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スターライトパレード4巻~Only~  作者: 木風


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第3話「アウトレットとバーベキュー」

「あーーー、怜央たち、渋滞にハマったみたい」


LINEをチェックしていたセナ君が、ぽつりと呟いた。


「あとさ、お前……その格好でバーベキューするつもり?」

「え……ダメかな……?どんな服がいいのかわからなくて……」


なるべく“動きやすい”を意識したつもりだったけど、不安になる。


「んー……服も買いに行くか」

「え……?」

「ほら、次行くぞ」


そう言われて車に乗り込むと、向かった先は……

思わず目を見張るほど大きなアウトレットモールだった。


街みたいに広くて、でもどこかテーマパークのような雰囲気もある。

開放感にあふれた、明るいショッピングモール。


「……ここって……アウトレット……?」

「そう。“軽井沢プリンス”。有名だから知ってるだろ?」

「う、うん……テレビで見たことあるかも……」

「お前に似合いそうなの、あると思うよ。行こ」


そう言って、さっきと同じように差し出された手。

何度も繋いできたはずなのに……指を絡めるように、握られ心臓が飛び跳ねる。


「セ……セナ君……あの……手が……」

「あー、こうした方がプライベート感出て、声かけられるの減るんだよ」


そ、そういうものなの……?

でも……これは……


たまに、親指で手の甲をなぞられて。

くすぐったいのに、手はしっかり握られていて。

離すことなんて、できなかった。


とにかく心臓に悪い……

緊張しすぎて、顔を上げられずにいると……


「ぶはっ……!キンチョーし過ぎだって」

「仕方ないでしょ……こんなの全部が初めてなんだから」

「……そっか」


横目に見たセナ君は、サングラスとマスクで顔の大半が隠れていたけど。

それでも、とても楽しそうに見えた。


観光客らしき人も多くて、外国語が飛び交っている。

ウィンドウには、おしゃれなマネキンたち。


……こんな場所、来たこともなかった。


最初に入ったのは、ナチュラルな色味で統一されたセレクトショップ。


「これ、動きやすそうだし……お前、好きそう」

「えっ……あ、可愛い……」

「他に気になるのあったら試着していいぞ。オレ、見といてやるから」

「え、見なくていいよっ!?……ていうか、なんでそんなに手際いいの!?」

「だって……お前に似合うの、見たいし?」


さらっと言われたその一言が、思った以上に破壊力があって……

顔が熱くなるのをごまかしながら、そっと服を手に取った。


試着室から出ると、セナ君が軽く頷く。


「うん。いいじゃん。ちょっと袖まくって、髪、まとめたら完璧」

「ほんとに……?」

「嘘ついても、オレ、得しないしな」

「……そっか」


2~3着試着したあと、最初の服をもう一度着るように言われて出ていくと、セナ君の手には、いつの間にか大きな紙袋が……


「いくぞ」

「え……?あれ……?」


……お会計は?


「あの……セナ君……!私、今着てるこの服のお金払ってないんだけど……」

「あぁ、試着したやつ、全部もう払ってある」

「え!?全部!!???どうしよう、私あんまり現金持って来てなくて……!」

「だからな。オレがお前に金払わすわけねーだろ」


紙袋を片手に、もう片方では……さっきと同じように、手をしっかり握られていた。


車へと戻る足取り。

その間じゅう、心臓の音がずっと煩く鳴っていた。



「うわーーーん!!疲れたよーーー!!」

「みんな、お疲れ様」


私たちより遅れて、渋滞に巻き込まれていた怜央さんたちが到着したのは14時すぎ。

本来はお昼に始まる予定だったBBQも、今はもう15時近くになっていた。


「とっとと撮るぞ」


椿さんのひと言で、空気がピリッと変わる。

みんな一気にテキパキと動き出して、車のトランクからは三脚やカメラ、小道具がぞろぞろと現れる。

その段取りの良さに、思わず見惚れてしまった。


「普段はスタッフさんがやってくれるんだけどね」


信君が隣で、少しだけ苦笑いする。


「今回は突発の企画だから。あと、最近信君、動画編集ハマってるもんね?」

「素人なりに頑張ってるよー。あ、蓮、そこテーブル空けて。肉置こう」


怜央さんが箱に入った肉や野菜を次々と運んできて、それを蓮君と真央君がトングとトレーで受け取っていく。


「うわ、ちょっと!生の肉の上に野菜置くなって言ったろーが!」

「えぇ~?彩り重視してみたんだけどな~~」

「撮影前に食中毒になったらどうすんだ!」


「……ね、なんか私、手伝うことないかな?」


小声でセナ君に聞いてみると、すぐさま真顔で返された。


「お前は手ぇ出すな」

「えっ……」

「火とか刃物とか、お前が怪我したら終わりだから。マジで座ってて」

「……はい」


あまりにも真剣だったので、何も言えなかった。


しばらくして、真央君が焼きそば用の鉄板を探してあちこちゴソゴソしていて、信さんは食器を並べては撮影用に写真を撮り、また並べ直している。

怜央さんは火の調整をしていて、椿さんは全体のレイアウトに細かく指示を出していた。


……なんというか。

全員がプロなのに、仲の良い部活みたいだった。


その空間の中で、私はただ1人、何もせず、ぽつんと椅子に座っていた。


「ほら、これ飲め」


ふいに、冷えたペットボトルが差し出される。


「ありがとう……」

「うまそうなとこ焼けたら持ってってやるから。ちゃんと待ってろ」


そう言って、セナ君はまた炭のそばに戻っていった。


……ほんの少し、寂しいような。

でも、すごく嬉しいような気持ちだった。


「お肉……焼いてみたかったかも」




「はーーー、やっと食える!!」


真央君の声に、現場の空気が一気にゆるむ。

お肉を焼く準備が整って、いよいよBBQが本格的にスタートする。


カメラがまわると、みんなスッとスイッチが入って、テンションが一段階上がるのがわかる。


「まずはタンでしょ、タン!!」

「絶対コレ、一番美味いやつ~~」

「でも見栄え重視で、盛り付けも気ぃ使って!」


信さんが紙皿の上で肉を回しながら、真顔で「こっちの角度の方が映える」と言っていて、思わずくすっと笑ってしまう。


「つーか、焼き係交代しろよ。ずっと俺やってんだけど」

「だってセナ、トング握ったら離さないじゃん」

「握ったものは逃がさねぇ主義」

「それ、肉に言うことじゃないから」


わいわいと交わされる軽口と、香ばしい煙。

すぐそばで見ているだけで、なんだか楽しくなる。


みんな慣れた手つきで網の上の具材をひっくり返して、焼けた順に、どんどん盛り付けていく。


「レン、焼き野菜いっとけよ。さっきから肉しか取ってねーぞ」

「えー、野菜はいいかな……って言ったら、絶対怒られるパターンでしょ?」

「正解。ほら、ピーマン食え、ピーマン」

「俺、このまま行ったら米4杯いける」

「だから撮影中に白米いくなって。口パサパサになるから」

「お前さ~、普段こういうの絶対来ないくせに、今日なんかテンション高くね?」

「いや、ほら……野外、いいじゃん。空気うまいし」


セナ君は相変わらず焼き場から離れないまま、ときどきカメラの角度を確認して、ちゃんと全員が映るように気を配っていた。


「あっつ、めっちゃ跳ねた……!」

「だから言っただろ? オイル塗りすぎんなって」

「お前、油まみれになれよ動画用に」

「やだよw」


楽しそうな空気が、そのままレンズ越しに届きそうで……

撮影用の動画とは思えないくらい、自然体の笑顔がそこに並んでいた。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


少しでも気になってもらえたら、フォローやお気に入り登録よろしくお願いします。


次の更新は【明日夜】です!


ぜひまた覗きに来てくださいね!

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