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「賊軍」  作者: 此花 陽
4. 言論の墓標と生贄の翼
13/14

蒼穹の生贄:四代目・五代 隼人(昭和・大戦編)


 父・誠の死後、

 五代家は「売国奴の家系」として

 さらに激しい差別を受けた。


 その息子、四代目・隼人はやと

 待っていたのは、

 昭和という狂気の時代だった。


 一九四四年、学徒出陣。


 隼人は、その類稀なる操縦センスから、

 最新鋭機「烈風」の

 試作機テストパイロットに選ばれる。

 

 しかし、彼が軍の内部で目にしたのは、

 美談に塗り潰された「国家の腐敗」だった。


 西園寺家の当代

 **西園寺 景元かげもと**は、

 日本の敗戦を確信しながら、

 あえて特攻という戦術を推進していた。



「一人でも多くの若者が死ぬことで、

 国民の悲しみと憎しみを極限まで高めろ。


 その間に、我々は大陸に隠した

 資産をスイスへ移す」


 隼人は、西園寺家が皇室の財宝や

 軍の極秘資金を私物化し、

 戦後も自分たちが支配階級に

 居座り続けるための「時間稼ぎ」として、

 若者たちを死地に送っている

 証拠の帳簿を見つけてしまう。



「俺たちが守っているのは国じゃない。

 西園寺の財布だ」



 隼人は、その帳簿をマイクロフィルムに

 収め、密かに父・誠の形見の

 万年筆の中に隠した。


 しかし、

 その動きは西園寺に察知されていた。  

 景元は、隼人を英雄として祭り上げつつ、

 彼を生きて帰さないための

「究極の口封じ」を命じる。


 一九四五年、南の海。


 隼人に下されたのは、

 故障を装って帰還することを許さない

「片道分の燃料」しか積まない特攻命令だった。



「五代隼人少尉、お前は美しく散れ。

 それが賊軍の血を引くお前の、唯一の忠義だ」


 無線機から聞こえる司令官の声は、

 西園寺景元その人の声だった__。


 隼人は、最期の瞬間に無線を切り、空へと叫んだ。



「俺の魂は、お前たちの支配する歴史には屈しない!

 いつか、このフィルムが、お前たちの嘘を焼き尽くす!」



 隼人の機体は、戦果を確認されることもなく、

 蒼い海へと消えていった__。



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