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「賊軍」  作者: 此花 陽
1. 令和の流砂
5/13

初代:権兵衛と「本能寺の黒幕」


 天正十年六月一日。


 初代・五代権兵衛は、

 明智光秀の馬廻り衆として、

 亀山城から京都へと進軍する軍列の中にいた。


 世に伝わる「信長の横暴に耐えかねた光秀の謀反」という

 美談は、後世の支配層が都合よく書き換えた

「官製のフィクション」に過ぎない。


 権兵衛は、出陣直前の光秀の陣幕に忍び寄る、

 一人の影を目撃していた。


 西園寺さいおんじ 景行かげゆき


 公家の最高位に近い家系でありながら、

 戦国大名を駒のように操る、冷徹な謀略家。


 景行は光秀に対し、信長が計画していた

「寺社勢力の解体」と「帝の権威の無効化」が

 いかに日本の秩序を壊すかを説き、囁いた。



「光秀殿。

 信長はもはや人ではない。

 南蛮の魔に魅入られた狂人だ。


 奴を消せば、朝廷は汝を真の武士の長と認めよう。


 背後は我ら西園寺が固める」



 光秀は、真面目すぎるがゆえに

 その「秩序」という言葉を信じてしまった。


 しかし、権兵衛は陣幕の裏で、

 景行が別の密使に渡した文の内容を知ってしまう。


 そこには**「光秀を鉄砲玉にして信長を消し、

 その後に光秀を『大逆人』として始末し、

 西園寺の息がかかった羽柴秀吉に天下を拾わせる」**という、

 戦慄のシナリオが記されていた__。



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