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ぱわーぷれい~英雄志願S  作者: azuma
一つ目の世界
16/18

狩猟


 「狩猟」



 『キュピィーーーンーーー・・・』


 「マスター、Aの8の罠ー落としピット反応です」


 頭部センサーを通して信号をキャッチと共に網膜透写のベルが正確な情報をくれた。


 樹上で待機状態だった俺は立ち上がりながら「メットセット」と音声コマンドを呟く。


 それに反応して一瞬で背部のバックパックが可変、後部1次装甲が髪をまとめセットされると後の2~3次装甲が固定され各センサー類が接続コネクト

、メットの狭い視界が通常の何もつけてないように広がる。(所要時間0.03秒)


 これが戦闘時だと宇宙世紀のロボット兵器後期型みたいに全方向見えるから・・・というか視覚化される優れもの。


 通常はややこしいのでオフにしてる。


 だって・・・慣れたら後ろ向きでお話とかしそうで怖ええし・・・。


 「さて・・・ベル、正確なナビ頼む」


 右手を前方の樹の幹上部に向けながら指示すると


 「了解、先行ナビ行きます!」


 まるで本当にそこにいるようなベルの映像が宙を舞って飛んで行く。


 「羽まで動かしてるのはホント芸が細かいねえ・・・っとハッ!」


 WMワイヤーマニュピレータを射出して固定10m以上先の幹に突き刺さる。


 そのまま枝を蹴って落下振り子の原理で風景が後ろに流れていく。


 かなりの速度で振り子が上がりきる前にワイヤー先端部を切り離し宙に身を躍らせながら右手ワイヤー収納、左手のワイヤー射出、固定、落下を繰り返しドンドン速度を増していく。


 気分はター○ンか蜘蛛男?


 ちなみに切り離したWMワイヤーマニュピレータの一部はそのまま樹木に同化して見た目は刺さる前と変わらなくなる・・・が外部情報収集ユニット兼センサーマーカーになる。


 さっきベルが言ってたAの何とかがこの森林区でのマーカーを使ったマッピングでの地点を表してたりする。


 使用するエネルギーは外装等と同じ散布されたNMナノマシンからの供給だから半永久仕様とのこと。


 「お、ベル発見~そこか?」


 10m無い距離は勢いを殺さず自前でジャンプ!


 速度が出すぎてるのでワイヤー射出、幹に絡ませ1回転~2回転で受身を両足と左腕でとって無音でベルのそばで停止。


 「マスター、大きいです・・・今にもでてしまいそうです」


 「・・・誤解を生むような台詞回しはヤメイ~しかも艶かしくしやがって!って・・・確かにでかいな!?」


 樹の12mほど下の大きめの落としピットに今にも這いずり出ようとするイノシシみたいな獣が一匹。


 だが、大きさは少なく見ても全長3m・・・以上!?


 「ビッグリーフボアですねかなり大物ですが」


 イメージが流れてくる。


 『ビッグリーフボア』


 森林や草原に生息する縄張り意識が強い「ネイティブ種」(元々星にいた種)


 成獣は1~2mほどで不用意に近づくと突進してくるので危険


 草食で柔らかい葉や樹の根を食べる。


 また、好んでハーブ等の香草、胡椒や山椒の実を食べる為肉は美味。


 内臓の乾物や燻製は高値で取引されることもある。


 『3m以上ゆうにあろう・・・ベル記録は?』


 「撮ってますマスターの名前で新記録成長動物の申請・・・受理されました」


 『OK~ボーナス追加♪


 さ~てと・・・じゃあ狩るか!』


 腰部の2本のうち1本の単分子ナイフを抜き取る。


 50cmの黒い刃渡りのエモノを逆手に構え、ワイヤーを切り離し落下。


 『ゾブリ!・・・ガズン・・・』


 ボアの延髄を正確に狙い刃を一気に根元まで埋める感触と首の骨を絶つ感触が手元に伝わって・・・


 一瞬ボアが『ビクン!』と痙攣して前に沈んでいく。


 『ズン!・・・』


 倒れる前にナイフはそのままに離れて着地。


 「ベル、生体反応は?」


 念のため残心ざんしんのまま確認。


 「周りに別の固体の反応無し、目の前のモノも・・・今、完全停止しました」


 警戒を解いてエモノに合掌・・・


 「じょおぶつしてね・・・いただきます、血抜き~血抜っき~♪・・・まてよ・・・」


 「マスター、どうしましたか?」


 イキナリピタッと止まった俺にいぶかしげな視線を向けてくるベル。


 「ベル! ジープを一番近場までもってこい!!」


 「!? 了解、オートコントロール始動・・・マッパーからの情報送信・・・グリーン・・・マスター、ジープ侵入経路はここから西120mの場所までこれます! 2分40秒後到着予定!」


 それを聞いて俺は次の行動に即座に移った。


 「よし、それまでにそこに到着する!」


 獲物のボア重さを感じさせない仕草でヒョイっと肩に担いだ。


 「セヤッ!」


 掛け声一閃


 獣道も無いので生い茂った樹の間を、連続で幹を蹴り宙をさながら忍者のように跳んで、目的の場所へ向かう。


 少なくとも全体重300kg以上・・・下手をすれば500kgはある巨体を担いでできるものではないはずの行為なんだが・・・目的地に1分いや、10秒も掛からず到着した(強化の恩恵ってすげえな・・・)。


 普通の木ならそんな重量や蹴る衝撃に耐えられないモノなんだが、人の手のはいらない状況で1000年以上の樹齢を誇る木々達は、揺れこそすれ折れることは無かった。


 「それにしてもマスター・・・樹木の樹皮を削ることなく移動するのも技ですか?」


 さっき抜けてきた森の方を見てあきれたようにベルは肩をすくめてる。


 「ん? ああ『浮身』つって足での受身と体重移動の一種だマンガみたく体重を軽くするなんてできないけどな・・・今の身体能力だったら『木の葉渡り』できるかも・・・今度試そう」


 それよりも今は・・・


 「ベル今のうちに寸胴ズンドウ・・・でっかいやつ作ってくれ」


 「ズンドウ・・・ああ、簡単な構造ですね30秒掛かりますよろしいですか?」


 「おう、やってくれ・・・っとできた」


 ボアの後ろ足をワイヤーで縛って木の枝に1mほど浮かしてぶら下げる。


 「マスター、ズンドウできました」


 ベルの完成の報告と共に血抜きを始める。


 寸胴を下において延髄のナイフを抜き血をよけて下がる。


 動脈にも切れ目を入れて時間を早めるが・・・


 「ベル~NMナノマシン操作して血抜きを早めれるか?」


 「可能です、そのズンドウの中にですか?」


 「おう、じゃあ加熱しない程度で頼む風味が変わるから」


 「了解」


 ボアの周りが薄く光りだすと死んだ巨体が息をするように微妙に収縮と膨張を繰り返す。


 それに伴って寸胴に注がれる生き血が勢いを少し増した。


 「・・・これって心臓マッサージとかに使えるんじゃね?」


 そんなことを考えてると『シュイイイ~~~・・・ン』とモーター音を鳴らして無人のジープが目の前に止まった。


 「ナイスタイミング♪」


 後部座席から大き目の肉用のクーラーボックスを取り出し開けて用意完了。


 「マスター作業終了しました」


 「血抜き終わったらそれの雑菌と消毒頼む、あと加速を試す」


 ベルの「了解」の返事を聞きながらさっき鞘に収めた単分子ナイフを二本抜く。


 さっき血まみれで戻した右のナイフは汚れをNMナノマシンで分解処理し終わってるので、砥いだ後みたいにキレイなもんだ(便利だねえ~)。


 「加速アクセラレータ!」


 「了解、設定加速限定50%・・・3・2・1・開始! 限界まで30秒カウントダウン開始・28・・・」


 ベルの宣言とともに『キュイーーーン』と甲高い耳鳴りで約2倍速の加速領域に入る。


 領域といっても俺の処理速度が通常の2倍になるぐらいで別段マンガみたいに時間が遅くなる能力でなく体感みたいなもの。


 とりあえずボアを捌きにかかりますか。


 ナイフで薄く腹をスパッと斬ると腹腔が破れまだ暖かい内臓がデロッとはみ出てくる。


 ゆっくりでてくるそれらをナイフで腑分けしてはボックスに詰めていく。


 流石に巨体なだけに立派なモツだこと・・・。


 落ちていくモツを片っ端から二刀で解体、ボックスに放り込む!


 傍から見たら銃弾を切り落とす大泥棒の子孫、斬鉄剣の使い手みたいかも?


 腑分けが終わってボックスもいっぱいか・・・


 「アクセル・オフ!」


 「16・・・15・・・加速停止しました」


 通常速度に戻り少し身体が重くなる。


 まあ、さっきまで普段使わない速度で頭と身体を動かしてたわけだから仕方ないか。


 寸胴の蓋を閉めボックス二つと一緒に後部座席を倒し荷台にして積んでいく。


 本体は積めるかな・・・ワイヤーでくくりつけるか?


 「ベル、モツとお肉本体もおんなじ処理しといて~♪」


 『ピッピ・・・ザーこちら食料調達課通称『しょっかー』どうぞ♪』


 前にインストールした衛星通信での自警団チャンネルに連絡する。(所属課名はご愛嬌♪)


 『こちら自警団本部『団長』だどうぞ・・・』


 『今日は大量今夜は焼肉どうぞ』


 『そいつはご苦労どうぞ』


 『獲物がでかすぎトラックの増援求むどうぞ』


 『何!? そこまでの大物か・・・ところでな・・・』


 『なんですか?』


 『無線でなく普通に話せるんだから・・・』


 『いや~気分ってことでやったらノッテくれたんで・・・』


 『まあいいそちらに・・・ミレイユ行ってくれ!・・・ってことで20分ほどで森に着くと思う。


お前のマーカーの位置でいいんだな?』


 『OK~・・・うん、大型トラックも侵入できそうです』


 『了解、その場で待機しててくれ、食堂の晩飯楽しみにしとくぞ!』


 『いえっさ~腕を振るいます~ではあとで』


 区切りをつけて通信を切る。


 「マスター処理終わりました」


 「ご苦労さん~ベルがいればここでは困らんな」


 「いいように使われる女ですね」


 「人聞きが悪いわ!」


 やれやれと両手を上げるベルにツッコンどく。


 「仕方ありません私はヨメですし」


 「それ引っ張るな~・・・ホレタ弱みってか?」


 いつもと違う俺の変化球にベルの顔が心なしか赤くなるまさか・・・照れてる?


 「マスターには私の全てを見られてますので責任を取っていただきたいとか?」


 ベルさんが指をモジモジさせながらおっしゃられる。


 「・・・ソウイウコトモアリマシタネ・・・ってかあれは否応無くお前が脱いだんじゃ?」


 お返しに爆弾投げられた気分・・・


 「そんな! 全部私のせいですか!?


あれからいつ私に手を出してくれるかと待っているのに・・・」


 「サイズ的に無理だから」


 ナマあったかい視線で現実をお返ししとこう。


 「では、そのうちマスターと101人の子供を作って幸せに暮らす私の夢は?」


 「そんなん考えてたのか!? もっと無理ってか3桁かい!」


 101人マイサン大行進?


 「いえ、マスターに半女体化してもらって私達の子供を作ってもらえば!」


 「おっそろしいこと考えんじゃねえ! お前ならできそうで怖ええよ!!」


 「冗談は置いといて・・・センサーに検知トラックが来たみたいです」


 「お前のボケは疲れるわ・・・どこまで本気かわからん・・・」


 疲れた・・・心底疲れた・・・。


 「マスター、私は別にボケてなどいませんが?」


 なお悪いわ・・・


 「お~い~~~ソウマ~」


 ミレイユの運転する収穫用のトラックが近づいてくるのを見ながら今回の話題が切れたことに感謝しとこう・・・でも・・・。


 「これだけは言っておく・・・できても女体化なんぞするなよ!」


 「ザンネンですが止めときます」


 「できるの前提かよ!?」



 

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