試合
「はじめ!」
無駄に広い道場にその声が響いた途端
凄まじい轟音とともに突風が菖蒲と彩花を襲う
それは…
「久しぶりだが 腕はなまってないようだな!昴!」
「お前こそ 久々とは思えねえな!」
二人の刀と薙刀が衝突した音であった
その音と風に驚き菖蒲は唖然とした表情になり
「す...すごい」
「でしょ あの二人はすごいんすよ〜」
ドゴォォ―――ン
もう一度二人がぶつかり轟音と突風が発生する
それに対し菖蒲は飛ばされぬように必死に踏ん張る
ふと音が消える
「あれ?静かになった?」
そして二人の方を見ると距離をあけて両者が対面している
そして次の瞬間に二人が一気に距離を詰め
互いの武器を目にも止まらぬ速さで打ち合う
それは常人の目では追えず残像しか見えないほどの速さであった
しかし菖蒲にはその一つ一つの動きが見えていた
先ほど武器がぶつかるその刹那に表に出ているものが菖蒲から漆黒へと変わったのだ
「す...すごい!なぜだか見える!」
「あれが見えるんすか?私でも精一杯なのに…」
「当然だろ
俺が視てるんだぞ」
「あれ?さっきまで菖蒲だったのに今はクロくんなの?」
「身体の主導権を一時的に俺のものにしただけだ」
「そんな事もできるんすね」
そう二人が話す傍らで染華と昴のラッシュのぶつけ合いが続く
「ちゃんとアイツらの打ち合いを見とけよ」
「う...うん」
漆黒は二人の打ち合いを見ていて"違和感"を感じた
先程までは感じなかった違和感を
パキィ
漆黒はその音を見逃さなかった
そしてそれが聞こえた瞬間に左腕を顔の前に出し
自分ができる最大限の防御態勢をとる
その対応は間違えではなかった…
バキィィ―――ン
二人の力が過剰すぎたがため木製の武器では耐えきれず
互いの武器が割れたのだ
しかし彩花は咄嗟のことに反応するのが遅れ
飛んできた武器の一部が菖蒲へと当たる
それと同時に二人が菖蒲の方へ飛び
「菖蒲!大丈夫か!」
と口を揃えて言う
それに対し菖蒲は
「だ...大丈夫…
クロが咄嗟に守ってくれたから…」
と言う
その瞬間に
「お前ら何してんだよ!」
とクロが二人に怒号を浴びせる
それに対し二人は
「す...すまん…」
とまた口を合わせて言うが
それでもクロは
「今のことで菖蒲の腕が折れたんだぞ!」
と怒りをあらわにし言う
「う...腕が?」
「見せろ」
といい染華が菖蒲の腕を見る
「だ...大丈夫だよ 染華お姉ちゃん…
そこまで重症じゃなッ…」
菖蒲の腕に染華が触れた瞬間に菖蒲が顔を歪ませる
「これは重症だ」
と染華が言った瞬間に菖蒲の前にいる二人に向けて彩花が
「ふたりともどけてっす」
と言いながら二人の間に割り込み菖蒲の腕を見る
「これは折れてるっすね
でも大丈夫っす
これくらいなら 私でもどうにかなるっす」
といい菖蒲の左腕に対し彩花が両腕をかざし
「聖なる光よ
我が命に従い
彼者を癒やせ
聖なる光」
そう言うと彩花の手の周りに緑色の光が現れ
みるみるうちに菖蒲の腕の痛みが引いていく
「す...すごい!
腕の痛みがなくなった」
「ふふーん!っす」
と彩花が自信満々な表情で菖蒲に言う
その状況を見ていた染華が
「お前...聖属性の術式を使えたのか?」
「残念ながら私にはそこまで高位なものは使えないっす
今のは…」
第八話お読みいただきありがとうございます。
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追記
この話以降"漆黒"のことを"黒"と書かせていただきます。