望むことができなくても
眩しい...
そう思って、手をかざして空を見上げる。
すると、ぐいっともう片方の手を引かれてよろける。
むっと私の左手を握るその子へと視線を移した。
日を浴びて、キラキラと輝くプラチナの髪。まだあどけなさの残る、髪と同じ色のまあるい瞳。
はたから見れば、間違いなく美少年といわれるであろうその子は、目が焼かれるのではないかというほどに眩しい笑顔で私の手を引いていた。
かわいい。
思わず目を細めて、またその子の後をついていく。
カラフルな屋台。日の光を反射する石畳。空腹に気づかされる美味しそうな匂い。
お祭りで賑わうこの場所を、自分より少し背の低いその子に手を引かれて歩いていく。
この子はいつもこうやって私の手を引いて、いろんな場所へと連れ出してくれる。おかげで、最近はこうやって日の光の下を歩くことが苦痛ではなくなった。
もちろん、この子がいなければひとりで来ることはないのだが...
あぁ、ずっとこのときが続けばいいのに。
私はそう願いながら雑踏へと紛れていった。
がやがやと人の賑わう道中から少し外れた路地で、その子は眉を下げて心配そうにこちらを見ていた。
「大丈夫だから。」
そう言って、少しは安心してもらえるだろうかとできるだけ自然な笑顔をつくってみる。
嘘ではない。
ひとりでいることには慣れているし、道に迷うほど幼い子どもでもない。むしろここまで心配してくれるこの子は本当にいい子なのだと感心する。
「今日はありがとう。すごく楽しかった。だから君も楽しんでおいで。」
とん、とその子の背中を押して少し離れたところで待ってくれていた子たちの方へと送り出す。
それでもなお、ちらちらとこちらを振り返る様は子犬のようでとても可愛い。
などと言ったら怒られるだろうか。
今だこちらを気にするその子に手を振って、くるりと踵を返して歩きだす。いつまでもここにいれば、ずっと気にしてしまうだろうと思ったからできるだけ速足で。
来るときはあの子と歩いた道を、ひとり足早に通り抜ける。
あれだけふたりで覗き込んでいた店も、道端で行われていた見世物なども、ひとりになってしまえば興味も消え失せて途端にモノクロな景色へと様変わりする。結局あの子がいなければ、まわりの景色を楽しむこともせずにただ早く帰りたい、ひとりになりたいという思いにしかならないのだ。
ガチャリと扉を開けて慣れ親しんだ香りに包まれる。
鍵をかけて靴を脱いで、廊下を歩きながら上着も脱ぐ。そして疲れに抗えず、真っ先にソファへと向かった。
ぼすりと音を立てて受け止めてくれたソファは、触り心地が気に入って奮発して買ったお気に入りだ。
そのまま少しだけ、と言い訳をして瞼を閉じた。
ふと目を覚ますと部屋は暗くなっており、どうやら寝すぎたらしいことに気づく。
寝たおかげか疲れもとれたようで、ぐっと伸びをして、よしっと気合を入れる。
そのままバタバタとお風呂に入ったりご飯の準備をしたりとしていて、携帯の通知に気づいたのは真夜中に近い頃だった。
どうやら相手はあの子のようで、改めて途中で別れることになった謝罪と今日の感想などが綴られていた。
じんわりと胸が温かくなるのを感じる。
この子は私を嬉しくさせることがとても上手だ。私の気持ちも少しでも伝わればと思い、文字を打ち込んでは消してを繰り返すこと数十分。
ようやく問題ないかなという内容になったそれを送信する。
こういったやり取りは多くはないけれど少なくもなく。いつもどのように返せばいいか頭を抱えている。
それが嫌というわけではない。
ただどうしても、どのように伝えればいいかがわからずに、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまうのだ。
沈みかけた気持ちを振り払うように首を緩く振り、感情なんてものは忘れてしまえと明かりを消して布団にもぐる。
ゆらり、ゆらりと揺れるそれらに蓋をして瞼を閉じれば、あっけなく眠りへと落ちていった。
年末ということで、ふと思い立ち、短い物語を書き残すことにしました。
後編も明日、投稿予定となります。
今年も残すところ、あと一日。
皆さまにとって、穏やかでよい年末となりますように。




