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「賊軍」  作者: 此花 陽
1. 令和の流砂
10/12

「逆賊」の烙印と五稜郭の雪


 宗一郎は、その秘密覚書

 ——英国公使の名を取った『西園寺・パークス密約』の写しを

 盗み出し、懐に隠した。



「これを勝海舟先生や、徳川慶喜公へ届けねばならぬ。

 さもなくば、この国は夜明けとともに消滅する!」



 しかし、西園寺の魔手は宗一郎を逃さなかった。


 翌朝、宗一郎は


「幕府軍の残党にして、英国公使の暗殺を目論み、

 和親を妨げようとした大逆罪人」として指名手配される。


 西園寺は、当時のニューメディアである瓦版や、

 息のかかった「志士」という名のテロリストたちを使い、


「五代宗一郎こそが、異国との戦争を煽り、

 日本を滅ぼそうとする狂人である」という

 偽情報を徹底的に流布させた。


 宗一郎は、かつての友からも「賊」と石を投げられ、

 最果ての地、箱館(函館)へと追い詰められた。



 一八六九年、雪の五稜郭。

 銃声が響く中、景冬は宗一郎の前に現れた。



「五代、お前の正義など、この一株の債券よりも価値がない。

 

 勝てば官軍、負ければ賊軍。


 歴史を綴るのは、常に我ら『官』の筆だ。

 お前は今日、国を売ろうとした逆賊として、

 その無能な人生を終えるのだ」



 景冬は、宗一郎の胸に止めの一撃を刺した。


 宗一郎は、密約の写しを抱えたまま、白銀の雪の上に倒れた。



「……今は、俺が『賊』として死ぬだろう。

 だが、俺たちの血は、いつか必ず

 この『売国のことわり』を暴き立てる……!」



 宗一郎の死体は名もなき墓へ葬られ、

 彼の功績も告発も、全て歴史から抹消された。


 公式記録にはただ一行、

「幕府残党・五代宗一郎。狂乱の末、戦死」とだけ記された__。



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