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第2話  異世界救済プロジェクト

千年後の夜。


僕はたった今、やるべき仕事を終えた。


地面から40cm程浮いた座面と背もたれしかない椅子から立ち上がり、全身で大きく伸びをする。


「あ゛~~~~~~~~~~~~~~っっっしんどかったぁー!」


これが千年の超長期プロジェクトをやり遂げた感想だ。


僕は千年掛けて消滅寸前だった異世界の保守と改変に成功した。


なんだかずっと纏わりついていた緊張が身体からスッと消えた感じがする。


「あー二度とやりたくないよ…」


と言ってもまだ僕が異世界の成長に合わせて定期的に保守作業(メンテナンス)をしなきゃダメだけど。


でも取り合えず今日で異世界救済プロジェクトは一旦終了した。


これで今から定期メンテまでずっと連休だ。


「ふぅ~っ」


身体の中に溜まっていたであろうストレスを口から吐き出し、伸びを終える。


仕事から解放された喜びとプロジェクトを達成した感動からか、今居る作業部屋をボーッと眺めてしまう。


ここは僕が地下に作成した作業部屋だ。


東京ドーム程の広大な空間に、今僕が座っていた椅子を中心として魔力で作成した立体的なグラフやデータが乱立している。


この異世界には3つの世界が存在するので人間界だけでなく、魔界や召喚獣が居る幻界の全情報が表示されている。


良く見るとこの部屋メッチャ汚いな。


ここで実験とか一杯したもんね。千年分。


かつて白かった壁と床は様々な色に変色してボコボコになり、謎の液体や塊が所々飛散している。


この椅子も最初は白かったんだけど、今灰色だもんね。


僕の今着ている服も白いシャツとベルトが要らない白いズボンだったけどくすんでしまってるし。


魔法で片づける事も出来たけど忙しすぎて放置してたらこうなっちゃった。


ま、いっか。


誰かに見られることも見せるつもりもないしね。


僕は汚部屋を無視して歩き出す。


疲れたし今日はもう寝よう。


本当は寝る必要の無い存在になっちゃったけど、何となくこういう時は寝ておきたい。


階段を上り、1階にある寝室に向かう。


歩いてみて少し違和感が。


そうだ、僕はこの千年で少し変わってしまったんだよね。


仕事ばかりで忘れていたみたい。


外見年齢は20歳ぐらいで日本人らしい黒髪だけど顔がブサイクじゃなくなった。


カッコ良いのかどうかは自分で分からない。


人の反応を見れば分かるかもだけど地下に籠ってばかりでほぼ他人と会わなかったからさ。


ガチャリ


赤茶色の豪華なドアを開けてキングサイズのベッドにダイブする。


「ふぃ~っ」


このフカフカした感じ懐かしいな。


魔法で部屋の疑似太陽光を消すと、天井の壁には魔法で映し出された実際の星空が見えるようになった。


そう言えば寝る時に星空が見えるような設計にしたんだった。


自宅の設計も忘れてしまっているな。


千年も仕事するからだよ。


そう、千年…本当に色々あったよ。


千年前、この世界が後数年で消滅すると知って1人で絶望してたっけな。


異世界転移して剣と魔法の世界だってワクワクしてたら数年で世界消滅ってそりゃ無いよ。


死ぬのを待つなんて嫌だからさ、最初は何とかしてくれそうな人を探したんだよね。


そしたらこの世界には女神が居るらしいことが分かって僕は少し混乱しちゃったよ。


だって女神とか居るなら何でこの世界を何とかしないのってね。


調べて分かった事だけど、女神はちゃんとこの世界の危機を分かってた。


女神は世界の異変に反応して対策してたんだけど、その対策が良く無かった。


彼女自身、あまりこの世界の仕組みを深く理解出来ていなかったし理解したとしても対処出来る力量が無かったんだ。


女神は異世界の管理者であって創造神じゃないからね。


この世界を創造した創造神は異世界誕生と共に何処かへ消えている。


世界を救う事の出来そうな存在なんて探しても居なかった。


当時の人間界なんて異世界が消滅するって言っても人は魔族のせいだと言うし、魔族は人のせいだと言うしで論外。


竜族と幻獣は世界の異変に薄々気が付いていたけど彼らの能力は暴力的で世界の改変に向いていなかったからね。


だから僕は仕方無く自分でやってみることにしたんだ。


死にたくないし折角の異世界が消えちゃうの嫌だしでもう必死だった。


取り合えず消滅を先送りにする為にバグを何とかしなきゃならなかった。


これが異世界救済プロジェクトの始まりだね。今僕が居る場所を拠点に決めたのもその頃だ。


1分1秒が惜しい状況でこの世界の仕組みについてお勉強しつつ、世界に蔓延るバグを潰して回る毎日だったよ。


あの当時なんて滅亡の末期だったからバグの種類も凄かったんだよね。


物体とか生物がダブったり、地面に吸い込まれたり、はたまた謎の声が聞こえたりだとか、突然爆破、土地の腐敗、人やデーモンの奇形種が生まれて来たり、魔法の誤爆、魔法発動の不確実性…。


本当に数えきれないほどのバグが充満していたけど、一番厄介なのが虚無の発生だったね。


だって吸い込まれたら死んじゃうんだもの。


僕はこのバグを1つ1つ調査して研究をしたよ。


それで様々なバグの原因が発覚したんだ。


創った人に聞いてみたくなるようなアンバランスな魔法だとか、魔法しかなかった世界に女神が追加したスキルシステム、スキルシステムによって発生した同じ魔法とスキルの重複問題、エネルギー問題…。


言い出すと切りが無い程に問題は山積みだった。


さらに調べると、これらの問題は女神が追加していった物事に起因することが分かった。


人類が危機に瀕する度に余計な(てこ)入れをしていたらしい。


強大な力を持つ聖剣や遺物をバラ撒いたりだとか、スキルシステムを導入したり、魔法が発動しにくくなったからと運のスキルを新設したり、世界にバグが発生する度にその場しのぎの荒い修正を行っていた。


良かれと思ってやってるのは分かるんだけどね、それだけに残念な結果だよね。


バグの根本原因も1つ1つ潰していけたら良かったんだけど、それは無理だったんだ。


僕は目の前のバグを潰して世界を延命させながら何十年も根本原因の対処法を模索してた。


けど人間の寿命には限界がある。


後継者なんて育てる余裕も無いから自分で肉体を強化する方法も並行して研究してた。


何百年かしてようやくどうしたら良いのか結論が出たよ。


保守し易いように全ての能力や力の法則を発動させる(みなもと)を1つに統一すること、これが必要だったんだ。


魔法は魔素と呼ばれる物質によって発動されるけど、女神が追加したスキルシステムとか運の力は違うんだよね。


色んな力の源がごちゃ混ぜに存在してたのがダメだった。


だから僕は魔素を撤廃して全素という新しい(みなもと)を創造した。


これでスキルとか魔法みたいな超常現象は全て全素から発動される様になったよ。


けど、バグの根本原因を解消させられる様になってもまだ安心出来なかった。


生き物は常に変化するからね。


新しい変化を提供出来るように星力という力を創造したんだ。


星力は僕が創った衛星によって得られる力で、衛星が放つ不可視の光線が全素に当たることで発生するんだよね。


そんなこんなで色々創造出来るようになった僕は人間じゃなくなってた。


無詠唱で久しぶりに僕自身を鑑定してみる。



名前 イツキ タナカ

性別 男

種族 神

位階 第8位階

スキル -

ギフト -

星座 -



神になっちゃってたんだよね。


眩しいから隠してるんだけど、実は僕の頭上に光輪がある。


だけど僕は全然嬉しくなかった。


普通の異世界ライフを楽しみたかったんだよね。


神になってしまったからか女神が僕に会いに来るようになった。


彼女なりに頑張ってたみたいだから面と向かって怒れなかったけど、もうちょっとちゃんとして欲しかったなって思う。


それで異世界を消滅まで追い込んだバグとその根本原因は1つ1つ解消していき、魔素時代の産物を全素に変換する移行作業を順次やったよ。


全部僕がやりましたからね女神さん…。


今日で最後の移行作業が完了して異世界救済プロジェクトが一旦終了したってわけ。


やっと終わったよ。


本当に地獄の様な千年だった。


素人が首を突っ込む事じゃないよ本当に。


でもこれからなんだ。


僕の異世界ライフはこれから始まるんだよ。


千年も待ったし僕は異世界を救ったんだ、だから僕は好き放題やってやろうと思う。


まずは奴隷を購入してセクハラ三昧をだな…。


…むぅ、思い出しが結構長かったみたいでそろそろ僕も寝ないと。


待ってて僕の奴隷ちゃん達、明日お迎えしに行きますからね。


こうして僕は明日に備えて眠りについたのだった。




次話から奴隷ちゃん達が登場です。


18禁表現にならないように頑張ります。

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