ミレイユ・ルードマン
ようやくこの世界でのヒロイン?がまともにでてきた・・・
「ミレイユ・ルードマン」
朝の日差しが明かり取りの窓から差し込みベッドで眠る人物の顔を照らす。
「う~ん・・・」
眩しさに顔をそらし寝返りをうったところで枕もとの時計を手に取った。
「あ~・・・っと、今何時だ?・・・え!?」
時刻は9時を回っておりいつも起きる時間より1時間以上の寝坊だ。
目を見張り時間を確認したことでマルエッティーは完全に目が覚めた。
「何故目覚ましが鳴らない?
おい、システムはどうなってる?!」
何時もなら設定時間に自動起動する端末が、今朝に限って起動しておらずモニターは暗いままだった。
音声起動システムも反応が無かった。
「なんだ~まさかへんなウイルスでも入ってダウンしたか~?
勘弁してくれ・・・」
ぼやきながら急いで着替えるととりあえず端末の電源スイッチを押すと、起動音の後何事も無くシステムが立ち上がる。
「特に問題も無さそうだ・・・な?
深刻そうに呟くが着替え忘れた水玉ピンクのナイトキャップが喜劇に変える。
「進入された形跡もなし・・・やはり、古くなってとうとうイカレタか~?」
マルエッティーが端末前のイスに着くと端末上部のカメラアイが動きユーザー認識を行なった。
程なく端末前にホログラフで半透明なキーボードのような情報入力ボードが現われる。
慣れた手つきで操作すると設定画面で手が止まった。
「?・・・なんで設定がクリアされてるんだ?!
設定ファイルの破損でもあったか?」
次々とチェック・・・途中でアシストロイドを壁から呼び出し朝食の用意をさせる。
目覚ましを設定しなおし1Fのカメラを表示。
診療所の入り口を映し来客確認
「今日も患者数0・・・と、ここは平和だねえ~
まあ、ホライズン共同体から生活保護が無かったら私も生活できなかったがね」
無精ヒゲが目立つ顎をなでながら皮肉げに苦笑を浮かべる。
ナノマシンが当たり前にあるこの時代病気にかかることはほぼ無いといえる。
病原体ウイルスに関しては体内に侵入しだい抗体を生成。
毒素等はよほど多量且つ毒虫等に刺された等でなければ中和される。
結局医者はケガ人の治療とメンタルケアぐらいで診察等はほぼ初診で終わってしまう。
患者が居なければ稼ぎがないが医者が居なければ居ないで困るので所属の開拓団体から援助金等が支給されているのが現状。
「おっとぉ~・・・患者といえばあの子はどうなってるかな?」
治療室のカプセル内カメラに切替・・・
「な、いない?!」
慌てて部屋を飛び出し1階治療室のドアを開けた。
それは幻想的な風景画のようだった。
椅子の背もたれに身を預けて眠る幼い美少女。
朝の光が窓からさしこみ何もまとわぬ未発達な肢体を眩しく照らす。
長く伸びた黒髪は光を映し天使の輪のように小さな頭を輝かせ。
急に開けたドアで乱れた風が柔らかな前髪をゆらす。
ゆれる前髪から覗く閉じられた瞼に映える睫毛は長く可憐に
幼いとはいえ整った目鼻立ちは柔らかく微笑むように緩み。
肩から胸を隠した素肌を流れ落ちる黒髪は、全体の容姿から間逆に一種妖艶な色気を醸し出していた。
それは永遠と思われる一瞬。
「なんて・・・美しい・・・」
呆然と立ちすくむマルエッティーの時を止めていた。
しかしそれは次の瞬間脆くも崩れ去る
寝ていると思われる少女の額が裂け赤い目が無機質な動きで彼を捉えた。
「防衛圏内に侵入者あり
侵入者に警告します、5秒以内に10m以上かこの部屋より退出を提案します。
受け容れない場合は実力をもって排除します。
5・・・4・・・」
いきなりその口から鈴のように澄んだリンとした声色でカウントダウンが始まった。
「な?!・・・待ってくれ私は!!」
現実に引き戻され慌てるマルエッティーに無情にもカウントダウンは終わりを告げた。
「1・・・ベルセルクモード発動・・・侵入者を敵とみなし強制排除します」
「なんだtグエ!!」
操り人形の様に右手が上がったかと思うと光る糸が巻きつき動きを封じられる。
捕まった体が前に引き寄せられた瞬間、少女は羽のようにフワリと宙を舞う。
そのままつんのめり無様に倒れたマルエッティーに馬乗りに舞い降りた少女はその首に指を這わせた。
「ちょ、ちょっとm『バチィッ!』・・・て」
指先にバチバチと弾ける電撃をまとわせ
「スタンによる制圧完了、ターゲットを排除」
無機質な感情の無い声で確認のように宣言した後、マルエッティーの足を片手で掴みズルズルと部屋の外にひきずっていき・・・
『ポイッ』と放り出した。
「排除完了・・・スリープモードに移行・・・」
素足でペタペタと部屋に戻り元の椅子に座りなおした。
小さく『プルッ』と震えるとまたマルエッティーの元に近づき着ていた白衣を剥ぎ取る。
それを上にはおりながら椅子にもどり赤い目を静かに閉じた。
内面世界
「ん、ベル何かあったか?」
不自然に動作の止まったベルに声をかけた
「・・・はい、少々緊急システムの稼動実験をしたいのですが・・・」
「なんか問題でも?」
「自動で外敵を撃退するシステムなのですが、殺傷、非殺傷の選択を」
「もちろん非殺傷で!」
「了解、このシステムは後でも細かく設定を変更できますのでお願いします
ベルセルクモード発動許可確認・・・
では先ほどの説明の続きを・・・細胞電気を使ったBCの有効性ですが・・・」
ここはB地区の9番コミューン(自治体)
現在G地区まであり内のB地区のコミューンは15番までできている。
地区はAから順に開拓が進んでいる地区で数字の番号も低いほど創設は古くなっている。
ここはそれなりに古い地区なので開拓も進み農地は結構豊かだと思う。
私はミレイユ・ルードマン18歳
ここで生まれてここで育ったから他のところは知らない。
ホライズンの集落の朝は結構早いバギーで30分ほどの少し離れた各所有の農地での手入れから始まる。
私の場合朝の5時ごろ起きて9時ごろまで果樹園で仕事の手伝い。
その後に朝食を取り自警団員として順回路を回る。
この星は古代大戦の影響を受けた事もあり野生化した生体兵器や古代遺跡まである。
それを狙った遺産発掘屋や盗掘紛いのアウトロー等悪い人もやってくる為それを警戒しての巡回でもある。
無論ネイティブ種の獣から農地を守るのも私たちの大事な仕事。
日替わりで戦闘訓練もあるんだけど今日はそれはお休みです。
さっき果樹園の仕事が終わったのでご飯を食べる前に診療所に確認に行く途中。
別段私が医者にかかる訳でもなく、どちらかと言えばお見舞いの様なものかな?
その子は数日前私が巡回してるときに拾った子供で、見つけた時は『もうだめかな・・・』と思ったぐらいの重傷だったのよね~。
それでも息があったのでマルさんの診療所に連れて行った。
治療するだけ無駄かもしれないと言ってたんだけど昨日お邪魔したら回復に向かってるって言ってたから安心かな。
でもうちのコミューンの子供でもないし、捜し人や誘拐の情報では見つからなかった。
あの怪我では本人の話を聞けるのはまだ先だろう・・・。
でも犯罪に巻き込まれた被害者かもしれない。
だから毎日確認に行くことにしていて今日で3日目。
と・・・診療所についたのでいつもの場所にバギーを停めて中に入った。
いつもの待合室に入ってみる・・・『シーン』とした相変わらずの閑古鳥。
それもいつものここの日常風景なので勝手に奥に入っていった。
「マ~ルさ~んおはよう~♪」
近所で変わり者と名高いマルさんに呼びかけながらドアを開けると・・・いつもと違う日常と違った事態が起こっていた。
治療室のドアの前で可愛いナイトキャップをかぶった三十路男が、潰れたカエルみたいにノビテイタ。
慌てて駆け寄って脈をとる・・・
「マ、マルさん、どうしたの?!」
『ピクッピクッ・・・』
どうやら軽いショック症状のようで、まるでスタンガンを押し付けられたような感じに痙攣している。
「ハッ・・・あのコは? もしかして犯罪組織の襲撃?!!」
もかしてあのコに何かあったかも?
嫌な創造に待ったをかけとっさに『ゴツン!』「ガッ!」ドアの影に身を隠す。
何か聞こえたようだが気にせずホルスターから銃を抜き治療室のドアを一気に開ける!『ガツンッ!!!』「グゲゲベ!!」
部屋に向けて銃を構える。
「ふぁあああああ・・・・・・」
部屋の中から緊迫とかけ離れた場違いな欠伸が聞こえた。
その方を見て私は声を忘れた。
窓の方を向いた黒髪の長い子供がが白衣姿で立っていた。
こちらに気づいたのか軽く上目使いで少女はこっちを振り返った。
窓から射す日差しが背中を向ける姿は育ちきってない華奢な肢体を浮び上がらせていた。
そのこ・・・いえ、その美少女はニコリとまぶしい笑みを浮かべ澄んだ声で
「おはようございます」
そう言ってからすぐに笑顔を苦笑に変えて両手をゆっくり上げ
「抵抗しません・・・撃たないでください」
同じ澄んだ声で命乞いをされた・・・
ちょっと・・・立場的にへこみましだ。
ゆっくりと動き出す物語・・・