血塗られたインク:三代目・五代 誠(明治・大正編)
第四章:言論の墓標と生贄の翼
令和の闇の中、
無一郎は地下壕に遺された
埃まみれの軍用無線機に指を触れた。
スマホの画面には、三代目・五代誠が遺した、
明治末期から大正にかけての膨大な記事の草案が展開される。
三代目・誠は、明治維新という
「偽りの革命」の犠牲となった父・宗一郎の汚名を
雪ぐべく、ペンを武器に選んだ。
彼は帝都日報の記者として、急激な近代化の裏で肥え太る
**西園寺 景信**の足跡を追い続けた。
当時の西園寺家は、貴族院に議席を持ちながら、
新聞社や通信社を次々と買収し、
「世論」という名の巨大な操り人形を作り上げていた。
「民に考えさせるな。
ただ、我々が用意した敵を憎ませ、
我々が用意した英雄を崇めさせろ」
景信が放ったその言葉通り、
新聞は国民の目と耳を塞ぐ道具と化していた。
誠が掴んだのは、西園寺家が欧州の兵器産業と結託し、
あえて大陸での緊張を煽ることで株価を操作し、
武器を売り捌いている決定的証拠だった。
「戦争は悲劇ではない。
西園寺にとっては、最大級の収益事業なのだ」
誠はその真実を記事にしようとした。
しかし、印刷機が回る直前、
編集局に踏み込んできたのは警察ではなく、
西園寺が飼っている暴漢たちだった。
誠は「社会主義の扇動者」という濡れ衣を着せられ、
暗い地下室でペンを握る右手を粉々に砕かれた。
「五代、お前の正義など、一滴のインクで塗り潰せるのだ」
景信の冷笑と共に、誠の築き上げた真実は
「誤報」として処理され、彼は獄中で静かに息を引き取った。
享年四十二。
公式記録には「精神錯乱による自死」と刻まれた__。




