二人の少年
「ごめんな菖蒲...来るのが遅れた」
そう...菖蒲の前に現れたのは師匠の昴であった
微かにぼやけていた視界が晴れた瞬間...
菖蒲が見たのは一度も見たことのない真剣を持った師匠昴の姿であった
「お前が来るとはな...想定外の状況だ...
ここは一時退散させてもらおうか…」
昴の姿を視界に捉えた瞬間に顔を引きつらせ男は言う
「逃がすか...」
昴は男を追おうとするが菖蒲と牧夫のことを思い出しその場で踏みとどまる
そして菖蒲の方を向き切断された右腕の止血をする
「これでひとまずは大丈夫だ...痛みは我慢できそうか?」
「う...うん で…でも…お父さんが...」
「牧はどこにいる?」
「僕の家で...黒い服を5人の人と一緒に…」
「クロユリの奴らが5人も...だとしたらまずい 菖蒲僕の家には一人でいってくれ 」
菖蒲の5人という言葉を聞き昴が血相を変えそう菖蒲に言う
それに対し菖蒲は覚悟を決めた顔になり昴に向かって
「僕も行く」
「だめだ」
「僕も行く」
菖蒲の発した言葉にすぐさま返した昴の言葉を
無視するかのように菖蒲は続けて言葉を発する
二人の間にしばしの沈黙が生まれる...
「どうしてもか」
昴が威圧するように菖蒲に言う
「うん」
菖蒲の覚悟を確かめた昴は菖蒲に言う
「覚悟を決めろよ」
「はい」
頼むから何も起きてないでくれ と心のなかで思いながら
昴は菖蒲と森の中をかけてく...
牧夫の家に近づいた瞬間に煙のと鉄が入り混じったような匂いが鼻を刺す
それを感じ昴と菖蒲はより早く家へと向かう
家についた瞬間二人の目に入ってきたのは......
「家が...燃えてる」
菖蒲が絶望した顔になりそう呟く
そして家から目を少し下に落とす...
その目に写ったのは......
「お...お父さん!」
「牧ィー!」
今にもその生命の炎が燃え尽きてしまってもおかしくないほど
ボロボロな状態の牧夫がいた
「あ...やめ...か グハッ」
そう言葉を発した瞬間に牧夫が吐血する
「お...れはもう…」
「わかったからもう喋るな」
どうにか応急処置をしている昴が言う
「お父...さん…」
菖蒲はあまりの光景に今まで堪えていた涙が決壊したダムのように
その瞳から溢れ出てくる
それを見て牧夫は身を起こし菖蒲に自分の方に来るよう手招きをする
「あ...やめ こっちに来てくれ」
「う...うん…」
そう言い菖蒲が牧夫のすぐ近くまで行くと
いつの間にか牧夫の手には二振りの刀が握られていた
「菖蒲...これ...を」
そう言い牧夫はその二振りの刀を菖蒲に渡す
「お...とう...さん?」
「牧...」
刀を渡した瞬間...
かろうじて光を放っていた牧夫の命の灯火は燃え尽きた...
「うわぁぁぁぁ――――――」
父の死の衝撃により今まで抑えていた気持ちが爆発してしまう
すると数秒後に菖蒲は静かになった
「気絶しちまったか…」
あまりの衝撃に気絶してしまった菖蒲の体を支えながら昴は言う
気絶しまった菖蒲と二振りの刀を持ち昴は自身の家に向かう
およそ5時間後
ここは昴の家の寝室
「もうそろそろ5時間か…」
そう昴がベットの上でいまだに目を覚まさない菖蒲の横で呟く
少し眠気が来て目をほんの一瞬とじてしまう…
しかし起きていなければならないと思い目を開けると…
「菖蒲...起きたか…」
「お前は誰だ」
「?お前の師匠の昴だけど(いつもの菖蒲と口調が違う…)」
いつもと口調が異なる菖蒲に昴は訝しんだ表情を向ける
「師匠どうしたの?」
「(今度はいつもの菖蒲の口調に戻った?)」
「?」
無言の昴に菖蒲は不思議そうな表情を向ける
「なんでもない...ところで体調は大丈夫か?」
「うん...片腕なくなっちゃったけど…」
そう言い菖蒲はなくなった右腕を左手で触れながら言う
すると次の瞬間少し表情が変わり
「そうか...お前は菖蒲っていうんだな」
その声を聞いた瞬間に昴は菖蒲から距離を取る
「やっぱりお前菖蒲じゃないな...お前は誰だ」
「俺はあや...」
「僕の中に別の人がいる!?で...でも体は僕だから...う〜ん」
「うるせぇ 話してる最中に変わるんじゃねぇ」
「で...でも 僕の体だし...」
「ッチ 調子狂わせるやつだな」
菖蒲が一人で話している様子を見て菖蒲ではない方にこう尋ねる
「結局お前は何者なんだ?」
「俺は………
第三話お読みいただきありがとうございます。
楽しんでいただけたら幸いです。
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追記
この話以降主人公の別人格の発言はわかりやすいように文字の上に・をつけるようにしました
それ以外の言葉でもたまに・がついている言葉はありますが重要な語句等ですのでその点ご了承ください