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「賊軍」  作者: 此花 陽
1. 令和の流砂
6/13

「贼」の烙印と歴史の消去


 本能寺が紅蓮の炎に包まれ、

 信長が露と消えた直後、

 西園寺景行の動きは迅速だった。


 山崎の戦いで光秀が敗北するや否や、

 景行は「正義の味方」として表舞台に現れ、

 全ての謀略を権兵衛ら光秀の側近に押し付けた。



「明智を唆し、信長公を暗殺せしめたのは、

 その側近・五代権兵衛である!


 奴こそが、日本を混乱に陥れた真の賊なり!」



 権兵衛は主君を売った卑怯者の烙印を押され、

 一族郎党、山中へと追われた。


 西園寺家は、自分たちの関与を示す

 あらゆる記録を焼き捨て、代わりに

「五代という家系は、代々卑劣な裏切りを働く種族である」

 という偽りの歴史を公文書に刻み込んだのだ。



「勝てば官軍、負ければ賊軍。

 

 ……いつか、この筆の暴力を、

 真実の光で焼き払う者が現れるまで、

 俺たちは生き抜くしかない」


  権兵衛は死の間際、一族の誇りと西園寺家の悪行を、

 決して腐ることのない漆塗りの板に刻み、

 後の世代へと託した__。



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