契約 結
「戻ったか」
「う...うん ただいま」
少し困惑した顔をしている菖蒲に向かって漆黒は
「あれはいわゆる試練だ」
「試練?」
「刀にはいくつか種類があってなそのうちでも特殊な刀は使い手を選ぶ」
「使い手を…
つまりさっきのは使い手を選別するための試練だったってこと?」
「ああ...つまるところそういうことだ」
「てことは漆黒もその試練をやったの?」
「まあな」
「漆黒の試練はどんな内容だったの?」
「それはヒミツってやつだ」
「え〜 教えてよ〜」
「いやだね」
そう二人が話しているのを遮るように
先ほど黒い空間にいた白いものの声と聞いたことのない声が聞こえる
「揉めてばかりいないでください」
「え...え 刀が喋った!?」
「ああ すまねえな」
「何当たり前に返答してるの?!」
驚いた顔で菖蒲が言う
「ここからがコイツらにとって重要なところだからな」
「もうすることなんてないんじゃ…」
「いちばん重要なことが残ってますよ」
「そんな事言われても僕は知らないし…」
「そうだったな 最後にするのは命名だ」
「命名?」
「意味通り刀に名前をつけるんだよ
ただこの名付けは契結にとって重要な役割を持つ
名前によって刀の性質が変わるからな」
「そうです だからいい名前をつけてください」
「は...はい…」
「わかってるよ」
そしてしばしの静寂が訪れる…
漆黒は"俺はもう決まっている"と言うかのごとくずっと黙っているが
菖蒲はずっと"どうしよう"だとか"何がいいかな?"などと漆黒に語りかけている
そしてふと菖蒲が静かになる
「決めたか…」
「うん」
そう二人が言うと
「ならばその名を口にするがいい」
と刀から聞こえる
それに菖蒲と漆黒は同時に答える
「君の名前は白光"闇散"だ」
「お前の名前は髯ー蠖ア"蜈牙。オ"だ」
「その名たしかに授かった」
名を言った菖蒲と漆黒に対し刀は言う
「これにて契結を終わりとす
……繰り返せ」
「こ...これにて契結を終わりとす」
そう二人が言うと眩い光が二人を包み刀の鞘に色がつく
菖蒲が血を垂らした方の鞘は穢れを知らぬような純白に
漆黒が血を垂らした方の鞘はどこまでも暗く深い黒になった
「刀の鞘の色がかわった…」
「契結が終了した証だな」
「…そういえば漆黒は刀になんて名前つけたの?」
「そうかお前もわからないんだったな
俺がつけた名前は陰影"光塵"だ」
「そうなんd…」
菖蒲が言葉を言いかけたときに物置小屋の戸が開き
「大丈夫か 菖蒲!」
といい昴が現れる
その後ろには彩花と染華もいた
「昴か ちょうど今終わったとこだ」
そう漆黒が昴に言うと
昴は視点を落とし刀の方を見る
「物置小屋から急に光が出たから来たんだが…
まさか...お前契結をしたのか!?」
「ああ…」
「"ああ"じゃねえよ 菖蒲の体で何してくれてんだよ」
「そんな声を荒げることしてないよ?」
「ま...まさか 菖蒲にもやらせたのか?」
「したがなにか問題あったか?」
「大アリだよ!
もしそれで菖蒲の精神が壊れたらどう責任取るつもりだったんだよ!」
「こいつなら大丈夫だと確信してたからな
実際にこいつは元気なまんま帰ってきたからな」
「結果だけ見ればよかったが…
お前に任せるべきじゃなかった…」
そう言い昴は"はあ"とため息を付く
その様子を見ていた彩花が
「契結って結局なんなんすか?」
と昴に問いを投げかける
「契結ってのはな……」
昴が契結について説明する
「…まあ 需要なのはそんなとこだな」
「へ〜 つまり刀と契約を結ぶってことっすね」
「まあ そういうことだな」
「で 契結をしてこれからどうするんだ?」
と昴が漆黒に問いを投げかける
「とりあえず俺らが18歳になるまではお前に鍛えてもらう」
「俺にか?」
「ああ そして18になったら…」
「いや...その先はいい…
それより俺に稽古をつけられてその先に何を望む?」
「とにかく強くなりたいだけだ(復讐なんて言ったら何もしてくれそうだからな)」
「てか お前の体じゃなくてこれはあくまで菖蒲の体なんだぞ
菖蒲に承諾を得たのか?」
「僕はいy…」
「もちろんだ」
と漆黒は今まで見せたことのない満面の笑みで答える
「な...ならいいが…」
「これからよろしくな!」
「あ...ああ(なんかこいつのペースに乗らされてる気がするが)」
そして昴がふと刀の方を見ると…
「なっ…刀がなくなってる!?」
第七話お読みいただきありがとうございます。
楽しんでいただけたら幸いです。
続きが気になる!と思ったら是非ブックマークをお願いします