよな・・・面白そうだから今度な♪』
なんかこのごろそんなとびきり限界パワー的なことに慣れてきたよ・・・おれ。
「じゃあ、ミレイユ~俺のジープ後ろから追従させるから先に帰ってて」
「あれ、一緒に帰んないの?」
ジープの助手席から大き目のトランクを下ろして一なで。
「これから罠を張りなおしてこいつで追いつくよ」
それを見たミレイユは少しあきれた顔をして
「またバイク? あんたも好きだねえ~まあ、あんまりスピード出してこけるなよ?
ソウマほどスピード出して未舗装の場所を走るのいないんだから」
「りょ~かい♪」
メットを装着してバックパックが無くなったところでトランク・・・BBを背負う。
重さは軽量強化プラスチックが主で約150kg今の俺なら軽いもんだ。
さて、チャッチャと終わらせて帰るかね。
「ここで終わりかな?」
『はい、マスターここが最終ポイントです』
時間は8分ちょいか・・・OK十分追いつけるな
『ピキーン!・・・』
耳鳴りのようなこれは・・・センサーか!?
「マスターC-4で巨大な金属反応! 何かしらの自立兵器と思われます」
「センサーマーカーからの情報は?」
「こちらには気付いていません、映像受信しました
イメージ移します」
それは大きな恐竜の骸骨標本のようであり・・・スクラップや鉄骨でできた動く建造物のようだった。
「・・・でけえな・・・さっき捕った大物が小粒に思える・・・」
『データでは全長18mですね』
「なんてえか・・・メカ生態Zみたいな形だな~ちょっと感動・・・」
『ですがこちらが感知される前に撤退したほうが無難ですね』
「あ、やっぱりあれは勝てねえか?」
どちらかと言えば交戦的なのにこういうベルは初めてだな
『勝てないことはありませんが、マスターの強化リミッターの今の人型を保つという項目を完全無視すれば・・・』
「うん、帰ろうかベル!」
『チッ・・・』
舌打ちが聞こえたが無視!
樹の間を跳んで移動森を抜けると同時に空中でBBをはずした。
「モードチェンジ!」
コマンドワードと音声認識でブロックの電源がオンになりいくつかの光る線が入った。
『ヒィィィィン・・・・』とモータ音と『カキン、キン!』というロック音を連続させ普通ではありえないアメーバー的な変形を混じらせゲッ○ーロボもかくやな常態が一瞬で終わる。
そこには元の世界の旧式バイク『カ○サキ K○X125』にも似た白と黒の配色のバイクが『ヒュイイイイィ~~~!』と電磁モーターの唸りを上げる。
オートバランサーが働きタイヤを下に向けたバイクにワイヤーを伸ばし飛び乗った。
後輪から見事にウィリー気味で着地、間髪いれず上体を前にフルスロットル!
飛ぶように跳ねて荒地に速度を落とさず着地してギアを上げていく。
すでに時速100kmを軽く超えたところからハンドルは暴れ馬状態だが、俺の筋力に合わせて素材強化したバイクをそのまま力でねじ伏せさらに加速していく。
前方の障害物や地形は頭部センサーで先読みして走りぬける様は大地を切り裂く白い刃物のように土煙を後方に巻き上げて行く。
『現在180kmリミッター限界です』
「やっぱり結構科学が進んでても市販だからな~仮面ラ○ダーのスーパーマシンまではいかねえか・・・でも楽しい~~~♪」
『マスターは存外スピード狂のようですね・・・』
ため息混じりにベルがヤレヤレって首を振ってるが気にしないでおく。
ここは特に制限速度も無ければ迷惑かける人もなし・・・免許取立ての(許可貰っただけ)俺がバイク乗ってハマッテモ問題は無い!
「お、ミレイユのトラック発見!」
ゆっくり走ってるトラックの小さな影が大きくなっていく。
『もしもし~ミレイユ~追いついた♪』
通信で連絡して会話する。
『流石早いね~他はどうだった?』
バイクで並走して手を振り合う。
『収穫なし! まあ、森の浅いとこだしね~あ、そうそう!』
『どうしたの、なんかあった?』
『森の中でセンサーが18m級の自立兵器を感知した』
『な!?』
俺のセリフにミレイユの笑顔が固まった。