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ハイドロゲン・バイナリー  作者: 梅雨乃うた
Prologue
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Prologue


 古来より竜が眠ると言われてきた山脈。未だ人類の手の及ばぬ自然を誇るその峰々を支配する静寂の合間を縫うようにして、無音の声が電波に乗って空を駆ける。

「シエラリーダーよりブレンデル、目標を確認。座標転送」

「ブレンデル、座標を確認した。展開中の全飛行隊は指定高度を維持せよ」

「シエラリーダー了解」

 人類は最早、ただ天に願い厄災の過ぎ去る事を待つだけの無力な存在ではない。

 この世界の覇者となる事こそ叶わないが、抗う術も無く蹂躙されるだけの弱者ではない。

 来るものを拒むかのような厚い静寂を、微かな飛翔音が切り裂く。

 山麓が爆ぜた。

 緑一色の森林に、不自然に明るい赤と黒の花が咲く。

 山麓全体がにわかに騒がしくなる中、晴れぬ黒煙を切り裂くようにして飛び出すのは、無数の竜種。全長は10メートル超、翼開長は30メートルにも及ぶ、堅牢な鱗に体格と不釣り合いなまでの俊敏さを誇る有翼モンスターの代表格。

 かつてなら一頭現れただけでも神頼みするしかない厄災だが、これでも分類は小型種止まり。

「シエラリーダーよりブレンデル、制圧砲撃の弾着を確認。これより交戦状態に入る」

「ブレンデル了解、各員の武運を祈る」

 高空で旋回していた複数の戦闘艇が統率の取れた動きで軌道を変え、急降下に入る。

 後方に控える巡航艦からの砲撃で数を減らした竜種の群れに上から襲い掛かるのは、空に溶け込む青みがかった白の機体に王立空軍の紋章を刻んだ全長10メートル程の半飛行船。

「シエラリーダーより各位。敵を情報通り火竜小型種と確認、作戦に変更なし。二機編隊を維持し、各個の判断で交戦を」

「了解!」

 接近に気付いた火竜が針路を変え、迎え撃つように編隊へ。ヘッドオンを避けるように編隊が散開したところで、火竜がその火竜と呼ばれ恐れられる所以を見せる。即ち、不条理とすら思えるほどの威力を持つブレス。立て続けに複数頭から放たれる面を制圧する炎の壁が避けきれなかった機体を飲み込み、それを辛うじて突き抜けて出てきたのは僅か二機。

「くそッ、オスカーワンからオスカーフォー、ロスト!」

「ロメオスリー、エンジン損傷。戦域を離脱する」

「シエラリーダーより各位、作戦を続行」

「んなこと分かってるっ!」

 ブレスを回避した機体の一機が旋回し、火竜に接近。

 咆哮した機首装備50ミリ砲が、古くは神の遣いとも言われた竜の側頭部を撃ち抜いた。

 


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